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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第4章 色のない魔法使いと貴族と王族と
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第186話 ラーレの救援とリンダの秘術 ※ 後半 ラーレ視点

「急がないと! ラーレが怪我しちゃうかも!」


 フェリクス先輩の後ろで、私は焦ったように言い捨てた。


 騎獣の足は速い。まるで前世の車に乗っているかのように、すんごいスピードで景色が流れていく。でも一秒でも早くラーレに追いつかないと、ラーレに何かあったらたまらない!


「影姫の匂いはこの先だ。まあ、あいつのことだから大丈夫だとは思うがな」


 フェリクス先輩はそう言うけど、実際はどうか分からないじゃない! ラーレはちょっと前に殺されかけたばかりなんだから!


「お前の移動を買って出たのは、影姫を助けに行くためじゃない。影姫はお前が思っている以上にしぶといからな」


 え? じゃあなんで私を送ってくれようとしているの?


「こうやって話す機会はないからな。忠告しておこう。中央の貴族の動きに注意を払え。西や南もお前を嫌っているが、中央は本気でお前の命を狙うやつがいる。特に、王太子の息子の動きには気を付けるんだ」

 中央と聞いて思い浮かぶのはライムントだ。 でもあいつ、もう終わった存在だと思うけど・・・。


「こんなことは下手な場所では言えないが、王太子夫婦とライムント様の動向には常に注意するんだ。あの人たちは本気で起死回生の手を考えているらしい。お前のことは、王太子の邪魔をする存在だとみなされているからな」


 うわっ、マジで? 私はあいつらのことなんてどうでもいいのに、一方的に敵視されているとでもいうの?


「特に情報に強いハノーヴァ家の動きには注意するんだ。何かあったら迷わずオレかロレーヌを頼れ。腐っても奴らは侯爵位を持っている。子爵のお前たちでは対抗できなくなる可能性だってあるのだからな」


 私はごくりと息を呑み、フェリクス先輩の言葉に頷いた。


 そうだよね。武力で襲ってくるのならこの物干し竿の餌食にしてやるけど、それ以外で攻めてこられたらどうしようもないかもしれない。それに武力だって、私に及ばないことはある。さっきだって、ハイデマリーがいなかったらやばかったかもしれないし。


「よし。理解したようだな。じゃあ、影姫のところに急ごうか。大丈夫だと思うが、万が一ということがあるからな」



※ ラーレ視点


「えっと、このあたりかな」


 私は自信なさげに言った。


 カサンドラを倒した場所から700歩ほど進んだ場所だった。多分、この辺りで私の煙が誰かを巻き込んだと思ったんだけど・・・。


「てか、本当にいんのかよ。根拠はお前の魔法だけなんだろ? こんなところまで探索できるとは思えねえよ。例えお前が、ビューロウの秘蔵っ子だとしてもな」

「スヴェン! 言い方! でも、本当にいるの? 闇魔を滅ぼしたあの魔法はすごかったけど、本当にこんなところまで探索できるの? この辺りは、闇魔が出たんだから立ち入り禁止になってるはずですわ」


 うっ。そうなのか。確かに注意闇魔が出たと分かったら、その地域が立ち入り禁止になるのは分かる。でも、確かに煙に当たった気配はしたんだけどなぁ。


 私たちは全員で私の煙に巻きこまれた人を確認しに来たんだ。スヴェンたちと護衛の人たちはみんな訝しげな顔をしていたんだけど、エッボ先生が確認したいと言ったからみんなついてきてくれたんだよね。エラとミリもちょっと困ったような顔をしていたんだ。


