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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第1章 色のない魔法使いは領地ですくすくと成長する
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第27話 戦いの決着

「これが、魔術。あんなにしぶとかった闇魔を簡単に倒すなんて。魔術ってやばすぎない?」


 私は茫然とそうつぶやいた。


 おじい様の魔法は、闇魔をあっさりと仕留めていた。闇魔を一人倒すには100人の戦士が必要だと言われているのは何だったのだろうか。少なくともおじい様は一人で十分闇魔と戦える気がする。


「上位魔法をうまく使えば、闇魔とはいえ倒せるんですね。でもあんなに的確に魔法を使うなんて・・・。魔法の威力といい、一般の魔法使いにはできない技です」


 アメリーが茫然とつぶやいた。


「あれは多分、土魔法のアレス・スタッブだね。図鑑で見たことがある。土の最高峰の魔法だって聞いたけど、まさか見ることができるとは・・・」


 アレス・スタッブは、接触した相手を塵へと変える土魔法である。威力は御覧の通りで、泥をくらったら確実に消滅してしまう。まさに最高峰の魔法にふさわしい威力なんだけど・・・。


「あれってたしか、消費魔力もすさまじかったよね? 確か、侯爵クラスっじゃないと扱えないんじゃなかったっけ? おじい様は子爵なのに、2発も使えるってどういうこと?」


 私は疑問に思うが、その時ホルストの声が聞こえてきた。


「姉さん! 大丈夫なのか? すぐに治療するからな!」


 その声を聴いて思い出す。ラーレは闇魔の魔法で背中を撃たれたんだった!


 私は急いでラーレの元に駆け出した。ラーレって、私の予想以上に素早い動きをすることがあるんだ! こんなときだけスピードを上げるなんて、何を考えているの!?


「ラーレ! 大丈夫なの!」


 うつぶせに倒れていたラーレはむくりと立ち上がる。そしてあたりをきょろきょろと見渡した。


「ね、ねえさ・・・、いや愚姉。平気なのか?」


 ホルストが取り繕うように聞いている。ラーレはきょとんとしながら、自分の体を見回した。


「いや、服が燃えちゃってるんだけど。この服、お気に入りだったのに」


 平気そうなラーレを見て脱力する。何だ、心配させないでよ。


 私たちがほっとしていると、後ろからデニスの焦るような声が聞こえてきた。


「大丈夫か! すぐに治すから、気を確かに持つんだ!」


 デニスは人質の少年たちに魔法を使っていた。青い魔法は水属性だね。光ほどじゃないけど、傷を癒すことができるんだ。



◆◆◆◆


 しばらく、デニスが二人の少年を癒す音だけが響いた。


「これで応急処置はできたはずだ」


 そう言ってデニスは汗を拭う。茫然とする2人の少年を、護衛が素早く外に連れて行った。


 少年たちを助けられてほっとしていると、おじい様が不機嫌な顔で私たちに向き直っていた。あれ? おじい様、なんか怒ってない?


 その表情を見て気づく。私たちは人質を助けるためとはいえ、勝手に飛び出したんだった!


「この愚か者どもが! 揃いも揃って勝手な行動をしおってからに! 万が一、貴様らに怪我があったらどうするつもりだ!」


 うう。でも非常事態だからしょうがないじゃないか。

 説教をしようとしたおじい様を止めたのはデニスだった。


「おじい様。人質の少年二人の両親は・・・」


 私は思わず廃屋の中を見渡す。そこには2体の死体が転がっていた。2体とも、胸に大きな穴が開いていて、内臓を抜き取られているのが分かった。


「闇魔に、捕食されたか」


 おじい様は悔しそうにつぶやく。おそらく彼らの内臓は、闇魔に食べられてしまったのだろう。闇魔はこうして魔力を補充することで、結界のあるこの土地でも活動できるようになると言われている。


 おじい様は自領で領民を守れなかったことに忸怩たる思いがあるようだった。下を向いて、こぶしを握り締めていた。


 そんなおじい様に、デニスがおずおずと話しかけた。


「おじい様、勝手なことをして申し訳ございません」


 デニスが頭を下げた。おじい様は怒りの表情で何か言おうとしたが、歯を食いしばるだけで何も言わなかった。


 そして私たちを一瞥すると、うなるような声で言葉を続けた。


「あの子供たちの面倒はワシが見る。この土地を治めている者としての仕事だからな。身内がいないようなら、信頼のおけるものに預けようと思う。おそらく、あの者たちには高い魔力がある。きちんと育てれば、我が領の戦力になるはずだからな」


