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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第3章 色のない魔法使いと闇魔の炎渡り
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第166話 ナターナエルの襲撃

「お、おお! ナターナエル様! 私を助けに来てくれたのですね!」


 ヤーコプが喜色満面で笑いかけた。


「私はあなたたちと同じです! 今までもたくさんの人間を手にかけてきました! 子供を殺したことだってあります! どうか、私にあなたたちの活動をお手伝いさせてください!」


 ヤーコプがナターナエルに微笑みかけた。


 くそっ! どこまでもふざけている!


 きっとナターナエルは炎渡りを使ってこの場に飛んできたようだけど、ヤーコプはこれ幸いにと、闇魔に鞍替えするつもりらしい。


「くっ! お前! ふざけるなよ!」


 私は思わずヤーコプを睨むが、ヤーコプは素早く回り込んで、ナターナエルの後ろに隠れた。


「くはははは! 残念だったな! お前でも、崇高なる闇魔の四天王は倒せまい!」


 さっきまで怯えていたくせに、ヤーコプは急に強気になって私に叫んできた。


「くふふふふ。闇魔と私は同じさ! 人を苦しめることに喜びを感じるのだ! ここで闇魔に与して、お前たちに地獄を見せてやるぞ!」


 ヤーコプがさっきまでとは打って変わって哄笑してきた。


 ナターナエルが手を上げる。


「お前たち、出てこい!」


 そう叫ぶと、会場の地下から大量の魔物がなだれ込んできた! ゴブリンにオーガ、そして低位の闇魔の姿まである!


 そして魔物たちは会場の観客に襲い掛かった!


「くはははは! 形勢逆転だな! 天運は我にあり! お前たちはここで闇魔に蹂躙されるのだ!」


 会場のいたるところで戦闘が始まっていた。エレオノーラは素早く王族の助けに回り、ギルベルトやマリウスがそれに続いていた。


「くはははは! みんな死んでしまえ! 私の死を願ったものは残らず消えるがいい!」


 ヤーコプは笑いながら叫んでいた。


「さあ、ナターナエル様! 王族の首を取るチャンスです! 今なら、王族とはいえ倒すことができるのです! そしてこの王国を滅ぼし、闇魔の楽園を築きましょうぞ!」


 笑い出すヤーコプに、ナターナエルはそっと歩み寄った。


 そしてナターナエルはヤーコプの前に立った。


「ああ。確かにチャンスだな。この場なら、我々の野望を成し遂げられるかもしれん」


 そういうと、ナターナエルはそっと微笑んだ。


 私はその笑みを見て、なんだか不吉な予感がした。


「ナ、ナターナエル様? どうされました?」


 戸惑うヤーコプの首を、ナターナエルがいきなり掴む。そして首を掴んだまま、ヤーコプの体を天高く持ち上げた。


「んあああっ。くっ、かはぁ」


 ヤーコプがナターナエルの手をなんとか引きはがそうともがく。だけどナターナエルはびくともしない。暴れるヤーコプを冷めた目で見つめていた。


「喜びを奪われた身だが、それでも喜びを感じる瞬間はある」


 ナターナエルは腕に力を籠めたようだった。ヤーコプは足をばたつかせるが、ナターナエルはびくともしない。何発か、蹴りが当たっているようだがすべて魔力障壁に防がれていた。


「それは、お前のような外道を滅ぼす瞬間だ。その一瞬だけは、呪われた身が自由になる。皮肉なことだがな」


 ヤーコプの体が炎上する。ヤーコプは叫び声を上げたようだが、首を絞められているようで声を発することができない。


「!!!!!、!!!!!」


 断末魔の叫びをあげるかのように激しく暴れるが、ナターナエルは全く動じなかった。


 やがてヤーコプの体は燃え上がり、炭のようになってのようになってしまった。


「こ、これが闇魔の四天王・・・・。あのヤーコプが、一瞬で炭にされちゃった」


 ごくりと喉を鳴らす私を、ナターナエルは振り返る。


「ほう。神鉄の剣か。この時代に、まだ神鉄が残っていたのだな」


 ナターナエルは興味深そうに私の刀を見つめている。そして私の目を見ると、意外と優しい顔で言葉を紡いだ。


「忠告しよう。その武器は、あんまり使いすぎないことだ。武器に魅入られたら戻ってこられなくなるぞ、小さな狼よ。私たちのようには、なりたくあるまい」


 コイツ、何を言ってるんだよ! 今にも飛び掛かってきそうな殺気を出してるくせに!


「まずは小手調べと行こうか。わがしもべ、お前たちに倒すことができるかな?」


 そう宣言したとき、気づく。


 私の周りに、何人もの仲間が駆け寄ってきてくれたことを。


 気づいたらラーレやコルドゥラが、私を守るように武器を構えていたのだ!


