第360話 掃討戦
闇魔たちが去ると、残りは掃討戦になった。
「でああああああ!」
私も戦った! 秘剣を駆使し、押し寄せるオークたちをなんとか屠って見せたのだけど・・・。
「風よ! 奴らを仕留めよ!」
「くはははは! 炎よ! 魔物たちを仕留めるのだ!」
王国の魔法使いたちはやっぱりすごかった。次々に魔法を放つことで、オークたちをあっさりと仕留めていったのだ。
「くっ! このオークども! 一般の個体より硬い!」
コルドゥラの愚痴が届く。
そうなんだよね。私から見てもこのオークたちは斬りづらいように思う。なんか、東領で戦った時よりも全体的に硬い気がするんだ。
「ウインド!」
「はっ! 邪魔すんなよ! ウインドスラッシュ!」
対照的に好調なのが魔法使いたちだ。押し寄せるオークたちを風魔法であっさりと撃退している。エレオノーラの下位魔法の連発は見事だし、なによりギルベルトが淡々と敵を仕留め続けている。
「いやこれ、やっぱり私たちは無理に頑張る必要なくない? 魔法使いに任せた方が早く殲滅できる気がする」
「・・・そうですね。オティーリエ様はマリウス様が助けたようですし、私たちが守る必要なんてなさそうです。私たちは敵を仕留めるのではなく、体勢を崩す方に重きを置いた方がいいかもしれません。私も風魔法はそれほど得意ではないですし」
どことなく落ち込んだように言うコルドゥラとともに、私はオークの勢いを殺すことに専念するのだった――。
◆◆◆◆
オークたちの殲滅が終わったのは、それから間もなくのことだった。
疲れ切った私たち前衛とは対照的に、どこか満足げな魔法使いたち。かなりの魔法を使ったはずなのに、みんなどこか自慢気な様子だった。
「おう! ビューロウの! いい動きだったぞ! おかげでこちらの魔法が当てやすかった」
私に声をかけてきたのは、最初に壁を破壊したあの老貴族だった。
「しかしさすがは闇魔の四天王といった感じか。まんまとシュテファーニエには逃げられたな。まあ、あのまま続けていたらこっちの被害がどれくらいになったのか分からんがね」
老貴族は苦笑しながら言葉を続けていた。
私は戸惑ってギルベルトを見た。風の魔法といえばウイント家だけど、でもあのお時のセリフを思い出す限り、ウイント家の関係者ってわけではないみたいだけど・・・。
「おっと、俺としたことが済まねえな。俺はヴォイルシュ家のマンフレートってんだ。一応中央の貴族だが、爵位はすでに息子に譲っている。かなり昔にウィントの分家から婿入りしてな。まあ、半世紀近く昔の話だから知らないのも無理はない。よろしくな」
◆◆◆◆
「俺自身はよ、もう引退してのんびり過ごしてたんだが、闇魔が復活したって聞いてな。孫やひ孫が戦場に出るよりは、ってんで出てきたんだよ。一応俺も星持ちってのに該当するみたいだからよ。俺の若いころはそんな称号なかったけどな」
マンフレートさんはが母と笑いながら説明してくれた。
いや、この人っておじい様より年上の大先輩だよね? なのにシュテファーニエをいち早く見つけるわ、風の最上位魔法を使うわで、なんかすんごい魔法使いという印象しかないんだけど!
「あ、あの! マンフレート様の魔法も素晴らしかったです! 誰よりも早く敵を見つけて撃退するだなんて! 俺は、ウィント家のギルベルトって言います!」
ギルベルトを見てマンフレート様は笑顔になった。
「おう! 聞いてるぜ! なんでも今代のウイント家には将来有望な若者がいるってな! まあ、風の魔力過多だって話だが気にするこたぁねえよ! 俺の若いころはレベル4でも魔力過多って言われてたんだからな! そのうち、お前さんみたいな素質の持ち主も普通になる日が来ると思うぜ」
マンフレートさんの言葉に、ギルベルトはほっとしたような顔になった。
「しかし、恐るべきはシュテファーニエだな。40年前の時は帝国に攻めていたようだが、あいつがこっちに来てたなら戦況は分からなかったと思うぜ。なにせ、王族の護衛を簡単に振り切っていったんだからよ。ビューロウのがいなければ、総大将の首も危うかったかもしれん」
冷や汗混じりに言うマンフレートさんに、エレオノーラが同意した。
「ええ。本当に。ダクマー。よく止めに入ったわね。あなたはアウグスト様の命を救ったのよ」
エレオノーラが褒めてくれたけど、私はむず痒くなって思わず頭を掻いた。
「い、いえいえ。それほどでも。でも、シュテファーニエはなんで歌なんて歌っていたんでしょうね? ここに来た目的は、アウグスト様の暗殺でしょうけど」
マンフレートさんはにやりと笑った。
「お嬢ちゃん世代には伝わっていないのかもな。あれは呪歌ってやつの一種だ。歌声に魔力を乗せて飛ばすことで、簡易的な魔法を放つって寸法さ。あのオークども、普通より手ごわかっただろう? 多分、シュテファーニエがあらかじめ呪歌を設置しておくことで奴らが強化されたんだと思うぜ」
へえ。そう言うのもあるんだね。私は納得して頷いた。
「俺はバルトルドの奴とは付き合いがあってな。今でもあいつが中央に来たら飲み交わす仲なんだ。だから、珍しい魔法についてはいろいろ知ってるぜ」
私は思わずラーレを見ると、彼女は頷いた。
「マンフレート様のことはおじい様から聞いています。なんでも、王都に風魔法が得意な友人がいると。あの、ちょっと聞いてもいですか?」
そう言ってラーレは色々質問し出した。ギルベルトもエレオノーラも興味深そうに話を聞いている。私も、属性魔法は使えないけどいろいろ聞き入ってしまった。おじい様の友人だけあって、話が面白い。私もついつい聞き入ってしまっていた。
◆◆◆◆
気づいたら、かなり長い間話し込んでいた。周りの貴族たちが遠巻きに私たちを見つめている気がする。
私はふと我に返り、あたりを見渡した。すると、所在なさげに私たちを見ていた侍従の人と目が合った。その侍従の人は私と目があってほっとしたのか、安心したように話しかけてきた。
「あ、あの・・・。お話が盛り上がっているところに申し訳ありません。皆様、アウグスト殿下がお待ちです。なんでも皆様にお話があるとか。後程、アウグスト様の執務室にお越ししていただいてもよろしいでしょうか」




