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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第1章 色のない魔法使いは領地ですくすくと成長する
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第30話 魔法回避の訓練

少し前に全く同じサブタイトルがあったので修正しました。

 おじい様の道場で、私とデニスは向かい合っていた。


「水よ!」


 デニスが私に魔法を放つ。


 ちょっと! 短杖なしなのに、なんてスピードなのよ!


 でも、これくらいなら私にだって撃退できる!


「はあ!」


 私は素早く木刀を振って水弾を撃退する。水弾は木刀に当たるとすぐに霧散していった。


「私と戦った時の武器強化ですね。 簡単に魔力を消せるなんて、かなり厄介です」


 アメリーが驚いたような顔をする。


 木刀に無属性の魔力を込めて斬りつければ、魔法を簡単に相殺することができる。この技にも大分慣れてきたんだよね。


「これなら!」


 デニスが今度は左手で黄色い球を投げつける。


 さっきの攻撃に比べて遅くない? こんなの、余裕で撃退できるよ!


「甘い!」


 私が再び剣で撃退しようとしたその時だった。


「散!」


 デニスが鋭い声を発したのは!


 掛け声とともに、黄色い球は4つに分裂した。


 へ? 何が起こっているの?


「くっ! この!」


 私は素早く木刀を振るって2つを撃破する。


 だが残りの2つ球はそのままだった。


 2つの球は一瞬止まる。しかしその直後に、球の中から土色の鎖が飛び出してきた!


「アースバインド!」


 鎖が私に向かって突き進んでくる。私は体をそらして避けようとするが、それよりも早く鎖が全身に絡みついた!


「くっ! 私にからもうなんて10年早いんだよ!」


 私が全身から魔力を発散すると、鎖は少しずつ消えていく。ふっ! 今回は私の勝ちだな!

 私がドヤ顔で正面を見ると、デニスが次の魔法を展開しているところだった。


「ヴェルレ」


 デニスが水の弾を放つ。その弾は私の直前ではじけると、水が波のように降りかかってきた!


「うぁっぷ!」


 水が私の全身にかかり、思わず顔をそらす。


「それまで!」


 ずぶぬれになった私を見て、おじい様が宣言した。


 え? なんで!?


 そう言おうと周りを見渡して、気づく。おじい様が試合前に私に掛けた水の障壁が、一瞬にして引きはがされていることに。


 私は歯ぎしりしながらデニスを睨みつけた。


「参りました」


 悔しいけど、今回は私の負けだ。これが実戦なら、私は確実に倒されていただろうから。


「ありがとうございました」


 デニスがお辞儀をする。なんか、うれしそうなのが悔しい!


「デニス。見事だ。最初の水弾も早かったし、2発目のアースバインドもよく工夫した。単純に魔法を撃つのではなく今のように工夫することが、敵に打ち勝つには大切なんじゃ。今の戦い、忘れるでないぞ」


「はい!」


 ほめられたデニスはなんだか嬉しそうだった。


 そしておじい様は私のほうを見る。


「そしてダクマーよ。よくぞデニスの水弾を撃退した。あの速い魔法を撃ち落とせたのなら、正面からの魔法の多くに対処できるようになったと言えるじゃろう」


 おじい様は私をほめてきた。意外な反応に、ちょっと戸惑ってしまう。


「あ、ありがとうございます?」


 私の疑問符交じりのお礼を聞いて、おじい様は続けた。


「だが、その次の一撃はさすがに避けられなかったな。お前も今回の戦闘は勉強になっただろう? 魔法使いにミスショットはない。そう思って常に警戒することが大事なのだ」


 う、そうなんだよね。


 デニスが遅い弾を撃った時、私はてっきり制御をミスったんだと思ってちょっと油断した。でもそれは、私の油断を誘うデニスの手だった。私はまんまとデニスの策略にはまってしまったのだ。


