第17話 ラーレの事情と魔力の資質
「色のない魔法の特徴は分かりましたが、反対に色の濃い魔法はどうなんでしょうか。色が濃すぎると、かえって魔法が使えなくなると聞きましたが・・・・」
デニスがおずおずと訪ねる。
そういえばラーレは魔力過多と言う話だよね。魔法の専門家から見たらどういう状態なのだろうか。
「魔力過多の場合は少し違うことがある。四種類の各出口が他の属性に染まっているという場合じゃな。その場合、染まった色の属性にレベルが1プラスされると言われておる。たとえば風属性がレベル3で右手の火属性が風に染まっていた場合は風のレベルは4になる。この場合、当然ながら火魔法は使えなくなる」
そうか。
ラーレはすぐ暴走してしまう赤以外の魔力を展開できないといっていた。他の属性の色を出そうとしても、全部赤になっちゃうって。
彼女の場合は、右手以外の出口も全部火属性に染まっているということか。
私はラーレを横目で見た。火以外の四大魔法が使えないラーレの場合、火魔法の資質は最低4、最高になると7か。
レベル7とかえぐいな。レベル3でエリート、レベル4で天才とか言われてるのに。それよりも3も高いなんて、想像もできないんだけど。
「厄介なことに、染まった出口から魔力を展開しても色の濃さは変わらない。さっきの例の風属性に火が染まっている場合には、火から魔力を展開しても、高レベルな風属性になってしまう。火の魔力を展開しようとしても風の魔力のレベル4になってしまうのだ」
おじい様の言葉にうなずく。ラーレはレベルの高い火以外の魔法は使えない。そして火のレベルが高いなら、透明に近い無属性魔法は扱えないということか。それにレベル5以上って、魔法が使えないって言われているよね。
「魔力過多は、魔法暴走の可能性があると聞きました。やはり、レベル5以上になると危険なのでしょうか」
デニスが続けて質問した。
「その可能性はある。だいたい、ワシの若いころはレベル4ですら危険と言われておった。今は毎日の魔力循環と瞑想などで制御できることが実証されておるが、魔力過多者には常に暴走の危険がついて回る」
ふと盗み見ると、ラーレの顔色が悪くなっているのが分かった。
そうだよね。多分ラーレは当事者だから、こんな話を聞かされて冷静にいられるわけがない。
「じゃが、今は研究によって暴走をかなり防げることが分かっておる。四属性に属性に関しては、魔法家によってはレベル5でも普通に魔法が使えるようにする秘術があると言われておるのじゃ」
魔法家かぁ。
王国にはそれぞれの属性の秘術を持つ魔法家があるんだよね。
そういえば、うちのおばあさまは火魔法の名家、フランメ家の出身みたいだよね。もしかして、ラーレにはフランメ家の秘術が使われるってこと?
おじい様はラーレを一瞥した後、授業を続ける。
「お前たちの予想通りじゃ。我が家には、お前たちの祖母からフランメ家の秘術が伝わっておるので火の魔力過多者の暴走を防ぐことができる。じゃが、どんな秘術も本人の地力なしには成り立たん。そして暴走を防ぐのに大事なのは、魔力制御の腕なのじゃ」
そうか。おじい様がラーレにしつこいくらい魔力制御の腕を磨くように言っているのはそういうことなのか。私が一人納得していると、デニスが質問を続けた。
「おじいさま。四属性の魔力過多については分かりましたが、光と闇についてはどうなんですか?」
そういえば、そうだよね。ラーレは火だけじゃなく、闇も魔力過多なんだよね。
「上下2属性は特殊でな。光と闇の属性を表しておるが、この2属性はお互いにしか影響を与えない。素質のない者では、それぞれの入り口から魔法を発動することもできんしの。無属性の魔法は、光と闇からは使えんとされておる。この2つの属性については、資質が全くないことも珍しくないからの。特に希少だとされる光魔法は、中央の王族と、西のヘリング家筋の者にわずかにいるだけじゃな。まあまれにレベルが低い者が現れるそうだがな」
あれ? ラーレって、闇も魔力過多じゃなかった?
あ、そうか。光と闇が互いに影響し合うってことは、闇がレベル4で、光の出口が闇にふさがってるからレベル5で魔力過多になっているということか。そんなこともあるんだね。
「今回はこんなところかの。大事なのは、自分の素質に合った修行を覚えることじゃな。無属性魔法しか使えないなら、身体強化を使う方がよい。逆に、四属性すべての素質が高いなら、無属性魔法を使うことは難しい。そして、魔力過多ならしっかり制御力を鍛えねばならない。お前たちもそろそろ、自分に合った修行を考えてみるべきじゃと思うぞ」
なんかうまいことまとめた気がするけど、私が身体強化以外の魔法を使えないのは変わらないらしい。
く、悔しくなんかないんだからね!