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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第4章 色のない魔法使いと貴族と王族と
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第178話 オリヴァーの頼み

 魔物討伐の翌日のことだった。午前中の授業が終わり、教室でまどろんでいると、オリヴァーが私を訪ねてきた。


「失礼いたします。こちらにダクマー・ビューロウ様がいると聞きました。お手数ですが、お取次ぎできないでしょうか」


 2メートル近い長身に、プロレスラーのような体格。昨日も思ってたけど、オリヴァーってすごい体つきしてるよね。


 平民が功績を認められて生徒になるケースは少なくない。この学園を卒業したら貴族として認められるからね。まあ爵位とかはいろいろあるみたいだけど、魔力持ちをちをきちんと取り込むシステムが出来上がっているのだ。


 昨日の戦闘以降、私もオリヴァーについて情報を集めた。まあ私の情報源って言っても、ラーレやエレオノーラくらいしかいないんだけどね。


 聞くところによるとオリヴァーは北で防衛をしている間に学園長自らがスカウトした生徒らしい。年は30歳で、両親の代でこの国に亡命してきたようなんだ。


「あ、昨日の話ですね。分かりました。私の友人や家族もご一緒したいとのことなので、放課後に談話室に来ていただいてもいいでしょうか」

 


◆◆◆◆


 その日の放課後、私は談話室でオリヴァーと向かい合った。ちなみにエレオノーラとラーレも一緒だ。2人とも、いつもありがとね!


「オリヴァーさんは私に話を聞きたいとのことですけど」


 私が尋ねると、オリヴァーさんは恐縮したように身を縮こまらせながら、おずおずと答えた。


「は、はい。私は帝国から戦火を逃れて王国に住むようになった亡命市民です。兵士として働いていたのですが、魔力量が高いことが分かり、2年前から学園で学ぶことになりました。武術の選択授業はいろいろ試したのですが、少し伸び悩んでおりまして・・・」


 え? 私の頭には、戦斧を振るって魔犬を吹き飛ばす彼の姿が浮かんだ。あの怪力と技術があれば、たいていの魔物は敵じゃないように見えるけど・・・。


「土魔法はとても勉強になるのですが、近接戦闘の能力が今一つだと感じているのです。そんな時、身体強化の達人であるビューロウさんのことを聞いて・・・。ナターナエルとの戦いは残念ながら見られなかったのですが、あなたに師事できれば私はもっと強くなれるかもしれない。私は近接戦闘の腕を磨きたいんです」


 魔法の資質がある平民を学園で教育する話は聞いたことがある。それにしても元帝国の市民かぁ。北の帝国は滅んだけど、そこに住む住民と闇魔との戦いは長いこと続いていたらしいんだよね。まあそれでも、30年ほど前には決着が着いたらしいんだけど。


 その激戦があったせいで、亡命者が北の領地にたくさん住んでいるって聞いたことがある。一時は北の戦術を取り込もうと学園での授業に採用されたこともあったらしいけど、不人気で今は廃止されちゃったんだよね。


「亡命市民ですか・・・、ご苦労されたんですね」


 エレオノーラが慰めるように言うと、オリヴァーさんは慌てて首を振った。


「いえ、私は物心つくころにはもうこの国で暮らしていたので、帝国には行ったことがないんですよ。北の領地のみんなも優しかったですし。父からこの斧の使い方と魔力の簡単な使い方をレクチャーしてもらったおかげで兵士の仕事にもありつけました」


 オリヴァーさんのでっかい戦斧の腕はやはり見事だった。今は木製の斧を構えているけど、あれも使えるのかな。私の視線に気づいたのか、オリヴァーさんは笑って答えてくれた。


「ええ、この斧です。父からは斧を使った戦法を叩きこまれました。斧と魔法で魔物と戦う私を学園長が見つけてくれて、この学園に通わせてもらうことになったんです。なんでも、私は水魔法と土魔法の両方を使って戦っているらしいのです」


 うん? 2属性の同時展開を使えるってこと? それに土魔法って、王国でめっちゃ重宝される属性じゃないか! 私と同じことを思ったのだろう。ラーレが驚いた様子だった。


「土魔法と水魔法の2属性を同時に展開できるということですか? それはすごいですね」


 オリヴァーさんは慌てて首を振った。


「い、いえ。私の水魔法の素質はあんまりないんですよ。なので、ほとんど土魔法で戦っているようなものです。水魔法の資質は小さくて、あんまり役立っているとは言えません」


 薄い水魔法、かぁ。それって、逆に魔力による体の内部強化を行うには都合がいいんだけどね。素質が低ければ、当然魔力制御の腕も下がる。でも普段から水魔法を使っているのなら、下地は十分なはずだ。2属性の同時展開にはかなりの技量が必要だ。杖を使っても展開することはできないと思う。


「それでも素晴らしい技術ですわ。オリヴァー様もしっかり修練されたのですね」


 エレオノーラがほめると、オリヴァーさんは汗を流して照れた。


「いえいえ、学園長もそう言ってくれましたが、私なんてたいしたことないです。本当はもっと早くに声をかけるべきだったかもしれないですが、平民の私が貴族の方に話しかけるのは迷惑かけるのではと抵抗があったんです。でも学園長から、ダクマー様ならきっと相談に乗ってくれるはずだからと背中を押されましたし、先日は直接会うことができたので、今日思い切って話しかけてみたのです」


 くっ、レオンハルト先生に仕事を押し付けられたのか! でも正直なところ、オリヴァーさんの帝国式斧術には興味がある。


「でも私に教えられるのは、身体強化魔法だけですよ?」


 オリヴァーさんは深々と頭を下げた。


「お願いします。もう北では戦いが始まっているんです。本当はすぐにでも行きたいけど、学園長から止められていて・・・。確かに学園で学ぶ土魔法は戦いに役立つことばかりです。ここでもう少し学んだ方が、後々みんなの役に立てるのも分かっています。でも、仲間たちが命がけで戦っていると知ると、居ても立っても居られない」


 そうだよね。実感はないけど、北ではもうすでに戦いが始まっているのだ。知り合いがいるのなら、焦る気持ちは分かる気がする。


「ビューロウ様の身体強化術は、私たちのそれとは圧倒的に違うものだと感じています。お願いします。私の技術はすべて伝えたってもいい。時間を無駄にしたくないのです。私に、身体強化魔法を教えてください」

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