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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第5章 色のない魔法使いと北での戦い
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第299話 再び夢の中で

「あれ? ここはどこだろう。確か私、なんか戦いに巻き込まれていたような気がするんだけど・・・」


 春の木漏れ日を感じながら、私はそっと目覚めた。どうやら、椅子に座りながら眠っていたらしい。


 目をこすり、周りを見渡す。気づいたら私は、お城のようなところの一室にいるみたいだった。


 机の上にはティーカップとお茶請けのお菓子が置かれていた。なんか高級そうなものだけど、ちょっと古臭いというか、伝統的な食べ物みたいなんだよね。


 私は試しにお菓子を一つ、口の中に放り込んでみる。


「やっぱりこれ、カリーナが作ってくれたものほどじゃないね。無駄に砂糖を使いすぎている気がする。もっと繊細な味が好みなんだけどなぁ」


 私はぼやきながらお菓子をかじった。


 そう言えばカリーナってこっちに来てからもすんごい人気なんだよね。エレオノーラなんかいつもおいしそうにお菓子を食べてるし。「体重が増えるけどやめられない」とか言って恨めしそうにこっちを見てきたけどね。オティーリエもカリーナのお菓子を食べるのを楽しみにしているみたいだったし。


「こうやって見ると本当に貴族令嬢のようですね。戦いぶりからどんな蛮族なのかと思いましたが、礼儀作法はしっかりと身についているようで安心しました」


 驚いて声がしたほうを見ると、なんか貴族らしきイケメンが静かにお茶を飲んでいた。彼の後ろには執事が控えていて、私と目が合うと丁寧に頭を下げた。


「こう見えてもビューロウ家の貴族令嬢ですから! おじい様や執事のノルベルトに作法はしっかり叩き込まれているからね! 学園でもカラトリーの使い方や食べ方を指摘されたことはないからね」


 私は胸を張った。


 小さなころはしつこいほど厳しくしつけられたんだよね。あの時はなんでこんなことしなきゃいけないのか分からなかったけど、今は厳しくしつけてくれたことを感謝してるんだ。


 礼儀作法、という意味では目の前のイケメンはかなり見事だった。レオン先生と比べてもそん色ないくらい、優雅できれいな動きに見えるんだけど・・・。


「で、ここはなんなの? モーリッツの時も思ったけど、多分この空間では私を害することはできないんだよね? 水のランドルフさん?」


 テーブルに肘をつきながら睨んだけど、ランドルフの態度は変わらない。優雅な仕草でティーカップを傾けている。


「お嬢様。次を注ぎましょうか?」


 私のカップが空になったのに気づいたようで、執事が尋ねてきた。


 私は頷いて、そっとカップを手渡した。私は何気なく執事を見て、気づいた。


 この人! ランドルフに弓で射殺された、格闘術を使うあの闇魔じゃないか! 殺された人と殺した人が同席しているのに、なんで和やかな時間を過ごしているの! 


 これは夢? 私がこうあったらいいなと思う空間が、再現されているとでもいうの!?


「これは我が国の名店から取り寄せたものを再現したのですが、あなたのお口には合わなかったようですね。甘味には少しばかり自信があったのですが」


 ランドルフが頬を掻きながら苦笑した。私は困惑したけど、それでもちゃんと答えてあげた。


「ふん! ビューロウ家にはお菓子作りの名人が2人もいるからね! 確かに上品なつくりのようだけど、私の舌をうならせるほどではないわ! カリーナとイーダ叔母さんのお菓子を食べなれているからね! この程度で私を満足させられるとは思わないでね!」


 私は反論すると、2人が作ってくれたお菓子について熱弁した。


 羊羹に草餅、そして桜餅でしょう? 栗きんとんや草餅なんかも作ってくれたりするんだよね。


 あ、やばい。語ってたらなんか食べたくなってきた! カリーナに頼めば作ってくれるだろうけど、そんな時間、あるかなぁ。こっちに来てからよく頼み事されてるみたいで、いつも忙しく動いているんだよね。まあ私の世話は最優先でしてくれているんだけどね。


