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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第4章 色のない魔法使いと貴族と王族と
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第222話 ハイデマリーと魔物退治

 北と西の領地対抗戦が終わったある日のこと、私はいつものようにガスパー先生に呼び出された。


「また魔物が出たの? 去年よりもさらに増えていない?」


 私の愚痴に応えたのは、ドロテーさんだった。いつものように猫のような魔獣を連れている。うう。触りたいけど私が近づくとシャーっていうんだよね。なんかこの世界に転生してから動物に嫌われている気がする。


「そうですよね。私の領でも魔物災害が増えていて・・・。なんか、地面から瘴気が沸きだすスポットの発生が増えているようです。そこから魔物が出現するケースも多いみたいです」


 スポットから魔物が出現するのは2種類がある。一つは動物が瘴気を浴びで魔物になるケース。私も小さいころに裏山で魔犬に遭遇したけど、あれは山で野犬が魔物化した感じだよね。


 もう一つが、直接魔物が召喚されるケースだ。これは闇魔などに召喚されるケースが多かったが、結界が壊れた今、スポットから魔物が直接やってくるケースが増えたらしい。偉い学者の中で色々論議されているらしいけど、原因は分かっていない。なんか世界樹が関わっているらしいけど、大学の学者さんたちの間でも意見が分かれているそうだ。


「なんかいつも魔物退治に駆り出されている気がする。私ばっかり来ているような・・・」


 そんな私に苦笑するのはオティーリエだった。


「でも私はダクマーと一緒だと安心だな。ダクマーと一緒だと、絶対に魔物をこっちに寄せないからね。この間なんて、上位クラスの人と行ったんだけどやばかったんだから。ダクマーと一緒だと安心感が違うね」


 その言葉を聞いて、ちょっと顔が赤くなる。褒められなれていないから、こんな時どんな顔をすればいいか分かんないよ!


 照れる私とは反対に、ドロテーさんが真剣な顔で話した。


「でも、本当に魔物災害は増えているみたいですよ。今回も駆り出されたのは私たちだけじゃないみたいですし。ジークさんたちは、別の場所に行ったみたいですから。なんでも、上級生と一緒に行動するらしいですよ」


 そうなのか。この後、上位クラスの人と合流するとは聞いていたけど、他の組が別の場所に派遣されたのは知らなかった。


 私たちと一緒に行く上位クラスの人ってだれだろうな。エレオノーラとかならいいんだけど・・・。


 緊張感なく話す私たちを、引率のガスパー先生があきれた顔で見ている。


「ほら。おしゃべりはそこまでだ。今回は、上位クラスから3名が参加する。護衛はなしで、人数は6人と少ないんだから、十分に注意するんだぞ」



◆◆◆◆


「げ、あんたかぁ」


 私は眉を顰めた。


 南の森の手前で、上位クラスの生徒と合流した。相手はなんと、ハイデマリーとデニスだった。デニスはともかく、ハイデマリーとはちょっと前にやり合ったばかりだ。なんか、ちょっと決まずい。


 ハイデマリーは私を見て眉を顰めた。


「私だって、お姉様じゃなくお前と組むのは不本意なのよ。全く。なんてあんたなんかと組まなきゃいけないのよ」


 おお? こいつ、今なんつった?


 にらみ合う私たちを見て、デニスが溜息を吐いた。


「2人とも、そこまで。ハイデマリー様、これから魔物と戦うのですから控えてください。ダクマーも余計なことを言うんじゃない」


 こいつ! ちょっと彼女が見ているからって、いい格好してくれて!


 そう。上位クラスの3人目は、デニスの彼女のビルギットさんだった。彼女の肩には、フクロウのような鳥が止まっている。確か、この人って北の出身だよね? 北の人は召喚魔法で魔物を使役することが多いけど、この人ももふもふ持ちかぁ。うらやましいなぁ。


「あ、あの。ダクマーさんとご一緒するのは初めてですよね? どうか、よろしくお願いします」


 そう言って、ブリギットさんは丁寧に頭を下げた。その背中には槍を持っている。


「あ、こちらこそ。デニスがいつもお世話になっています」


 そう言って私も頭を下げた。ん? ということは、ハイデマリーはこのカップルと一緒に馬車で来たってこと? それはさぞかし、決まずい思いをしたことだろう。うん、ざまぁだね。


