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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第4章 色のない魔法使いと貴族と王族と
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第177話 魔犬退治

 私が悩んでいる間にも、日々は進んでいく。今日はガスパー先生に言われて王領の平原に魔物退治に来ていたんだ。


「今日は平原だから魔犬が相手なんだっけ? てか最近魔物多くない? なんかしょっちゅう呼び出されてる気がする」


 平原に向かう馬車でつぶやくと、ドロテーさんが答えてくれた。珍しいことに、彼女も一緒に来ることになったんだよね。


「最近、王国全土で魔物の発生率が上がっているそうですよ。これから行く場所でも魔犬の群れが突如として現れたそうですし・・・」


 それは聞いたことがある。なんか王都の近くに魔物が発生して、傭兵や冒険者が派遣されるケースが増えているそうだ。学園にも王都の魔物退治の依頼が来ることが増えてきたらしい。


 てか、今日のドロテーさんはいつもと違うんだよね。猫のような魔物を膝にのせている。召喚魔法で呼び出した護衛の魔物らしいけど、正直めっちゃうらやましい。


「ふん! まさかあなたと一緒とはね。今日は平民クラスからも生徒が派遣されるようだけれど、あんまり私の足を引っ張らないでほしいわ」


 そう言ってそっぽを向いたのは同じクラスのフィーネさんだ。この人の足元には、召喚された大型犬が寝転んでいる。揃いも揃って、もふもふに護衛されるなんて・・・。触っちゃダメかな? 犬猫と一緒にいられるなんて羨ましいんだけど!


「ま、まあ落ち着いて。今回はダクマーさんもいるんだから、危険なことにはならないと思う。平民クラスからは光魔法が使える人が来るそうだしね。万が一のことがあっても安心だと思うよ」


 クリストフが汗を流しながらフィーネさんをなだめている。今回、私のクラスからはこの4人が参加することになったんだよね。


「まあでも、探索はフィーネさんがやってくれるんだよね? 魔物を見つけられるなんてすごいじゃん。私は探せないからさー。期待してるよ」


 私がそう言うと、フィーネさんはそっぽを向く。ん? でもこの人、顔赤くない? 耳まで真っ赤なんだけど・・・。


 ドロテーさんといいフィーネさんといい、最近は魔物退治に参加する生徒が増えた気がする。闇魔の襲撃に備えて、実戦経験を積もうという人が増えたらしいんだ。今回みたいな護衛なしだけど弱い魔物の討伐に、たくさんの人が参加を希望したらしい。まあ、なぜか私は希望していないのに参加が決まることが多いんだけど。


「あ、もう着くみたいですよ。あそこに馬車が止まっています。この辺に、魔物がいるんですかね?」



◆◆◆◆


 平民クラスの馬車には4人の生徒が乗っていた。そのうち1人は社交の授業で一緒だったミリヤムさんだ。知り合いはもう一人いて・・・。


「ダクマー! 今回は一緒なんだね! 魔物退治なんて初めてだから、ちょっと不安だったんだ。でも、あなたがいるなら安心ね!」


 そう言って笑ったのはオティーリエだった。彼女もこの魔物退治に参加するらしいんだよね。


「オティーリエ! 平民クラスから光魔法が使える生徒が参加するって聞いていたけど、あなただったのね!」


 私が笑顔でそう呼び掛けると、彼女はちょっとはにかんで答えてくれた。


「もう、魔物との戦いは他人ごとじゃないからね。私も戦えるように、実戦経験を組んでおこうかなってね。私は来年からクラスが変わるって話もあるし。でも最初の実戦であなたと一緒なんて、本当に運がいいわ。生き残れそうだしね。今日は頼りになる前衛もいるし」


 そう言うと、後ろに佇む男を振り返った。


 そこにいるのは戦斧を持った大男で、私と目が合うとそっと一礼してくれた。


 私たちがワイワイやっていると、横から咳払いの音がした。はっとして振り向くと、そこには剣術を担当していたゲラルト先生がいた。今日の引率は、この人らしい。


「中位クラスの生徒も集まったな。では早速討伐を始めよう。探索魔法を使える者はいるか?」

「はい! 私が行えます」


 フィーネさんが元気よく手を上げる。私を一目見ると、すぐに緑の魔力を短杖に込めた。あれは、ギルベルトの使っていた魔法と同じ種類のやつ?