「まずは、君たちの強さを確認させてもらおう」


 そう言って手を上げると、ナターナエルの周りに魔物が集結する。


 ゴブリンが10体と、オーガが3体? 一瞬でこの数の魔物を呼び寄せたというの!?


 魔物たちは一斉に私たちのほうに襲い掛かってきた。


 私をかばうように前に立ったのはコルドゥラだった。


「ダクマー様には近づけさせません!」


 私があげたげた刀はほれぼれするくらいの切れ味を見せた。ゴブリンの魔力障壁をものともせずに、その首筋を斬り裂いていた。


「燻り、焼き尽くせ!」


 こんな状況になったからには、隠しておく意味なんてない。

 ラーレはあの魔法を使ってオーガを攻撃する。黒い炎はオーガに当たると炎上し、オーガを骨まで燃やしながら黒い煙をまき散らす。


 あの煙こそが黒い炎の本体と言っても過言じゃない。周りの魔物は、一瞬にして苦しみだす。あのナターナエルでさえも、苦々しそうな目で煙を睨んでいる。


 エラとミリはラーレの前に立って武器を構える。無理に前に出ず、しっかりと守ることを心掛けているのだろう。彼女たちにも刀を上げたかったけど、私の小遣いでは無理だ。ごめんよ。


 魔物は着実に数を減らしていく。


 私は息を整えながら周りを見渡した。


「!!」


 ナターナエルと目が合った。来る!

 

 ナターナエルが手をかざすと、炎の弾を連続で放つ。私たちは横に飛んで躱す。でも着弾点から爆風が発生し、私は護衛たちから引き離された。


 まずい! 孤立した!


 私に向かって、2体の闇魔が殺到してくる。


「邪魔だ!」


 私は刀を素早く振るう。


 刀は魔力障壁ごと、闇魔を斬り裂いた! まず2つ! 


 次の瞬間、ゴブリンの一部が消えたのが分かった。それを見て、ナターナエルが感心したように私を見た。


「やるな! 小狼! だがこれはどうかな?」


 ナターナエルが両手に炎を生み出す。そして両手を合わせると、2つの炎を合体させた。


 来る!


「フレイムバースト!」


 合体させた炎を私に向かって放った!


 何これ強い!


 私は剣を両手に構えて防御するが、無属性魔法で盾を作ったにもかかわらず、そのまま後ろに吹き飛ばされる。


「うう、なんて威力!」


 私はしりもちをつく。武器は手放さなかったものの、痛みですぐには起き上がれない。


 首を振り、立ち上がろうとしたときに、見た。


 ナターナエルが再び炎を合わせて私に打とうとしているのを!


「くっ、ヤバイ!」


 あれを食らったら、さすがに耐えられない!


 私は避けようとするが、ダメージを食らった体は思うように動かなかった。


「くくくく、これで終わりだ!」


 ナターナエルが、両手を合わせて巨大な炎を炎を作り出す! これ、避けられない!?


 でもその時、倒れた私の前に立ちふさがる人影があった。ビューロウの足運びで、素早く移動したのが分かる。決して大柄ではなく、戦士としては貧弱なあの姿は、私の従姉のラーレだ。


 ラーレは両手を広げて、私をかばうように立ちふさがった。


「足回りの強化だけは、あなたにだって負けないでしょう? もう粗忽はいい加減にしてね。私は、もう守ってあげられないみたいだから」


 そう言って私を横目で見ると、さみしそうに笑った。


「な、なにやって・・・。だめだよ! そんなのだめだ!」


 私は思わず叫ぶが、ナターナエルが放った炎がラーレに直撃した。彼女を起点に火柱が発生し、上空に向けて勢いよく燃え盛った。


「ラーレ!」


 おじい様ばりの足遣いだ。


 私が捕らえられないくらい一瞬で移動してみせた。


 でも、彼女と一緒に剣術の修行をしたのはこんなことをさせるためじゃない!


 ラーレはずっと私と一緒にいたんだ。こんなところでいなくなるわけがない!


 さみしい時もつらい時も傍にいてくれたのに、こんなところで私をかばって焼けちゃうなんてなんて、あんまりじゃないか!


 だがそんな私の考えとは裏腹に、ラーレから立ち上る炎はますます勢いを増していく。私の無属性魔法では、炎を消すことなんてできない。水魔法が使えないことがこんなに悔しいとは思わなかった。


「はははは! まずは一人! 護衛を一人一人殺してやろう! ビューロウの狼を復活なんてさせない! ここで息絶えるのだ!」


 私は涙目でナターナエルを睨んだ。


 炎は燃え盛るばかりで、その勢いは留まることを知らない。


 この勢いだと、ラーレは骨も残らないかもしれない。


「よくも! よくもぉ!!」


 私は憎悪を込めた目でナターナエルを睨む。あいつは、あいつだけは絶対に許さない!

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