「いやぁ。100年近くたつと王国のお菓子もかなり変わったようですね。私は下戸なので、お酒が飲めないかわりに甘いものには目がないんですよ。その新しいお菓子、ちょっといただいてみたかったなぁ」


 ランドルフが懐かしむように言った。


 なんか、戦場ではすんごい外道なことをしてきたのに、今はとても穏やかなように見える。あのとげとげしい雰囲気が、全然なくなっているんだ。


「あんた。なんか落ち着いてるね。まあ、ここはあなたの領域で、私はまんまとここに引きづり込まれたみたいだけど。私をどうしようっていうの? あなたが無残に殺した執事まで連れて来てさぁ」


 私が睨むと、なぜか執事の男が身を乗り出してきた。でも執事の男を、ランドルフは手で制した。執事は悔しそうな顔で言いたいことをぐっとこらえ、一礼して元の位置に下がっていく。


「確かに私は彼に弓を向けましたけど、まあ理由はあったりします。それよりも、問題はあなたです。あなたの立場、かなり危ないんじゃないですか? 私を含めた幹部を3体も仕留めて、王国の上層部からもかなり睨まれているのでは?」


 余裕綽々で尋ね返すランドルフに、私は言葉が詰まってしまう。


 そうなんだよね。おじい様からもエレオノーラからも、あんまり手柄を立てすぎるのはまずいって聞いていたんだ。ランドルフを倒したことが明らかになれば、私の進退的にまずい気がする。


 黙り込んだ私を見て、ランドルフが溜息を吐いた。


「本当に、仕方ありませんね。私のコレクションを使いなさい。あれを王族に献上すれば、心象はかなり変わってくるはずです。コレクションの中には、王国の王族の力を高められる者もありますから。盗賊除けの仕掛けはありますが、解除方法を教えて差し上げます。しっかりと、覚えておくのですよ」


 そう言って、ランドルフは隠れ家の場所や仕掛けの内容を教えてくれた。


 私は必死になって覚えるけど・・・。


 あれ? でも、こいつが本当のことを言ってるっていう根拠はないんじゃない? もしかしたら、現実世界で私を罠に掛けるために嘘を流しているのかもしれない。


「あなたを罠に掛けるつもりはないですよ。私の親友のヨルンと土の巫女、アマ―リア様に誓いましょう。もっとも、この地界の意味があなたには通じないような気がしますが・・・」


 ランドルフが自嘲するように下を向く。そしてゆっくりと後ろを振り返った。


 私はつられるようにランドルフが見た方向に目を向けると、そこには一枚の絵が飾られていた。


 絵は、集合写真のようなものだった。8人の男女が笑いながら視線を向けている。


 あれは、闇魔の四天王と、魔王!? いやそれ以外にも何人か人物が描かれている。


「へ? あれって、エレオノーラ?」


 耳はとがっているけど、あれは確かに私の親友だよね。私が思わずつぶやくと、ランドルフが意外なことを聞いたようにこっちを振り返った。


「エレオノーラ、ですか? 確か、ロレーヌ家の令嬢がそんな名前でしたよね? 彼女がどうしましたか?」


 そして絵をもう一度見て、何かに気づいたようだった。そしてこれまでにないくらい、とびっきりの笑顔で喜んだ。


「そうか! アマ―リア様は見事にやってのけたということですね! これは素晴らしい! 冥途の土産というか、モーリッツやナターナエルと語る話題ができましたよ! そうか、そうだったのですね」


 なんか急にうれしそうな声を上げたんだけど!


 でも、笑っていたはずのランドルフが急に真顔になった。


「ダクマー様! 彼女の土の資質はどれほどですか!? まさか、レベルが5に達しているのではないでしょうね!?」


 コイツ、急に真剣な顔で詰め寄ってきたんだけど!


