表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第3章 色のない魔法使いと闇魔の炎渡り
164/395

第164話 決闘開始

 8人目の挑戦者が殺された。


 中央騎士団の新進気鋭の若者だったらしいけど、大剣の一撃に耐えられず、首を斬られて絶命したらしい。私は新しい刀をなじませるのに忙しくて観戦に行かなかったけど、観客席の王都の民は、絶望に顔をひきつらせたらしい。


 ライムントや王太子夫妻への批判はますます強くなって、ライムントが周囲に当たり散らす姿を見かけた。デニスみたいにしっかり仕えてくれる人を解任して耳障りのいい言葉をかける人ばかり優遇しているみたいだから、それも当然だろう。


「北に派遣されていた第二王子が、戦場から呼び出されるそうよ。王都に着いたら、王太子の変更が行われるみたい。まあ後ろ盾を損ねるようなことしたんだから王太子の交代は当然でしょう。代わりに今の王太子夫婦には謹慎処分が言い渡されたらしいわ。国王は戦場で恥を注がせたいようだけど、なんだかんだで逃げ回ってるらしいわ。まあ宮廷権力闘争ばかりに明け暮れてたから、実際に戦えるかどうかは疑問だけどね」


 エレオノーラは無表情で説明してくれた。ライムントの婚約者候補から外れて一安心の様子だ。なんかこの前ライムントが、上から目線で「今なら正式な婚約者にしてやってもいいぞ」と言ってきたようだけど、受けるはずないよね。エレオノーラは笑顔で拒絶し、ライムントは学園長に呼び出しを食らったらしい。レオンハルト先生も大変だよね。


 私の試合は今週末か。年が明ける前にケリがつくみたいで、その点は安心だ。嫌な気持ちを引きずったまま、新年を迎えたくはないからね。


「鍛冶屋に渡された刀をコルドゥラにあげたらすごく喜んでね。刃を見ながらうっとりしてるし、寝る時も抱いたままらしい。カリーナから苦情が入ってたよ」

「そりゃそうでしょう。魔鉄製の武器なんて、貴族でも持ってる人は少数なのよ。コルドゥラさんは地方の豪族みたいなものでしょう? 多分家宝になると思うし、あなたへの忠誠心がますます高まったと思うわ」


 ちなみにもう一本の刀はアメリーにあげる予定だ。居合にも使えることは確認したし、彼女なら立派に使えると思う。


 ラーレ? あいつは魔法使いだし、刀を使うシーンはほとんどない。持っていても宝の持ち腐れと言うやつだ。本人もそのことは分かっていたらしく、刀に見向きもしなかった。


「いやでもこの刀、すごいんだよ。魔力もスムーズに籠められるし、俵を試し切りしても刃こぼれ一つない。神鉄は魔力を籠めるのが難しいって話だけど、全然そんな感じしないんだよね。むしろ細かく魔力を込められて、戦いやすくなったって感じがするよ」


 エレオノーラは顎に手を当てると、その疑問に答えてくれた。


「それは多分、ダクマーが詳細な魔力操作をできるからだと思うわ。神鉄は魔力を大雑把に籠めても魔力が流れないらしいからね。詳細な魔力操作ができる人には、かえって使いやすくなるのね」


 神鉄製の武器って少ないけど使っている人はわずかにいる。メレンドルフの当主は神鉄の槍で今も大暴れしているらしいし、クルーゲの当主も神鉄製の剣と盾を使っているそうだ。第2王子も、たしか神鉄の剣を使ってるって話だったかな?


 でもそれ以外言ってあんまり効かないんだよね。闇魔からドロップする武具も、なぜか王城に収められることになってるみたいだし。


「試合まであとちょっとかぁ。この刀を試すと思えば、楽しみだよね」


 私はワクワクしてきたが、エレオノーラはあきれたように首を振った。



◆◆◆◆


 ついに試合の日になった。


 この試合は、試合会場から少し離れたところで仲間が見守ることが許可されている。私の傍にいるのはラーレとその護衛、そしてコルドゥラだ。コルドゥラは新しい刀を持ってうっとりとしている。敵を見ればすぐにでも切りかかりそうな気がする。ちょっとこわい。


「なんで私までここに来なきゃいけないのよ」


 ぼやくラーレを双子の護衛のエラとミリがはらはらした様子で見つめている。


「だって、私が信頼できる人ってほとんどいないもん。上位貴族のエレオノーラやギルベルトにお願いするわけにはいかないしね。万が一、襲われたときに頼れるのはラーレとコルドゥラしかいないんだよ」


 私がそう言うと、ラーレはちょっと照れたようにそっぽを向いた。ふっ、ちょろいな。


「時間だ。会場に出ろ」


 闘技場の係員が呼びに来た。なんか、フリッツとの決闘を思い出すね。


「ラーレ、行くよー」


 私は4人を引き連れて試合会場に向かった。



◆◆◆◆


 試合会場に出ると、そこにはヤーコプがにやにやしながら待っていた。今回は、さすがにライムントの前説はないみたいだ。これだけ周りに迷惑をかけているんだから当然だよね。


 私は試合会場から観客席を見渡した。観客席は超満員だ。エレオノーラがいて、ギルベルトがいて、マリウスがいる。デニスとジークも私を見ている。オティーリエは祈るかのように手を組んで跪いている。


「すんごい人だねぇ。みんなそんなに人が死ぬところを見たいのかな?」


 セコンドについてくれたラーレがあきれたように言う。


「そんなわけないでしょ。今回はみんなあなたを応援してるのよ。今回ばかりは、中央も西も南も、みんなあなたの味方よ。契約魔法があるから、この試合にヤーコプが勝つとあいつが解放される可能性が高くなる。10勝すると、それまでの罪がなかったことにされちゃうしね」


 うーん、気づいたら大事になっているなぁ。


 そして会場の貴賓席を見ると、国王陛下と学園長が並んで観戦しているのが分かる。少し離れたところに王太子夫婦とライムントがいて、こちらは青い顔をしている。あいつらが公開処刑なんか企画したから、犠牲者がたくさん出たんだ。ちょっとは反省しなさい!


「ダクマー・ビューロウ! 前へ!」


 審判の言葉に従って、私は試合会場に立つ。


「ルールは簡単だ。どちらかが死んだら決着が着く。武器の交換は認めない。いいな」


 ちょっと待って。それじゃあ、私のしたいことができない!


「待って! 確か武器はなくしたら補充できるはずでしょう? 契約魔法もルールは前のままだったようだし、ジークのときはそう決まってたんだから、それでいこうよ」


 私が抗議すると、審判もヤーコプも意外そうな顔をした。


「それでいいのか? お前は自前の武器があるんだろう? 武器を破壊したら補充されない方が、有利なんじゃないのか」


 審判はそう言ったけど、私は首を振った。


「ジークはそのルールで戦ったんだ。私だって同じルールで戦いたい。いいでしょ?」


 私がそう言うと、審判は副審と話し合った。そして、ルール変更を会場内に伝えた。私の要望とは言っていたけど、会場内にブーイングが起こった。


「愚かですねぇ。私に有利なルールに変更するだなんて。貴族と言うのは本当に愚かだ。名誉なんかにこだわるなんてね。君も確実に殺してあげるよ。あのマルティンとかいうやつと同じようにね」


 ヤーコプは薄笑いを浮かべながら舌なめずりして、大剣を構えた。


「ホントはアンタなんてどうでもいいんだけどね。でもアンタはデニスに手をかけた。デニスは剣の腕はいまいちだけど、それでも家族には変わらない。アンタに、上には上がいるってことを教えてあげる。そして絶望の中で、逝きなさい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