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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第4章 色のない魔法使いと貴族と王族と
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第174話 フランメ家の姫? ※ ラーレ視点

※ ラーレ視点


 公開処刑が終わった後、私のクラスでの扱いが明らかに変わった。それまではほとんどの人に相手をされていなかったのに、一挙手一投足を見られるようになった。やけに親しげに話してくる人や、恐る恐る声をかけてくる人もいる。


「ラーレ様! 私もあの日、闘技場にいたんです。あの黒い炎、すごかったですわ。ぜひしっかり話を聞いてみたいですわ」

「ビューロウ家はさすがですわね。ダクマー様といい、こんな力を隠しているなんて。いえ、秘術なんですから言えないのは分かりますわ。でもちょっとだけでも、話を聞いてみたいです」


 それまで私のことなんて誰も注目していなかったのに、すごい掌返しだなと思う。いつのまにか、私はクラスで一番注目される生徒になっていた。私は卒業まであと少しだし、卒業したら祖父の指示に従って行動するようになると思う。おそらく戦地に行くことになるが、それなのに、どうしてこんなに話しかけられるんだろう。


 私は戸惑いながらも誘いは全部断ることにしていたが、中には全然引いてくれない人たちもいたりする。その筆頭が、フランメ家の分家の人たちだった。


「姫! これから戻られるのですか? 今日は午後の授業はないのでしたね。よろしければお供させていただいてもよろしいでしょうか」


 なんで私のスケジュールを把握しているんだろうか。私のことを姫と呼ぶこの男は、オイゲン・フラム。あの炎の大家のフランメ家の分家にあたるフラム家出身の大男だ。結構筋肉質でクルーゲ流を学んでいるらしい。結構目鼻立ちが整っていて人気がある。前からよく話しかけてきたし、他の生徒にからまれていた時はそれとなく助けてくれていた。でも、こんな言葉遣いはしていなかったはずで、なんか怖い。


「オ、オイゲン様。何度も言っていますが、私は姫とかじゃありません。たかが子爵家の娘なんです。私のことなぞ、これまで通り構わなくても大丈夫です。すみません」


 私は拒絶するが、オイゲンは気にせず笑い出した。


「あれほど素晴らしい炎を使われるラーレ様は、我々にとっては姫と言うにふさわしい女性なのです。ましてやラーレ様は、フランメ家のエルネスタ様の孫にあたります。私たちが仕えるのに何の問題もありません。どうか、私たちの同行を許可願います」


 フランメ家は女系と言われているんだけど、私の実家のビューロウ家とは仲が悪いはずだ。正直、この扱いには不信感しかない。


「いえ、ですから私は、ビューロウ家の娘ですから、フランメ家とはかかわりがありません。祖父からは秘術を授かるほど懇意にしております。申し訳ないのですが、ご一緒するのは遠慮させてください」


 これだけ言っているのに、オイゲンは笑って全く引く様子を見せない。クラスの中心人物って本当に押しが強いんだから!


「そういわずに。2つ下に、主家のハイデマリー様がおられます。あの方も、ラーレ様と会いたいと常々おっしゃっております。よろしければ、一度お話をさせていただけないでしょうか。決して無礼は致しませんので」


 もう逃げたい。八方ふさがりの私は、ダクマーを言い訳にすることにした。


「すみません。妹分を待たせておりますの。オイゲン様、また明日」


 私はそう言って一礼すると、素早く教室を出た。背中に感じたオイゲンの視線は、学園を出るまで途切れることはなかった。



◆◆◆◆


 学園を出てダクマーの部屋に向かう。疲れた。こんな日は、カリーナ様の甘味でも食べてゆっくりしたい。


 私が部屋に入ると、ダクマーがぐったりして机に伏せていた。


「あれ? アンタ、午後の授業は?」


 私が聞くと、ダクマーは顔を伏せたまま答えた。


「今日はさぼった。いちおうレオンハルトには帰ると伝えたから、何とかなると思う。ちょっとおかしいんだよ。周りの人の反応が変わりすぎて怖いんだけど」


 ダクマーも私と一緒で周りの生徒の反応が変わって戸惑っているようだ。


「私も。今までクラスでほとんど相手にされていなかったのに、しょっちゅう話しかけられててなんか変な感じ。一応テストは合格してるから卒業はできそうだけど、補習には出なくちゃいけない。めんどくさいよね」


 私がぼやくと、ダクマーは私を見て聞いてきた。


「そういえば、ラーレは結婚とか考えないの? 他領の人と結婚する場合は、学生生活で相手を見つけるって聞いたけど。今見つけないと結婚できないよ。大学には進まないんでしょう?」


 まあそこは気になるよね。でも、私は成績が良くないから大学には行けないし、クラスでも沈んでたからそんな相手いないんだよね。


 ちなみに貴族とはいえ、契約結婚する人は少数派だ。高位貴族や後継に決まっている貴族は婚約者がいる場合があるけど、ビューロウ家の場合は後継が決まっていないので、家同士の婚姻は結びづらいらしい。私としても結婚したい相手なんていないからね。


「今は結婚なんてするつもりはないわ。公開処刑後は、私を嫁に欲しいなんて奇特な生徒もいるけど、一応門外不出の魔法を譲られてるし、そういう生徒は秘術ばっかり見られてる気がするのよね。こっちに利益なんてなさそうだし、祖父を言い訳に逃げることにしてるのよ」


 ダクマーは私の答えに安心したようだけど、そのくせ遠慮なくからかってきた。


「そうなんだ。でもこのモテ期を逃すともう結婚できないかもよ」


 私の結婚が決まったら絶対反対するクセに! そんな彼女にあきれながら、カリーナ様が作ってくれる夕食を待った。


 何はともあれ、私はあと3ヵ月で卒業だ。それまで耐えきれば、この不可思議な王都での生活も終わるはず!


 このときは、そんなことを考えていたのだった。

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