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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第4章 色のない魔法使いと貴族と王族と
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第254話 当たらない攻撃

 学園の地下室で私はナターナエルと向かい合っていた。


 一騎打ちで勝敗を決めていたのは今は昔の物語だ。今は仲間同士で連携して戦うのが主流で、一対一で戦う機会なんてほとんどない。おじい様が若いころでもそんな戦いをしなかったというから、相当に古い作法になるんだけど・・・。


「ダクマー! 後ろのことは気にしないで! 絶対に、カサンドラに邪魔なんてさせないから! でも、必ず勝つのよ! 生きて、無事な姿を私に見せなさい!」


 エレオノーラの叫び声が聞こえてきた。彼女はホルストやラーレと協力してカサンドラと戦うようだ。ギルベルトやマリウス、そしてアメリーも必死であいつと戦っている気配がした。


「ダクマー君。不本意だが、こうなったら君の戦いの邪魔はさせない。カサンドラもヨルダンも、決して手出しはさせないから、思う存分腕を振るいなさい」


 フリードリヒ様がちょっと顔をしかめながら声をかけてきた。彼に牽制されたヨルダンは、腕を組みながら顔をしかめている。その様子は何かをこらえているかのように見えるんだけど・・・。


 まあ、フリードリヒ様としては協力してナターナエルを倒したかったんだろうけど、陛下の思し召しなら仕方がないと思う。国王陛下がなんでこの一騎打ちを推奨したのか、よく分からないんだけどね。


「小娘。覚悟はいいか? 悪いが、手を抜いてやるつもりはないぞ」

「そっちこそ、アンタは一度私に斬られたのを忘れたんじゃないでしょうね。私の刀の錆にしてくれるわ」


 私たちはにらみ合った。ナターナエルは小刀を構えて今にも飛び出しそうな恰好をしている。魔法をメインで使っていた前回とは打って変わり、接近戦でこちらを撃退しようとしているみたいだけど・・・。


 でも、あの時と違ってあいつとの距離はそれほど離れていない。この距離なら、私の最強の秘剣でアイツを倒すことができるはずだ。


 接近戦は私の土俵だ。誰が敵になったって、負けるわけにはいかない! 私には、これしかないんだから!


「きええええええええええええ!」


 私は叫ぶ。一撃にすべてを籠めるのは示巌流の誇り。コイツにだってやってやれないはずはない!


「ふっ。それが示巌流の誇りとはいえ、愚かな・・・」


 ナターナエルはなんか言ってるけど、気にしない! あいつの予想を上回るスピードで、一撃で斬り裂いてみせる!


 私は刀を上段に振りかぶると、大きく息を吸いこむ。そして息を吐きながら、力強く叫んだ!


「秘剣! 羆崩し!」


 私は一瞬でナターナエルに接近し、刀を思いっきり振り下ろした!


 だけどナターナエルは私の動きに合わせて素早く後ろに飛んだ。私の秘剣は、あっさりと空振りに終わってしまったのだ。


「なっ! こんなに簡単に!」


 後ろに着地したナターナエルはニヤリと笑った。 


「いかに秘剣・大隈崩しとはいえ、来るのが分かっていたら躱すのは難しくない。王国が誇る接近戦の名手が聞いてあきれるわ。相手の動きを先読みするのは、お前だけの専売特許というわけでなない」


 そして素早く私に接近すると、神鉄の小刀で私を斬りつけてきた。私は慌てて体をそらすけど、小刀は私の腹を薄く斬りつけた。


 ナターナエルは勢いをそのままに、連続で攻撃してくる。私はやっとのことであいつの斬撃を躱しているんだけど・・・。


「な、なんで!? 動きが、読めない!」


 そう。ナターナエルの魔力は朧気で、いつものように魔力から相手の動きを読むことはできない。外に魔力を纏っているわけではないのに、動きは以前とは比べ物にならないくらい速い! 私は防御で手いっぱいになっていた。


「ふん。やはりな。カーステンとの攻防を見てそうではないかと思ったが、それがお前の見の限界か。外に流れる魔力が分からなければこんなものよ」


 悔しいけどあいつの言う通りだ。私は魔力の流れから相手の動きを先読みしてきた。でもナターナエルは体の外に一切の魔力強化を行っていない。自分を傷つける火の魔力を纏わないのは分かるけど、それにしたって動きが尋常じゃないくらいに速い!


 え? 闇魔なら身体強化なしにこんなに早い動きができるってこと? それとも、火以外の魔力を使っているということだろうか。


「この程度で終わりということか!」


 ナターナエルの回し蹴りが私に直撃した。私はその一撃に耐え切れず、5歩ほどの距離を吹き飛ばされてしまう。


 床に叩きつけられた私は、刀を杖代わりにしながら何とか立ち上がった。


「くっ! なんで!」


 私は思わずナターナエルを睨みつけるが、アイツは涼しい顔で私を見下した。


「解せん、という顔だな。火の魔力による内部強化を行えるのは、あの小娘だけでなないということだ」


 その言葉を聞いて絶句した。


 え? そういうことなの? ナターナエルは、火の魔力を使って内部強化をしているってこと?


「火の魔力は、自分を傷つけるから身体強化には向かないはずなのに!」


 もし火の魔力で身体強化しているとしたら、相当の痛みがあいつの体に走っているはずだ。内部強化はただでさえ痛みがあるみたいなのに、痛みが一番強い火の魔力で内部強化するなんて! 闇魔の耐久力があれば、それも可能とでもいうのか!


「さて、呆けている暇はないぞ! 戦いはまだ続いているのだからな!」


 よろよろと立ち上がる私を、ナターナエルが追撃してきた。すさまじい速さの連続攻撃だった。私は刀を使って何とか猛攻を防ぐけど、一歩、二歩と下がってしまう。魔力から攻撃を読むことができないうえ、攻撃のスピードはこれまでの誰よりも速い。このままじゃあ、相手につかまってしまうのも時間の問題かもしれない。


「くっ! いい加減に!」


 私は刀を下段に構える。私が最も得意とするあの秘剣なら、こいつに攻撃を当てられるかもしれない!


「秘剣! 鷹落とし!」


 下段から素早く斬り上げた一撃は、しかしナターナエルには当たらない。斬撃と同時に後ろに大きく飛び、私の秘剣を簡単に避けてみせたのだ。


「なるほど。さすがに鋭い一撃だ。この一撃が当たったら、ただでは済まなかっただろう」


 感心するようにナターナエルは言うが、次の一言に私は絶望に落とされた。


「だが、当たらなければ何の意味もない。やみくもに打った貴様の攻撃なぞな。初見ならともかく、2度目なら避けることなど造作もない。魔力さえ読めないようにすれば、貴様の攻撃が当たることなどないのだ」


 ナターナエルの嘲笑に、私は絶句した。私には接近戦しかないのに、こんなに簡単に攻撃を避けられるなんて! 私の示巌流が、こいつには、闇魔の四天王には通用しないってこと!?


 顔を青くする私に、ナターナエルの言葉が落ちてきた。


「相手の動きにあった最適な技を繰り出すのが示巌流の剣士よ。貴様ごときが示巌流を名乗るのはおこがましい。示巌流の剣士で貴様のように魔力の流れを読む者などいなかったはずだ。魔力なしに相手の動きを読めないとは、未熟な限りよ」


 呆れたように言うナターナエルに、私は答えることができなかった。

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