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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第4章 色のない魔法使いと貴族と王族と
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第229話 下級生と討伐任務と

 そして魔物討伐の日が訪れた。


 私は珍しく緊張していた。だって、下級生と一緒に戦うのは初めてだったからね。


「私の時はたしか、エレオノーラたちと一緒にだったけど、上位クラスの1年生は中位クラスの2年生に引率されるのが恒例なんだっけ? 中位クラスにもできる人が存在するのを分からせるためだってことだけど・・・」

「そうだね。昔上位クラスの生徒が中位クラスの生徒を見下しちゃうことがあったらしくて、最初に中位クラスの先輩の力を見せるのが恒例行事になったそうだよ。学園で1年しっかり学べば強くなることを証明するためだってさ。今年はダクマーさんがいるから、見下したりされることはなさそうだけどね」


 丁寧に答えてくれるクリストフに、私は頷く。最初に中位クラスの戦闘員の実力を見せつけておこうという感じなんだよね。私たちの時も、エレオノーラたちは中位クラスの上級生と討伐に向かったらしいし。まあその時はフリッツは不参加だったみたいだけど。


「最初に魔物退治に参加するのは上位クラスでもトップの生徒らしいぞ。戦闘経験があるやつばかり集めたそうだぜ。俺達もあんまり格好悪いところはみせられないぜ」


 ジークが茶化すように教えてくれた。


 なるほどなー。まあアメリーは星持ちで優秀だからね。こういった時に選ばれるのは私にとっても誇らしいかもしれない。うん、ちょっと気合が入ってきた!


「今回参加する1年生は4人いるらしいが、そのうち一人がお前の妹で、もう一人とも知り合いなんだろう? あんまりかっこ悪いところは見せるなよ」


 ジークの言葉に私はふくれっ面になる。確かに今までかっこ悪いところを見せたかもしれないけど、さすがに後輩の前ではそんなことしないよ!


「ま、まあまあ。ダクマーさんだっていつも変ったことしてるわけじゃないから。ほら! 後輩たちは先に到着しているみたいだよ。みんな準備をキチンとしないと!」


 クリストフがあわてて私に言いつくろった。私は準備しようとあたりを見回して、気づいた。こちらの最後の同行者のマーヤさんが青い顔をしていることを・・・。


「マ、マーヤさん、大丈夫? 顔色が悪いよ」


 背中をさすりながら顔を覗き込むと、青い顔をしたマーヤさんと目が合った。なんだか顔色が悪く、ちょっと震えているように見える。


「い、いえ。体長は悪くなかったのですが、緊張して・・・。毎年の恒例行事とはいえ、私たち中位クラスの生徒が下級生とはいえ上位クラスの生徒をフォローなんてできるのでしょうか・・・。闘技場で堂々と戦ったダクマー様やジーク様はともかく、私はそんなに強くないですし・・・。クリストフみたいにクラスをまとめているわけじゃあないですから」


 お、おおう。どうやらマーヤさんは思わぬ大役にちょっと緊張しているみたいだ。緊張すると吐きそうになることってあるよね。私はそんなふうになったことはないんだけど。


「大丈夫だよ。マーヤさんは学園に来て風魔法の腕をメキメキと上げているじゃないか。この前だって、魔物の群れをきちんと発見してくれたし。君が力不足ってことはないと思うよ」

「そうだぜ! 風魔法を使った索敵ってかなり難しいんだぞ! 俺やダクマーだってできないし、胸を張っていいんだぞ! マーヤはうちのクラスで一番索敵が上手いんだから、自信を持っていいと思うぜ」


 クリストフとジークが慌てて宥めた。まあそうなんだよね。デニスやギルベルトが簡単にやっているように見えるけど、索敵ってかなりの高等技術らしい。難なくそれをやってのける彼らがすごいのであって、できない人にはできない魔法なのだ。


「うん。風魔法できっちり探索できる人ってすごいんだよ! どんなに強くても、敵を見つけらんなきゃ意味がないし。マーヤさんはこれまで探索でミスしたことないし、模擬戦でもきちんと敵を見つけているよね? だから、心配することなんてないと思うんだけど・・・」


 実力という意味では、心配なのはむしろ私だ。何しろ私は4属性の魔法は使えないし、魔法陣なんて何一つ使えない。刀で敵を斬ることしかできないのだ。今回はあくまで下級生のフォローだから、あんまり斬りすぎないように言われているんだよね。そっちの方がむしろ心配な気がする。


「大丈夫だ。マーヤは俺が自信を持って推薦できる優秀な生徒だ。お前の腕は先生が保証する。万が一のことがあってもちゃんとフォローするから、お前はいつも通り、自分の仕事に集中すればいいんだ。いつも通り、いやいつもの半分ほどでも力を出せれば、今回の討伐は上手くいくんだからな」


 引率のガスパー先生の言葉に、マーヤさんは力なく頷くのだった。



◆◆◆◆


「お姉様! えっと、今朝ぶりですね! 今日はよろしくお願いします!」


 集合場所に着いたのと同時に、アメリーが元気よく声をかけてきた。その後ろにはロジーネがいて、私と目が合うと照れたように一礼した。


「アメリー君! まったく、ちょっとは落ち着きなさい! 魔物に見つかったら面倒なことになるんだぞ!」


 そう言ってアメリーを窘めたのは下級生の副担任のエッボ先生だった。この先生、ラーレの一件で魔道具を勝手に使ったことで降格処分を受けたらしく、今は1年生の上位クラスの副担任みたいなことをやってるんだよね。まあ元ラーレの担任らしいし、かなり優秀な人だってのは聞いている。南に対する忠誠心も厚いから、これ以上私に悪影響を与えることはないらしいんだけどね。


 下級生と合流すると、ガスパー先生がさっそく指示を出した。


「よし。全員揃ったな。では、始めるか。マーヤ君、頼むぞ」


 マーヤさんの顔色はまだ悪いけど、それでも確かに頷いた。


 マーヤさんが右手を上に掲げる。手の平から緑の魔法陣が現われた。下級生たちはみんな、一様に驚いた顔をしていた。


「サッチャー・ナッチ!」


 詠唱と共に緑の魔力が四方に散っていく。

 これはギルベルトやデニスが使っていた探索用の風魔法だね!

 探索魔法の中でもかなり難しい方だと言われているけど、さすがはマーヤさん。きっちり使いこなせるようになっているなんて!


 四方に散った緑の魔力が戻ってくる。それを受け止めたマーヤさんは、しばらく俯くと、やがてみんなの顔を見て報告してくれる。


「南南西に、900歩というところでしょうか。コボルトの群れが移動しています。今の魔法で気づかれたということはないでしょうが、慎重に進んでいただけると助かります」

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