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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第5章 色のない魔法使いと北での戦い
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第274話 炎の巫女と奇襲と

「くそっ! ヴェージェの町の地脈が抑えられたと聞いたが、あそこからハーピーが召喚できるとは! おそらくハーピーが空から魔物を運んできやがったんだ! あの速さなら、すぐに戦いが始まっちまうぞ」


 私と同じくらい目がいいのだろう。ケヴィンが魔物の大群を見て吐き捨てた。守備隊や私たち学生の中には動揺する人も多かったけど、エレオノーラやフェリクス先輩は落ち着いた様子だ。リーダーがどっしり構えていると、下の人間は安心だよね。


「みんな落ち着いて。打合せ通りに陣形を組みなさい。ダクマーはラーレ先輩の傍に!」


 くっ、一番槍は任せてもらえないみたいだ。まあ私は歩兵だから、遠くにいる敵を倒すのは難しいんだけどね。


 一方で、戦意が高いのはフェリクス先輩だ。騎獣に飛び乗って、いつでも突撃できる態勢を作っている。先輩の周りには、同じように戦意が高い貴族や護衛がいて、エレオノーラの指示を今か今かと待ち構えている。


「ラーレ先輩、前へ」


 エレオノーラの言葉に、ラーレたち魔術師隊が前面に移動した。


 おそらく、この戦いの主役はラーレだ。そのことに、相手もすぐに気が付くと思う。私はちらりとラーレの方を確認すると、彼女は青い顔をしていたが、それでも覚悟を決めているようだった。彼女の傍にはホルストやヨッヘムもいて、私と目が合うと頷いてきた。うん。私たちでラーレを守らなきゃね。


 魔物たちは砂埃を上げながら突撃してきた。前方には魔犬が、その後ろにはゴブリンとハーピーを中心とした魔物たちがいる。その後ろからは、足音を響かせながらオーガが突撃してくる。なんか、魔物たちは嬉しそうな顔をしているように見える。下卑た笑いを上げてくれちゃって!


「ラーレ先輩! 今です!」


 エレオノーラの言葉に、ラーレの右手から魔法陣が出現し、手に黒い炎を発現させた。


「燻り、焼き尽くせ!」


 黒い炎は、生徒たちが設置した廃木材の山に一直線に突き進んでいく。結構距離があるみたいだけど、他の魔術師がラーレの魔法をフォローしているのか。黒い炎はなんとか木材に着弾し、そして勢い良く燃え上がった。


 木材から黒い煙が立ち起こった。ヴァンダ先輩がニヤリと笑っている。あの材木にはラーレの炎を広げ、煙を広範囲に届かせるための術式が組まれている。ヴァンダ先輩の闇魔法に、ルイーゼ先生が土魔法で地脈の魔力を引っ張ってきたという複合魔法だ。


「煙が魔物たちに届いたよ! あ、魔犬たちが苦しんでる!」

「まだよ! ギルベルト!」


 ギルベルトは不敵に笑って風魔法を展開した。ギルベルトとその護衛が風魔法を放つと、風はラーレの煙を敵陣の深くまで送り込んだ。


 煙は敵陣深くまで届いている。魔物たちのせき込む声が聞こえてくる。これなら!


「弓兵隊! 矢を構えて!」


 エレオノーラの号令に、ケヴィンら弓兵隊は矢を斜め前に向けてつがえている。


「うてぇぇぇ!」


 エレオノーラの叫び声とともに、弓兵隊は矢を一斉に放った。矢の雨という言葉にふさわしく、矢は魔物たちの頭上に降り注いだ。


 ケヴィンたちが驚いた顔をしている。


「見ろ! 魔物たちが倒れていくぞ!」


 ラーレの煙は、魔物たちの魔力障壁を確実に減退させていた。本来なら障壁に阻まれるはずの矢は、魔物たちに刺さってその数を減らしていく。オーガなんか、体中に矢が刺さってハリネズミのようだった。


「第二射用意!」


 エレオノーラの言葉に、慌てて次の矢をつがえる弓兵隊たち。そして都合3度、矢の雨は魔物たちに降り注いだ。


 前のほうで魔物たちが大勢倒れているのが見えた。残った魔物も傷だらけで、怪我をしている魔物も多い。魔力障壁を展開できずに傷を受けたことに、かなり動揺しているようだった。


