第187話 救援の必要性 ※ ラーレ視点
※ ラーレ視点
宙に飛ぶのは風の闇魔の特徴だ。確かに前に見た風の闇魔は空を飛んでいたようだけど・・・。
「くっ。気づかれたか! だが、炎の巫女はここで葬らせてもらうぞ!」
闇魔は手で何かを挟み込むように構えた。すると、両手の間に風の弾が現われたのが分かる。かなり強力な魔法みたいだけど、でも!
私は迎撃しようとあの秘術を構えた。風に強い火の魔法なら!あいつを倒すことだってできるはずだ!
しかしその時、私の前に素早く人影が立ち塞がった。
「ラーレに何するんだ!」
私の前に現れたのはダクマーだった。
え? この子、別の場所を探索していたはずだよね? なんでここにいるの?
私が驚いている間に、闇魔の魔法が放たれる。私をかばうように立ったダクマーは、闇魔の魔法を避けることなく受け止めた!
「アンタ! アンタなら簡単に避けられるでしょうに!」
そう。ダクマーはホルストと違って攻撃を耐えるタイプじゃない。それにあの程度の魔法だったら、私だって避けられるのに!
風の弾がダクマーに直撃した。風は刃となってダクマーを傷つけた。だけどダクマーは傷を気にすることなく闇魔を睨んだ。
「卑怯者! 降りてこい! 降りて、私と戦いなさい!」
ダクマーは叫ぶけど、闇魔が降りてくるわけないじゃない! 反撃されないように、上から魔法を撃ち続けるのに決まってる!
苦戦が予測されたその時、闇魔に向かって一筋の閃光が伸びていった。赤い光の束は、闇魔の肩を貫いていく。
え? 何が起こったの!?
「ちっ! 仕留め損ねたか!」
吐き捨てたのはフェリクス様だ。フェリクス様が、騎乗しながら槍を投擲したようだった。
闇魔は一瞬バランスを崩したものの、すぐに態勢を戻し、そのまま東の方に逃げていく。
「くそっ! 逃がすか!」
フェリクス様が闇魔を追っていく。そしてあっという間に、2人の姿は見えなくなった。
「ラ、ラーレ! 大丈夫!? ケガはない?」
心配そうに尋ねるダクマーに、思わず怒鳴り返した。
「何しに来たのよ! アンタがいなかったら魔法で反撃できたのに!」
ダクマーはびくりと震えるが、すぐに言い返した。
「だって闇魔が出たんだよ!? ラーレって戦闘に出るの初めてのはずだよね? 危ないマネ、させるわけがないでしょう!」
ダクマーは言い返してくる。でも、闇魔の攻撃でこの子は傷だらけになってしまった。私はあいつの魔法を避けることができたし反撃もできたはずだ。でも、彼女が前に立ちふさがったせいで、何をすることもできなかったのだ。
「私のせいで傷だらけになって! そんなんで私が喜ぶと思うの!? 私をかばう必要なんてないでしょう! 私だって、敵の攻撃を避けることくらいできるんだから!」
私は思わず怒鳴り返した。
あの公開処刑の一件から、ダクマーは私に過保護になった。この子に守ってもらうなんて望んでいないのに。私は、この子と一緒に戦いたいけど、いつも庇ってもらうつもりはないのに!
さらに言い返そうとするダクマーを止めたのはフェリクス様だった。
「お前たち、それくらいにしろ。悔しいが、闇魔に逃げられたようだ。情報を持っていかれたかもしれん」
いつの間にか戻ってきたフェリクス様は悔しそうに吐き捨てた。そんな私たちに、エッボ先生がため息混じりに話しかけた。
「とりあえず、学園に戻りましょう。今回の一件、学園長にきっちりと報告せねばなりません。言い合いは、あとでもできますからな」
私たちはまだ口論したりなかったが、このままここにいるわけにはいかない。不承不承、エッボ先生に従うことにしたのだった。