「フィーデン!」


 フィーネさんの周りに風魔法が広がった。ギルベルトほど早くもなく、気配も大きいけど、それでも見事に緑の波動が広がっていく。私にぶつかったときは、魔力が当たった感触がして、ちょっとびくっとなったけどね。


 風の魔力が戻ってくると、フィーネさんは西のほうを指し示した。


「いました! 西に、700歩くらいの場所に、何か生き物がいます!」


 私たちはフィーネさんが示した場所を向く。ん? なんか土煙が見えない? なんかが駆け寄ってくるみたいだけど・・・・。


 焦ったのはゲラルト先生だった。


「くっ! 探索魔法を読み取ってでこっちの場所を見つけたのか? 頭の回る敵がいるのか?」


 フィーネさんが顔を青くする。彼女が魔法を放った影響で見つかったんだから、焦る気持ちも分からないでもない。


 ここは私たちの出番かな。そう思って前に出ようとしたら、その前に平民クラスの大男が斧を構えて前に出た。


「うおおおおおおおおおおおおお! ボーデン・スターク!」


 大男が叫んで土の身体強化を展開した。その音量に、私たちは思わず身をすくめた。


「お前たちの相手は私だ!」


 そして大男は魔力を展開した。その影響もあって、大男はものすごく目立っていた。魔犬たちも彼に狙いを定めたようで、一斉に襲い掛かっていた。


「あ、危ない! あんな大声上げたら敵が集中しちゃう!」


 思わずそう言ったオティーリエを見て、大男はニヤリと笑った。


「うおおおおおおおおお!」


 そう言って、戦斧を振り回す。魔犬が一気に吹き飛ばされるけど、敵の数が多い! 他の魔犬が、ドロテーさんやフィーネさんを襲ってきた。


「邪魔だ! 鴨流れ!」


 私は素早く移動して魔犬を斬りつけた。一体仕留めると同時に、フィーネさんを狙っていた魔犬を二の太刀で切りつけてやった。


「え? いつの間に・・・・」


 フィーネさんが茫然とした。ふぅ。何とか間に合ったみたいだ。


「魔法使いは、倒れた魔犬にとどめを! 魔犬からは私たちが守る!」


 私はそう言って、魔犬に斬りかかった。


 一撃でとどめを刺す必要はない。敵の動きを止めてしまえば、あとは魔導士が何とかしてくれる! 私が斬りつけた魔犬に、ミリヤムさんや平民クラスの生徒が魔法を放ってとどめを刺していく。


「私だって・・・。私だってえぇ!」

 

ドロテーさんが倒れた魔犬に土礫を放った。倒れた状態では魔犬は魔力障壁を展開することはできない。戦斧で倒された魔物を、ドロテーさんの放った土礫がとどめを刺していく。


「ぐおおおおおおおおおお!」


 ひときわ大きな魔犬が、こちらに向かってきた。


 でも、お前なんかに私の仲間を倒させるわけ、ないじゃない!


「させるかぁ! 鷹落とし!」


 私は素早く魔犬に立ちふさがると、そのまま斜め上に剣を斬り上げた!


 音もなく吹き飛んでいく魔犬。私の秘剣は、一撃で魔犬を魔力障壁ごと斬り裂いていた。


「ま、魔力障壁持ちの魔物が、本当に一撃で・・・」


 フィーネさんが茫然とつぶやいた。


「まだよ! まだ終わったわけじゃない! この勢いのまま、魔物を全滅させるのよ!」



◆◆◆◆


 ほどなく、魔犬たちは全滅した。私たちが足止めして魔法使いが斬りつける。その連携の前に、魔犬たちはなすすべなく倒されていったのだ。


「みんなご苦労だったな。この調子で、残りの魔犬を探して討伐だ。フィーネ君、まだやれるな?」


 フィーネさんは荒い息を吐いていたが、ゲラルト先生の言葉に気づくと顔を上げて返事をした。


「は、はい。やれます。次は、もう失敗しないから・・・」


 勢いごんでそう話すフィーネさんに、ドロテーさんがおずおずと返事をした。


「私も、風の探査はできます。フィーネさんと協力して、魔物を見つけて見せますから」


 目に力を込めて言うドロテーさんを、フィーネさんが覆わず見つめ返した。仲が悪かったような2人だけど、これでちょっとは和解できるかな。


 私たちがそんな話をしていると、斧を持ったあの大男が私に話しかけてきた。正直、今回の敢闘賞はこの人だ。その叫び声と魔力で、魔犬たちを確実に引きつけていたのだ。


「さすがですね。あの魔力障壁持ちの魔物を一撃とは・・・。ナターナエルを仕留めただけはある」


 そう言うと、私を見て一礼してきた。


「私はオリヴァー。平民クラスに所属する生徒です。この戦斧を使った戦闘と土魔法を得意としております。あなたとは、一度話したいと思っていたんです」


 斧を使った戦闘かぁ。たしか、帝国からの亡命民が、それを得意としていたんだよね。なんか北とか南には亡命後に貴族に昇格した人がいるって聞いたことがあるけど・・・。


「うん。私も、ちょっとあなたの技は気になっていたんだ。この討伐が終わったら、ちょっと話せると嬉しい」

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