「ロレーヌ! もういいだろう!」


 フェリクス先輩はじれたようだ。その周りには、北の貴族たちがそれぞれの騎獣にまたがりながら、エレオノーラをギラリと輝いた目で睨んでいる。


 エレオノーラはニヤリと笑うと、右手を上げ、魔物たちに向かって振り下ろした。


「騎兵隊! 突撃ー!!!」


 エレオノーラの掛け声とともに、フェリクス先輩が騎兵たちを振り返る。そして、手を高く上げて叫び出した。


「全員、煙を全身に浴びろ! この煙が俺達を守ってくれる! 弓兵の奴らだけに良い恰好はさせるなよ! 俺達の力を見せてやるぞ!」


 フェリクス先輩が周りの面々を見渡した。


 そしてにやりと笑うと、メレンドルフの標語を力強く叫んだ。


「哨戒し、押しつぶせ!」


 フェリクス先輩の掛け声とともに、騎兵隊が雄たけびを上げながら魔物の群れになだれ込んでいく。魔物の指揮を執っていた闇魔が、フェリクス先輩の槍に貫かれるのが見えた。相変わらず、凄まじい迫力だ! 豪快な一撃に、胸がすくような思いがした。私も戦いたい!


「私たちも続くぞ! 紅蓮の炎を火にくべろ!」


 そう叫んだのはハイデマリーだ。ガブリエーレのおばさんから預かったのだろうか、赤い宝石が付いた大杖を持っている。彼女は歩兵と魔術師隊の今世軍の指揮を執り、騎兵隊を追いかけていく。そして、騎兵隊が取りこぼした魔物を次々と打ち取っていった。あいつ、やるな!


 魔物は次々と打ち取られていく。闇魔も確実に倒されていったのが見えた。これは、勝ったと言えるのではないだろうか。


「ふふふふ。援軍が来たと聞いて奇襲を仕掛けてきたんでしょうけど、そんなに甘いものではないわ。闇魔とはいえこれほどの被害、受けたことはないでしょう?」


 エレオノーラが不敵に笑っている。なんか悪役令嬢っぽいんだけど! 周りの人たちもちょっと引いてるようだしね。


 余裕の笑みを浮かべるエレ―ノーラに、ルイーゼ先生が警告の言葉を発した。


「エレ―ノーラ様! まだです! ダクマーも気合を入れなさい! ラント家の当主たちも、勝ってるはずの戦いで命を落としている。あのモーリッツはどこかから私たちを狙っているはずよ!」


 私はぎょっとしてあたりを見回した。


 地上には、何もいない。側面にも後ろにも、闇魔の気配はないようだけど・・・。ってか、こんな原っぱの真ん中で、どうやって奇襲をかけるというんだろうか。


「ダクマー! 上だ! 空中に闇魔たちが浮いているぞ!」


 ギルベルトが警告のお琴がを発した。上空から、10体ほどの闇魔が奇襲を掛けようとしているところだった。


 闇魔たちは上空から風魔法を雨のように降らせてくる。


「甘い! そんな攻撃が当たると思うなよ!」


 闇魔の風魔法を防いだのはホルストだった。魔鉄製の両手剣を構え、ラーレを狙った風魔法を切り払っていく。


 エレオノーラや他の生徒も魔法を放ち、闇魔たちの魔法を相殺する。それを見て、3体の闇魔が急降下してくる。そのうち1体の狙いはラーレだ!


 この! ラーレを狙おうだなんて、100年早いんだよ!


「きえええええええ!」


 私は素早くラーレの前に出ると、闇魔に向かって刀を斬り上げた。私の長剣は闇魔を斜めに斬り裂き、その命を奪っていた。


 まず1体!


「構うな! 我らは我らのすべきことをするのだ!」


 私があっさりと闇魔を倒したのに、敵の指揮官はそんなことを言ってきた。空中の闇魔たちはその言葉に従って、いよいよラーレへの攻撃を強くする。私は何とか刀で相手の攻撃を弾き、ホルストも必死の形相で大剣を振るっている。


 私は守備の合間に何とか敵の首魁のほうを見た。空中で闇魔に指示を出しているのは、白髪をオールバックにして、神経質そうな顔をした鷲鼻の老人だった。


「全員、落ち着いて黒い髪の魔法使いを狙え! この戦いはあの女を殺せれば我らの勝利だ! あの炎の巫女の首を取るのだ!」


 狙われていることを知ってラーレがぎょっとする。


 え? 闇魔はこんなに犠牲を出しているのに、そんなの気にしていないってこと? それに、こいつらの指揮を執っているあいつは!


「やはり来たわね! これだけの損害を与えた存在を生かしておくわけがないと思ったわ! 覚悟なさい! 私の、土の星持ちの粋を上げて、あなたを倒させてもらう!」


 ルイーゼ先生が大声を上げていた。


 そうか、アイツがそうなんだね。通りですごいプレッシャーだと思ったよ。体格とかは全然似ていないのに、どこか見覚えのある魔力だと思ったんだ。


「闇魔の四天王のモーリッツ! あなたを再び地獄へと送り返してあげるわ!」


 ルイーゼ先生の言葉で、闇魔の四天王との戦いが再び火ぶたが切って落とされたのであった。

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