「い、いやエレオノーラが星持ちや魔力過多とは聞いてないから、3以下だと思うよ。確かに水や土が得意そうな印象はあるけど、それほどではないと思うし」


 私はまずいとは思いながらそう答えた。


 うう。なんか真剣な顔で詰め寄られたから答えちゃったけど、これってまずくない? いちおう、ただ印象を伝えただけだから問題はないとは思うけど・・・。


 私の答えに、ランドルフはどこかほっとしたような顔になった。


 でもその時、私の頭をふと過るものがあった。


「あ、うん。レベル5以上の技を使えるとしても一瞬だと思うし。そこまで土の魔法に特化していることはないと思うよ。土魔法なら、王国には名人と呼ばれる人は何人もいるからね。その人たちと比べるとさすがに一歩劣るんじゃない?」


 私は王国貴族の顔を思い浮かべながら答えた。


 ルイーゼ先生の土魔法もすごかったし、英雄と呼ばれたバルナバスさんもかなりの魔法を使えるそうだ。あと、こっちには来ていないけど、うちの母もかなりの土魔法の使い手だと聞いている。エレオノーラの魔力量はかなりのものだと思うけど、魔法の実力ならその人たちにはまだかなわないはずだ。


 ランドルフは私の答えをちゃんと聞いていないのか、茫然とした様子で私に問いかけた。


「と、ということは、ヨルンとアマ―リア様の子孫は、一瞬だけならレベル5相当の土魔法を使えるということですね? そして公爵令嬢なら、相応の魔力量もあるはずだ・・・。それは、かなりまずいことになるかもしれません」


 爪を噛み、余裕のない表情でそうつぶやいた。


 え? 私、なんかやらかした? なんか急に、ランドルフが慌て出したように見えたんだけど!


「ダクマー様! そのエレオノーラという少女が、ヨルンの杖を使っているのならまずいことになっているやもしれません。ベストは、彼女が我らの島から離れることですが、それは難しいですか?」


 私につかみかからんばかりの顔で聞いてくるランドルフ。あっけにとられながらもなんとか答えた。


「う、うん。本人はかなりやる気になっているみたいだし、爵位も高いからこの島から離れるのは難しいと思う。え? あの子になんか問題でもあるの? 私の親友なんだけど! もしかして闇魔に狙われちゃうってこと?」


 私はランドルフに怒鳴り返した。エレオノーラがやばいなら、私は全力で彼女を守らなきゃ! 絶対に危険にさらすわけにはいかないんだ!


「詳しく説明したいところですが、さすがにそれほどの時間は残されていないか・・・。しかし、あれがある。あれをこの子たちが手にすれば、事情は伝えられるかもしれない!」


 ランドルフは真剣な顔で私の目を煮詰めた。


「ダクマー様。ヨルン・ロレーヌの手記を探しなさい。そこには、私たちのことやエレオノーラ様を狙う存在について書かれているはずです。いろいろ触りがあって伝えられなかった真実を、あなたたちが知ることができるはずですから!」


 へ? ヨルン・ロレーヌの手記? ヨルン・ロレーヌって、確かエレオノーラのご先祖様だよね? 賢王と呼ばれたアルヌルフ王に仕え、闇魔との前哨戦や、その後の王位継承戦で大活躍したという、私でも知ってるくらいの歴史上の大人物なんだ。


 その時、私の周りの景色がにわかにゆがみだした。


「時間切れ、ですか。大切なことなのに、十分に伝えられないなんて! いいですか! ヨルン・ロレーヌの手記は、アルプトラウム島のヴァルド族の長が持っているという情報があります。そこに書かれているのは事実に近い出来事なんです! それを見れば、あなたがやるべきことが分かるはずです! どうか・・・・」


 ランドルフが何か叫び続けているけど、私はそっと首を傾げていた。


「ヨルン・ロレーヌの手記? またなんだってそんなものを・・・。なんか、闇魔の四天王を倒したのに、謎は深まる一方みたいなんだけど!」


 私は叫んだけど、抵抗むなしく意識は戻っていったようだった――。

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