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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第4章 色のない魔法使いと貴族と王族と
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第172話 女子会と久しぶりの登校

 謁見から2日後、私はエレオノーラの部屋に呼ばれていた。エレオノーラに会いに行くと、部屋の前にオティーリエがいて、私に気づくと笑顔で手を振ってくれた。


「ダクマーさん! 退院したのね! 面会謝絶みたいになってたから心配してたんだ」


 どうやらオティーリエはちょくちょくお見舞いに来てくれたそうだけど、私が面会謝絶になったから会えなかったんだよね。ちなみに面会謝絶の理由は怪我ではなく、お見舞客が殺到したかららしい。ふっ、有名人はつらいぜ。


「オティーリエも呼ばれたんだね。エレオノーラの用って、なんだろね」


 私の言葉に、オティーリエはきょとんとする。


「何言ってるの? ダクマーさんが言ったんじゃない。終わったら、3人で女子会しようって。エレオノーラさんはそのために私たちを集めてくれたんだよ?」



◆◆◆◆


 エレオノーラの部屋はかなり広かった。寝室に通された私たちは、部屋の広さに驚きながら席に着く。机にはところせましとお菓子が並べられていて、思わず息を吐いた。これ、カリーナが作ったお菓子だよね? めっちゃおいしそうなんですけど。


「ダクマーはもう何でも食べられるのよね。日本の女子会とは少し違うかもだけど、今日は無礼講よ。食べて飲んで、騒ぎましょう!」


 エレオノーラ―の言葉に私は思わず飛び跳ねた。オティーリエは涙を流して喜んでいる。うんうん、オティーリエはずっと日本を恋しがってたからね。


 私たちはいろいろな話をした。日本で良く買い物に行った店とか、ファッションの話とか、はまっていたゲームとかね。話題は尽きない。オティーリエも私たちが暮らした街に住んでいたらしく、お店のこととか話すと、すんごく同意してくれたんだよね。


「私、転生してから日本の話ができるなんて思わなかった。日本のことは夢で、もう全部忘れてこっちの人になんなきゃって思ってたんだ。でも2人に会えて本当に良かった。良かったよー」


 そう言って泣き出した。うん、わかるよ。前世のどっかのお金持ちも、学生時代の友人たちとたわいもない話をしているときが一番楽しいって言ってたと聞いている。


 私たちはこの世界に転生したけど、日本で暮らした日々も本物だ。だからこうやって同郷の友人たちと思い出話をできるのが、本当に楽しいし、うれしいんだ。


「でもダクマーは気を付けた方がいいよ。だって、ダクマーはもう英雄様なんだから。きっとクラスでもあつかいが変わっちゃったりするんだからね」

「そういうオティーリエも気をつけなさいね。なんか、あなたのこと聖女って呼ぶ人が増えてるんだから。まあ、あの日会場でたくさんの人を癒していたから、みんながそう呼ぶのも分かる気がするわ」


 エレオノーラが指摘すると、オティーリエは顔をしかめた。


「え~。私はマリウスの指示に従って動いてただけなんだけどね。前世で言うと、あの人は頼りになるお医者様って感じ。あの人の指示通りに動けばよかったから、大変だったけど心理的には楽だったのよね」


 オティーリエは謙遜した。


「やっぱり医療って大変ね。私は戦いの指揮ばかり取ってたけど、オティーリエやマリウスは大変だなって思ってたわ。治療自体は水魔法でもできるそうだけど、やっぱり光魔法のほうがすごいんでしょ?」


 エレオノーラの言葉にうなずく。


「うん。水魔法は治療者の体力次第と言う感じだけど、光魔法は周りから力を集めて回復するらしく、患者に体力がなくても治療できる。まあ怪我がひどいと入院とかが必要なのは変わりないけど。戦いの指揮を執るのも大変だと思うけど、こっちも大変よ。なにせ、光魔法を使える人はかなり珍しいから。怪我を治すだけじゃなくて応急手当とかもしなきゃいけないから、ホント忙しかったんだ」


 オティーリエの言葉を聞いて、私は思いつく。


「魔法を使えなくても、応急手当とか人を運んだりする専門の人がいたら、オティーリエやマリウスは楽になるんじゃないかな。ほら、前世の軍隊でもそういう人がいなかったっけ?」


