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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第4章 色のない魔法使いと貴族と王族と
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第214話 説得と最終戦と

「たああああああ!」


 コルドゥラの突きが2人目の戦士を倒す。「鶏喰み」を元にした突き技は、敵を素早く刻むことができるのだ。


「くっ! あの剣と水魔法、連携がやばい! やっかいだぞ!」


 ジークが顔を引きつらせながら慄く。コルドゥラが生み出した水の塊は、蛇のように触手を伸ばす。必ずしも決定打を与えているわけじゃない。でも、相手の目を狙ったり足を撃ったりで、戦士たちの動きを確実に妨げていた。そしてその隙に、本体が確実に戦士たちを倒していくのだ。


「ダクマー様! ここはお任せを! ラーレ様をお願いします!」


 コルドゥラはジークたちを睨みながら叫んだ。


「任せたよ!」


 私はコルドゥラに答えると、4号室のドアを強化した足で蹴破った。


「くっ、まて!」


 ジークが追いすがろうとするが、コルドゥラが私を守るようにその行く手を塞いだ。



◆◆◆◆



 玄関からリビングに駆け込む。かなり広いリビングにはテーブル席とソファーがあり、そこにはラーレと一人の若い女戦士がいた。ラーレは特に拘束とかはされていないみたいだけど、見張りがいるから動けない様子だ。


「ビューロウ家のダクマー様ですね。ラーレ様を取り戻したければ、私を倒すことです」


 そう言って女戦士は剣と盾を構えた。なんか初々しい感じがするから、多分一年生だよね。初めて会うけど、多分クルーゲ流の剣を使うみたいだ。


「ロジーネ・ブレイズ! 参ります!」


 そう叫ぶと、女戦士――ロジーネは水魔法で体を強化して襲い掛かってくる。結構鋭い一撃だけど、甘い! その程度で私に勝てると思うなよ!


「はあっ!」


 私は剣を横薙ぎに振るい、ロジーネの剣を弾き飛ばす。ロジーネは吹き飛んだ剣を見送ると、驚愕して目を見開いていた。


「ごめんね」


 私は木刀で彼女の胴を払った。彼女はお腹を押さえると、そのまま膝をつき、崩れ落ちていった。彼女から殺気は感じなかったけど、私に立ちふさがるなら容赦はしない!


「ラーレ!」


 私は叫ぶ。ラーレはびくっとしたように震え、心配そうな目で私を見た。


「私、今回の一件でよくわかったんだ。私ひとりじゃあ、東の貴族をまとめることなんてできない。ここに来るまでも、アメリーやデニス、コルドゥラが力を貸してくれたおかげだ。私はひとりだと何もできない。だから、ラーレに私を助けてほしい」


 多分、私だけだったら、この寮に一人で押し入って、囲まれて倒されて終わりだ。よしんば包囲網を抜けたとしてもラーレがどこにいるか分からなかったはずだ。


「この学園には優秀な魔法使いがたくさんいる。私じゃなくても、アンタを助けてくれる人はいるはずよ」


 ラーレがふざけたことを言い出した。


「ラーレ以上に信じられる人なんか、いるわけないじゃない! 私の背中を任せられるのは、ラーレだけなんだからね!」


 私は泣きそうになりながら叫んだ。ラーレは、顔を赤くして俯くと、そっぽを向いて答えてくれた。


「しょうがない。アンタの無謀に付き合えるのは、私くらいなものかもしれないわね。でも約束して。無謀な突撃はもうしないって。簡単に命を懸けるのは間違っている。ちゃんと、2人で帰れる方法を必死で考えるって」

「うん」


 ああそうか。やっとわかった。ラーレには私が簡単に命を投げ出しているように見えたのだ。自分のために簡単に命を投げ出す私を見て、これじゃあいけないって思ったのかもしれない。命を懸けるのと、命を投げ出すのは違う。そんなことすらも、私は分かってなかったのかもしれない。


「じゃあ、家に帰ろう。みんなにたくさん迷惑かけたからね。謝らなくてもいいと言われるかもしれないけど、『ありがとう』って言わないとね」


 私はラーレに手をかざす。ラーレがゆっくりと違づいてくる。ラーレの手に触れそうになったその時、炎の玉が私たちの間を通り過ぎた。


「な、なに!」


 思わず入口を見ると、そこには息を切らして杖を構えるハイデマリーがいた。


「ルートお姉さまは渡さない! あなたごとき、ここで葬ってやる!」 


 言うや否や、彼女は杖から炎の玉を飛ばしてきた。私は大きく下がって回避するが、その威力に驚く。炎の玉はすさまじい勢いで燃え盛っていた。


「マリー! 落ち着いて! 私はビューロウ家の人間だから、いつかは帰らなきゃいけないのよ!」


 ハイデマリーは私を睨みながら首を振った。


「ルートお姉さまは私と一緒に南領に帰るんです! いいじゃないですか! お姉さまを顧みない人たちなんて放っておいても! あの時だってそう言ったじゃない! 南領はルートお姉さまを大事にします! 決して無下には扱いません!」


 子供のように言い募るハイデマリーに、ラーレはさみし気な顔をする。彼女の考えが分からないわけじゃないけど、それでもラーレを渡すわけにはいかない。私は刀をハイデマリーに向かって突き付ける。


「ラーレ。ここまで来たらハイデマリーも引けない。コイツを倒して、アンタと一緒に帰る。この対抗戦を、私たちの勝利で飾るのよ」


 そう言って私とハイデマリーは睨み合う。これが多分、対抗戦の最後の戦いになる。私は息を吐き出すと、再び木刀を構えた。

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