 おじい様は領地の戦力だけを気にした冷たい言い方だけど、2人の身を案じていることが察せられた。私とラーレを見捨てなかったように、2人に合った生き方を提示するつもりなのだろう。


 2体の死体が彼らの両親だとすると、少年たちは一夜にして天涯孤独になったということだ。やりきれない思いがする。迅速に対処したと思ったが、それでも2人の両親を助けることはできなかった。


「さて。今日の仕事は終わりだな。屋敷に帰るぞ」


 おじい様はそう言って廃屋を出ていった。護衛たちに指示を出す声がした。


 廃屋を片付ける音がして、私たちはやっと、決着が着いたことを実感できたのだった。


※ グスタフ視点


「やれやれ、なんとか片付きましたね」


 オレが背伸びをすると、当主様が何やら考え込んでいるのが見えた。


「でもさすが、ですね。土の最上位魔法なんて、初めて見ましたよ。あの難しい魔法構築を、しかも2発とは。オレは伯爵が魔法を使うのを見たことがありますが、その時と比べても段違いでしたよ」


 この人、本当に子爵なのかと疑問に思うくらいの魔力量だった。そう言えば、ダクマー嬢ちゃんやラーレ嬢ちゃんも魔力量に関してはかなり桁外れだ。思い直してみると、子爵家の魔力量ではないように思う。


「まあ、ワシはこのとおり、長く生きておるからの。魔力量は生来の者が大きく影響するが、毎日瞑想や魔力循環を繰り返すことで少しずつ増やすことができる。今のワシは、伯爵クラスの魔力量があるといえるだろう」


 伯爵かぁ。それはすごいが、でも伯爵でもあのクラスの魔法を連発できないんじゃねえか?


「あとは、魔法自体の省力化だな。魔力制御の腕を上げることで、不要な魔法陣を省略できる。それによって、通常より少ない魔力で魔法を放つことができるのだ」


 さすがだぜ。この当主、魔法に関しては本当にずば抜けているよな。


 当主は後ろの孫たちを振り返ると、言葉を続けてきた。


「まあ、この家で魔力量で悩むのはワシで最後だな。息子も孫たちも、侯爵クラス以上の魔力量を持っておる。ワシの妻のおかげでな」


 そう言えば聞いたことがある。亡くなった当主の奥様は、南のフランメ家から嫁いできたと。フランメ家と言えば、この王国を代表する魔術の名家だ。そこの娘となると、魔力量は相当だったと思う。よく、この家に嫁いでこられたよなぁ。


「しかし疑問だな。随分あっさりと、闇魔を倒せたものだ。もっと粘る物と思って追撃の魔法も用意していたのだが・・・」


 うっ、そうなのか。かなり厄介な相手だと思ったが、当主様はもっと苦戦することを予想していたのか。


「ダクマー嬢ちゃんの蹴りが当たったのが結構ダメージになったんじゃないですか? なんか顔を怪我していたみたいですし」


 オレの言葉に当主様は考え込む。


「闇魔が、怪我をしていた? ダクマーの一撃でか?」


 あ、当主様はそのシーンを見ていなかったのか。


「ダクマー嬢ちゃんが、魔力障壁を打ち破って一撃を与えていたんっすよ。闇魔の魔力障壁を破るなんて、さすがと言うか無謀と言うか・・・・。まあ、ダクマー嬢ちゃんらしいっていやあ、らしいですけどね」


 当主は考え込んだ。そしてしばらく俯くと、少しずつ顔を上げる。そして大声で高笑いを上げた。


 急に笑い出したのにビビっていると、当主は小さな声でつぶやいた。


「ふふふふふ! エルネスタよ。ワシらの孫は、ひょっとしたら闇魔との戦いを変えてしまうやもしれんぞ」


 当主は上機嫌になって、孫たちを振り返った。


「貴様ら! 今日のところは帰るぞ! 命令違反の罰則は受けてもらうから、覚悟しておくんじゃぞ!」


 そう怒鳴ると、当主様は返事も待たずに屋敷に向かって歩き出した。その歩みは、どこか軽いように思えた。

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