「今回は私の油断でしたけど、もっと経験を積めば私もちゃんと対処できるようになってみせます! 模擬戦を繰り返すことで、誰にも負けない強さを身に着けて見せますよ」


 私は自信を持ってそう答える。


 うん! 経験さえ積めば、どんな魔法使いにも勝てるような強さを身に着けて見せる! そうなれば、どんな敵でも無双できるようになるはずだからね。


 おじい様は何か言おうとしたようだが、溜息を吐いて私に笑いかける。


「まあ、いろいろ言いたいことはあるが、今はそれでいいじゃろう。他の者もデニスを見習って工夫を凝らすように。その努力は、必ずお前たちの力になるはずじゃからの」



※デニス視点


「デニス! 見事だったわよ。あのダクマーが手も足も出ないなんて」


 道場を後にしようとした私に、黒い髪と黒い目をしたきれいな少女が声をかけてきた。


「ラーレ姉さん! ありがとうございます!」


 従姉のラーレ姐さんに褒められて思わず頬が緩む。


 妹の面倒をいつも見てくれていることもあって、この人には頭が上がらない。使用人なんかは私たち兄妹とラーレ姉さんたちが競い合っているように思っている者もいるみたいだが、実際は私は2人を尊敬している。


 アメリーは姉を取られたように感じているようで、ラーレ姉さんにあまり近づかないが、私とダクマーは2人にいつも世話になるばかりだった。


 私たちが話をしていると、後ろから大きな足音を立ててホルスト兄さんが声をかけてきた。


「デニス! いい魔法だったぞ! 魔法の発射速度もかなりよくなった! あれなら、魔物であっても当てられるはずだ!」


 そう。今回の魔法はホルスト兄さんの指導があって行ったことだ。的確な指導があって、魔法構築のスピードや威力を高い水準で行えるようになったんだけど・・・。


「あっ」


 ラーレ姉さんとホルスト兄さんはどちらともなくつぶやいた。ホルスト兄さんはラーレ姉さんと私が話しているのに気づかなかったのか、バツの悪そうな顔をしている。


「じゃあ、私はもう行くから」


 そう言ってラーレ姉さんは素早く身をひるがえす。ホルスト兄さんは何か言おうとしたが、何も言わずにそっぽを向いた。


 ラーレ姉さんが立ち去ったのを確認して、私は改めてホルスト兄さんにお礼を言う。


「今回は本当に助かりました。ダクマーに一撃を入れられたのはホルスト兄さんの指導のおかげです」


 私の言葉に、ホルスト兄さんは照れたような顔をしながら答えてくれた。


「いや、大したことはしていないよ。誰でも気づくことを指摘したに過ぎないさ」


 ホルスト兄さんは謙遜するが、彼のアドバイスが非常に効果的だったのは間違いない。私が改めてお辞儀をすると、ホルスト兄さんは顔をしかめながら言葉を続ける。


「しかし、気になるのはやはりダクマーだな。なんかあいつ、一人で何でもできる気になっているんじゃないか? 貴族の秘術の中には、簡単に対処できないものもあるというのに・・・」


 真剣に悩むホルスト兄さんを見て思わず頬が緩む。


 あのときもそうだった。この地の有力者の息子・クヌートと立ち会ったが返り討ちにされた後、ホルスト兄さんが敵を討ってくれたのだ。


 私を倒して調子づくあいつに、ホルスト兄さんはこう言ってけんかを売ったんだよな。


「君が強いことは分かったが、これ以上、デニスやダクマーに手を出すのはやめてくれないか。どうしても敵対したいというなら、僕を倒してからにしてもらおう」


 そう言って、クヌートをぼこぼこにしたんだよな。クヌートが泣きながら「もうビューロウ家の人には手を出しません」と言うまで、容赦なく殴りつけたのを覚えている。


 今回も、あのときみたいに家族のために骨を折ろうとしているに違いなかった。


「ダクマーが自信を持つのはいいが、敵を侮るようになると危険だ。もしかしたら敵対者には、僕たちが思いもつかないような魔法を持っているかもしれないんだから。あいつが油断せずに戦えるように、ちゃんと見ていてやらないとな」

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