 私がニヤニヤと笑っていると、ハイデマリーが睨みつけてきた。


「はぁ。たのむから、喧嘩はしないでくれよ」


 ガスパー先生が溜息を吐きながら、今回の魔物について教えてくれた。


「この森で、リザードマンとキラーエイプが確認されている。数はそれほどではないが、やはり森でのキラーエイプは厄介だ。サーベルタイガーの鳴き声を聞いたという話もある。十分に注意するんだ」


 サーベルタイガーって、強力な虎の化け物だよね? サーベルタイガーは力も強力だし、動きも素早い。さらに、魔力障壁まで持っているというから、かなり危険な相手だ。人によっては、闇魔と同じくらいに危険視することもあるから、やばい相手には違いない。


「ふっ。サーベルタイガーごときがなんだというのよ。私のご先祖は、サーベルタイガーをブラッドボーンごと焼き殺したと言われているわ。そんなのが現れたって、私の敵じゃないでしょうし」


 ハイデマリーは鼻を鳴らす。ブラッドボーンってのは、5歩くらいの巨大な牛だ。出現したら討伐の軍が編成されるというからかなりの強敵なんだけど・・・。


「いや、確かにアンタの先祖はすごい人かもしれないけど、アンタもそうだとは限んないし。本当にやれんの? 猛獣にビビって戦えないとは言わないわよね?」


 私が疑いのまなざしでハイデマリーを見ると、彼女は勢いごんで睨みつけてきた。


「あ? いまなんつった!? この場で丸焼きにしてあげてもいいんだぞ!」


 今にも喧嘩を始めそうな私たちに、デニスはあきれたように頭に手を当てると、ビルギットさんに向き直った。


「ビルギット。あいつらは放っておいて、私たちは敵を探そう」


 デニスは私たちを無視して魔物の捜索を始めるようだ。デニスが魔法を構築しようとする間に、ビルギットさんがフクロウを放った。


「ミネルヴァ! 上から魔物を探して! 決して、戦ってはダメよ! 見つけたらこっちに知らせに向かうのよ!」


 クックーと鳴き声を上げながら飛び立つフクロウ。意思疎通できるなんてますますうらやましい。うらやましいよー!!


「サッチャー・ナッチ!」


 私がフクロウを目線で追っていると、デニスが風魔法を放つ。ギルベルトと同じ、かなり高度な風魔法らしいけど、こいつのことはどうでもいい。私はフクロウに釘づけになっていた。


「魔獣・・・、いいなぁ。意思疎通できるもふもふなんて、うらやましすぎる・・・」


 私が茫然とつぶやくと、ドロテーとオティーリエが慌てて言い募った。


「い、いえ、サッチャー・ナッチって、風のかなりの高度魔法ですよ? ダクマーさんのお兄さん、すごいじゃないですか!」

「フクロウって、そんなに珍しい魔獣じゃないでしょう? 確かに常にあの鳥と触れ合えるのはうらやましいけど、デニスさんの魔法ほどじゃないでしょう!」


 言い募る2人を、デニスはあきらめたようになだめた。


「大丈夫です。ダクマーのこの反応には慣れていますから」


 そういって戻ってきた魔力を読み取った。


「南西に、1500歩といったところか。ん? これは・・・」


 敵は南西か。リザードマンはともかく、キラーエイプは厄介だよね。魔物は人間を襲うから、なわばりに入ったら敵対してくると思うけど・・・。


「この面子なら、先頭は私が行く感じかな? じゃあ行こうか」


 私が前に出ようとすると、ビルギットさんが慌てて横に並んできた。


「私も槍の扱いには自信があります。ダクマーさんだけに戦わせるわけにはいきません」


 そう言って、たおやかに微笑む。どうやらビルギットさんは、きれいな外見に見合わない、近接攻撃の名手らしい。まあ、昔はフェリクス先輩たちと行動していたようだから強いとは思うけどね。


「まあ、前衛は任せたわ。私たちも続くから、こっちに敵を通さないように」


 ハイデマリーが偉そうに言った。確かに後衛に敵を通さないのは前衛の役割だけど、なんだかなぁ。コイツの言うとおりにするのは気が乗らないというかなんというか・・・。


 私は溜息を吐きながら、南西へと足を進めるのであった。

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