表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第4章 色のない魔法使いと貴族と王族と
197/395

第197話 オティーリエと侵入者の影

「えっと、今日からこのクラスの一員になることになったオティーリエ・リヒトと言います。これから1年、よろしくお願いします」


 私のクラスにオティーリエが昇格してきた。入学式が始まる前のタイミングで、ガスパー先生に紹介されてきたのだ。緊張している様子だが、私を見るとにっこりと微笑んでくれた。ふふっ、クラスに友達が増えたぜ。私は手を振って返事をする。


「オティーリエは西のリヒト家の令嬢だ。お前たちにとっては、今代の聖女候補と言った方が分かりやすいかもしれない。西のヘリング家からの推薦もあって、平民クラスからこのクラスに昇格してくることになったんだ。みんな、仲良くしてやってくれ」


 ガスパー先生が言うと、オティーリエははにかむように微笑んだ。その笑顔を見てクラスの男子が何人かノックアウトされたようだ。ぼうっとするように彼女を見ている男子が何人もいる。オティーリエって、清楚で美人だからね。


「さてと、そろそろ集会場に向かうぞ。入学式が始まるからな」



◆◆◆◆


 入学式はつつがなく行われた。


 今年はライムントみたいに代表する生徒がいないからね。レオンハルト先生は相変わらず地味だけど、つつがなく挨拶を終えていた。なれてるなぁ。


 在校生の立場から見た初めての入学式は、あんまり感動はない。だって、アメリーが目立つわけじゃないからね。


 入学式はつつがなく終わり、私たちは教室に帰ってきた。


「午後の選択授業は去年と同じだが、去年取った授業に関しては次のレベルの者が受けられる。例えば、水魔法1を取っていたなら水魔法2と言った感じにな。基本的に、昨年取っていない授業については1からになるが、担当教師から認められた場合のみ、2から始めることができる。3年間の学生生活はあっという間だ。今月は試験期間で、何を受講するかは自分たちで決められる。後悔しないように、しっかり選ぶんだぞ」


 ガスパー先生の言葉で、2年生の初日は終わった。


 帰る準備をしていると、オティーリエが声をかけてきた。


「ダクマー。これから1年よろしくね。私のリヒト家とヘリング家はあなたをフォローするわ。マリウスからそんな感じのことを伝えてくれって話なんだけどね。去年は正直、あんまり友達とかできなかったから、あなたと同じクラスになれてうれしいわ」


 私もうれしい。私は選択授業を学園長室で受けるのが決まっているけど、必修授業は一緒にできる。協力し合えることも多いはずだ。


「こちらこそ、これから1年よろしくね。オティーリエと同じクラスになってこっちもうれしいよ。マリウスの家とも仲良くなってるみたいだしね」


 なんか、オティーリエのリヒト家はマリウスの家と後継を争っているイメージがあったけど、今は協力しているイメージなんだよね。オティーリエが声を潜めて教えてくれた。


「私を引き取った父は、私を後継に押したいみたいだったんだけどね。実は、春休みの間に現当主と話して、私はマリウスを支えるって宣言したのよ。私としては、優秀なマリウスが後継になったほうが安心なんだけどね。まあ、マリウス派の人たちからまだ信頼されていないように感じるけど、あなたをしっかりフォロー出来たら、信頼も高まると思うのよ。だから遠慮せずに、困ったことがあったら何でも言ってね」


 そう言うと、ウインクして私から離れていく。


 私は笑顔で彼女を見送ると、入れ替わるようにこっちに来たマーヤさんが話しかけてきた、


「意外ですね。西のリヒト家の令嬢と仲が良かったんですね」

「うん。去年ちょっとあって、オティーリエさんと仲良くなったんだ。癒しの力が高いのは、ヘリング家のマリウスも認めているらしいしね。エレオノーラ様の覚えもいいみたいよ」


 私の言葉で、マーヤ様やドロテーさんのオティーリエを見る目が変わったように感じる。それまで、どこか警戒するような目を向けていたからね。


「これまでリヒト家は、どっちかと言うと西の貴族ばかり対応してたみたいだけど、最近は北や東の貴族とも積極的に交流するようになったという噂ね。まあ実際はどうか分からないけど、エレオノーラ様が見ているなら、ちょっと様子を確認するくらいはいいかもしれないわね」


 オティーリエがクラスメイトとして認められるかは分からないけど、とりあえず先入観から見られない、といった事態は避けられそうだ。彼女の評価は、これから先の行動で決まるだろう。頑張れ!



◆◆◆◆


 学園から部屋に帰ると、なぜか入り口で待たされた。


 私の護衛をするのはコルドゥラだけで、ラーレはなぜか顔色を悪くして、先に部屋に入っていった。


「ねえ、どうしたの? なんで部屋に入らないの?」


 私が尋ねると、コルドゥラが困惑した顔で答えてくれた。


「ラーレ様が何か見つけたとかで、ここで待つように言われたんです。私はなにも気づかなかったんですけどね」


 玄関で待つと、何やらどたばたと物音がしてきた。しばらくすると、静かになった。そしてラーレが、私たちのところに戻ってきた。


「もう大丈夫よ。曲者は捕らえたわ。天井裏に密偵が潜んでいたのよ」


 私とコルドゥラは顔を見合わせた。


 慌ててリビングに移動すると、そこには猿轡をされ、後ろ手に縛られた男が椅子に座らされていた。この人、どっかで見たことある気がするけど。


「こいつ、なんなの?」


 私がラーレに聞くと、ラーレは肩をすくめた。


「天井裏に魔力の気配があったから、撃ち落としたのよ。ほら、覚えてない? 王宮に行ったときに守ってくれた、王家の影よ。なんでこの家の天井裏に潜んでいるのか、分からないけどね」


 おおう。思い出した。確か第一王子に絡まれそうになった時に助けてくれたんだよね。確かそのあとも、私たちが逃がしてしまった風の闇魔を倒したって噂も聞いてるし。


 でもなんで王の影がうちに来てるんだろう?


「とりあえず、エレオノーラに連絡しようか。私たちだとどうすればいいか分からないしね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