 オティーリエははっとする。


「たしか、衛生兵っていたよね? 戦場で応急手当をしたり、人を運んだりする専門の兵科よ。そんな人がいれば、マリウスも魔法を使った治療に集中できるかもしれない」


 目を輝かせるオティーリエを見て、私は含み笑いをした。


「ふむふむ。オティーリエにとって、マリウスは頼りになる上司で、気になる異性ってことですかな?」


 私がにやにやして問いかけると、オティーリエが飲んでいたお茶を噴き出した。


「ちょっと、やめてよー。あの人は確かに頼りになる上司だけど、私には立派すぎるわ。全然釣り合ってない。私はもっと、身近で頼りになる人がいいかなー」


 ウーム、なかなかうまくいかないもんだね。


 私たちは楽しく飲んで騒いだ。そんなこんなで、楽しい夜は更けていった。



◆◆◆◆


 そしてその3日後、私とラーレは学園に向かう馬車に乗っていた。


「はあ、明日から3学期かぁ。なんかバタバタして、1年があっという間だったね」


 ラーレにそう言うと、彼女はあきれたように返事をしてきた。


「そうね。アンタのお守からやっと解放されるわ」


 うう、ごめんよぉ。


 私のラーレ依存症は最近やっとよくなってきた。姿が見えなくなると相変わらずそわそわするけど、別の部屋にいても何とか過ごせるようになってきたのだ。女子会にも一人で行けたしね。


「これで3学期が終わったら春休みだね。せっかくだから、今回は領に帰ろうかと思うんだ。アメリーの顔も見たいしね」


 ラーレはあきれたように私を見た。


「何言ってんの? この冬は補習があるのよ! アンタも私もね! 私なんて、卒業式までずっと補習受けなきゃいけないんだから。まだ学ばなきゃいけないことがあるから、卒業証書は保留になるんだよ。誰かさんにつきっきりになってたせいでね!」


 ななな、なんですと!



◆◆◆◆


 教室に入ると異様な雰囲気だった。だって私が入ると、一切の音がなくなるんだよ!? みんな私の一挙手一投足に目を向けてくるし。私は挨拶しておっかなびっくりで自分の席に座った。


 え? いじめ? 机に花瓶とかおかれていないよね?


 私が自分の席に着くと後ろの席のドロテーさんが声をかけてきた。


「あ、あの!」


 私はびくつくと、固まったままドロテーさんを振り返った。


「な、なにかな?」


 ドロテーさんは深々とお辞儀をした。


「ありがとうございます! ダクマーさんがナターナエルを倒したおかげで、実家を荒らしていた魔物が激減したと連絡がありました。北の戦線は、大きく助けられたと聞いています。僭越ながら、北の貴族を代表してお礼を言わせていただきます。本当に、ありがとうございました!」


 え? なに? ちょっと! 教室内の北の貴族の生徒が、一斉に私に頭を下げてくるんだけど! マーヤさんたち東の貴族もなんか誇らしげにしている。どういうこと?


 私は助けを求めるように周りを見回すと、ジークと目が合った。あ、私より先に退院して、学園に復帰していたのね!


「いや、だって、剣鬼以来の快挙だぜ? 闇魔の四天王を倒したのは。ダクマーは間違いなく英雄なんだよ。勲章だってもらったんだろ? クラスメイトとして誇らしいぜ!」


 ちょっと、英雄なんてガラじゃないんだけど!


「いや。あ、あれは降りかかってきた火の粉を払っただけと言うか、襲われたから斬り返しただけというか・・・。ホント、たいしたことしてないのよ?」


 周りの反応は私の予想とは違った。「すげえ」「英雄なのに謙虚だ」「あんなセリフ、一回言ってみたい」なんて声が聞こえてくる。なんか、全身がむずがゆくなるんだけど!


「炎にまかれたラーレ先輩を助けたのもばっちり見ていました。そのあと、ラーレ先輩が炎でナターナエルを吹き飛ばしたんですよね。ビューロウ家の連携攻撃、確かに見させていただきました! 私感動して・・・、東の狼の強さと家族の絆、すごかったです!」


 私が戸惑っていると、同意する声が至る所から聞こえてきた。


「いや、わたしはその・・・、ヤーコプをこのままにしておけないって思っただけなんだ! 兄も斬られちゃったからね。ナターナエルのことはついでと言うか、襲わられたから反撃しただけと言うか・・・、それだけなの!」


 しかしクラスメイトからは「ついでで四天王を倒したのか」「やっぱり家族に手を出されると毅然として戦うのね」なんて聞こえてくる。何を言っても褒められるんだけど! 誰か、なんとかしてー。


 そのとき、教室にガスパー先生が教室に入ってきた。おお! ナイスタイミング!


「どうした。みんな席に着けー。おっ、ダクマーが退院してきたのか」


 ガスパー先生は周りを見渡して納得した様子だった。


「みんな。英雄に会えてうれしいのは分かるが、今日から3学期だ。1年生のうちに覚えなきゃいけないこともある。まずは、席に着くんだ」

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