 私はちょっと焦りながらあたりを見渡した。うん、確かに人の気配なんて全然しないよね。これは私、間違えちゃったかなぁ。


「姫! こちらに誰か倒れています! 数は2人? 顔をフードで隠していて、あからさまに怪しい奴らが!」


 オイゲンが指さした方向に振り向くと、そには彼の言う通り、2人の怪しい男が倒れていた。


「!! 本当にいるなんて! それに黒装束にマント? 何こいつら、本当に怪しいんだけど!」


 クリスタさんが思わず声を上げた。


 倒れた男たちに物おじせずに近づいたのはリンダだった。彼女は倒れた男たちに息や熱を確認し、意識がないことを確かめた。


「エッボ先生。こいつら、都合がいいことに意識がないようです。今なら、事情を引き出せますけど、どうします?」


 エッボ先生は腕を組んで考え込んだ。そして顔を上げると、真剣な目でリンダを見つめた。


「そうだな。こんなところにこんな格好でいるなぞ、あからさまに怪しい。口封じされる前に探ったほうがいいだろう。リンダ君。すまんが、こいつらの素性だけでも確認してくれ」


 リンダはニヤリと笑う。スヴェンたち上位クラスの生徒は訝しげな目でこのやり取りを見ていた。


 リンダが1人の男の上体を起こす。そして目に魔力を集中させると、そっと息を吹きかけた。


 男は目を覚ます。そして酔いをこらえるかのように首を振ると、半眼になってぼうっと前を見つめだした。


「あら。やっと起きたの? こんなところで寝るなんて、本当にしょうがない人ね」


 リンダが親しげに言う。男はしばらく呆然としたが、ハッとしたようにリンダを見つめた。


「ああ。お前か。すまんな。ちょっと寝ていたようだった」


 上位クラスの生徒たちが驚きの声を上げた。まるで古くからの友人のように、男はリンダと会話しているのだ。


 リンダは瞳を黒く光らせながら、質問を続けた。


「こんなになるまで働いて。今は、誰の下で働いているの?」


 男は訝しげな目でリンダを見返すと、呆れたような顔で答えた。


「何言ってるんだ? オレが仕えているのは今も昔もハノーヴァ家だろう。今日は、当主様の命令であいつらを運んできたんだよ」


 上位クラスの面々から息を呑む気配がした。エッボ先生が彼らをキッと睨んで黙らせる。スヴェンたちは慌てて口を手で押さえだした。


 これがリンダの、マルク家の秘術だ。闇魔法で相手の素性を錯覚させ、情報を引き出すことができるのだ。まあ相手の意識をきっちり奪うなど、いろいろ条件はあるみたいだけど・・・。


「そう。あいつらをね。あいつらって、あの女たちのこと?」


 男は溜息を吐くと、呆れたようだが、それでも仕方なしに答えた。


「そうだよ。あのくそ闇魔たちのことさ。あいつら、魔力の補充とか言って人間を食い殺していたぜ。中にはまだ若い女もいた。本当に、もったいないことするよな」


 私は憤りを隠せない。ハノーヴァ家の奴らは、闇魔に生贄を与えているとでもいうの!? でも何のために! 何のためにこんなことするのよ!


「そう。あなたもご苦労様ね。ちなみに何のために闇魔がここに来たのか、分かる?」


 リンダが優しく問いかけると、男は静かに首を振った。


「いや、分かんねえ。なんか王家に収められたお宝を狙っているらしいけど詳しいことはな。ったく、ハノーヴァ家のご当主様も欲深いよな。戦いが長引いた方が中央の貴族に有利だからって闇魔と組もうとするなんて。まあでも王太子たちに目を付けられないようにするには・・・」


 男がさらに言葉を続けようとしたその時、風の弾がリンダ目掛けて飛んできた!


「リンダ君! 危ない!」


 エッボ先生が素早くリンダを抱きかかえて飛ぶ。何とかリンダに風が当たるのを防いだが、2人の男たちは避けられない。闇魔の魔法により、一瞬で死体に変えられてしまったのだ。


「くそ! 奇襲かよ! どこからだ!」


 スヴェンが吐き捨てた。私たちは慌ててあたりを見渡すが、地上には敵の姿なんてどこにもなかった。


 くっ! 闇魔はどこにいるというの!?


「上! 空に、闇魔が浮いてる! 上から奇襲をかけてきたのですわ!」


 クリスタさんが上空を指さした。そこには、羽を生やした男が宙に浮いていたのだった。

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