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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第3章 色のない魔法使いと闇魔の炎渡り
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第154話 エレオノーラたちと相談を

「あんまりラーレ姉さんに迷惑をかけるなよ」


 そう言うと、デニスは去っていった。


 むぅ、なんで私が迷惑かけると思われてるんだろう? 失礼しちゃうわ。ラーレをお世話してるのは私だってのに! もう!



◆◆◆◆


 デニスから情報を得た私は、さっそくエレオノーラにコンタクトを取った。エレオノーラはすぐに談話室を予約してくれた。そこにオティーリエを呼び、私の話を聞くらしい。


 談話室にはエレオノーラとオティーリエ、そしてなぜかギルベルトとマリウスがいた。私が入室すると、みんなは出迎えてくれる。私は早速、デニスから聞いた話をみんなに聞かせた。


「ライムントがたくらんでいるっていう公開処刑ってなんなの?」


 公開処刑って、なんか物々しいよね。


「公開処刑ね・・・、なんて面倒な。確かにその可能性はある。ちょうど、良さそうな人材が今王都にいるからね」


 エレオノーラに報告すると、納得したような顔をしていた。オティーリエは相変わらず青い顔をしている。


「公開処刑って、私、処刑されるようなことはしてないと思うんだけど! 不敬罪って、そんなにやばいの!?」


 エレオノーラは説明不足に気づいたようで、首を振りながら説明してくれた。


「あ、処刑されるのは私たち貴族じゃなくて、罪人なのよ。ほら、ダクマーがフリッツと戦った闘技場があるでしょう? あそこで貴族と罪人とが武器を持って戦うの。観客入りでね。貴族がその場で罪人を仕留めることで、貴族が強いってことを証明するのよ。貴族の強さを見せつけるために行うんだけど、場合によっては反対に殺されちゃうこともあるわ。たしか、罪人側が何人か倒すと無罪放免になっちゃうってルールだった気がする。ルールは絶対順守。ベール家の契約魔法で縛っちゃうから、王族だって逆らえない。罪人を捕らえた側からすると、ふざけるなって話よね。だから、ここ数年はやっていなかったんだけど、ライムント様ならやりかねないわ」


 なるほど。私やジークを罪人の処刑係に駆り出すつもりなのか。でも無罪放免の可能性があるなんて、被害者からするとやりきれない話だ。だからこそ、近年は公開処刑が行われなかったのかもしれない。


「ライムントが提案するってことは、なんか強い罪人でもいるの?  聞いた感じだと、罪人側も強くないといけないんだよね?」


 エレオノーラが厳しい表情になった。


「ちょうど1年前だったと思う。南の方で人を何人も殺した罪人がつかまったわ。人斬り ヤーコプ。王国で暴れまわった凶悪な剣士よ。すごい魔力の持ち主で、風魔法と剣術をかなり使うらしいの。彼を捕縛するために、貴族が何人も犠牲になったと言われているわ。南の貴族はライムント様を支持しているはずなのに、関係悪化もものともしないなんて、なんともライムント様らしいわ」


 そりゃそうだよね。自分たちの身内を殺した罪人が無罪放免になるかもしれないって、南の貴族からすると受け入れられない話だ。


「通常、罪人と戦う貴族は成人していることが多いらしいけど、あの人は無理やりに学生を処刑人に指名するつもりかもしれない。武門って言ったら、ダクマーは断れないでしょう? 多分、ジークって人も同じよ。ブルノン家は武門を目指してるって聞いている。ライムント様に処刑人になるよう指名されたら、断ることなんてできないわ」


 貴族としての矜持が高いジークのことだ。指名されたら逃げることなんて考えないと思う。


「私を指名するなら、速攻で片をつけてあげるのに」


 私がそう言うと、オティーリエが顔を青くして私を見た。そしてエレオノーラにささやき出す。


「え? ダクマーさんって脳筋なの? やばくない?」

「この子、もうすでに闇魔を何体か斬ってるから。武門のビューロウ家は伊達じゃないのよ」


 エレオノーラの答えにドン引きしながら私を見ている。


 失礼な! 武門の出として当然のことです!


 でもそれよりも、私には気になることがあった。


「その、人斬りヤーコプって強いの?」


 答えてくれたのはギルベルトだった。


「強い。断言するね。剣術の腕も魔力強化の腕もけた外れだ。そして、風魔法の使い手でもある。星持ちではないけど、それに近い実力があるんだ。あいつは一時、僕の家の道場に来ていたことがあったらしい。風魔法はそこで学んだそうなんだ。そして、使った先は人殺しさ。あいつは南の貴族を護衛ごと何人も殺しているんだ。にやにや笑いながら楽しそうにね。南の貴族は一日も早くあいつを殺したいみたいだけど、公開処刑になったら手が出せない。どうなることかな」


 殺しを楽しむタイプなのか。そりゃあ、南の貴族は穏やかじゃないよね。


「南の貴族って、ライムントの父親を支持してるんじゃなかったっけ? 自分の支持基盤を敵に回すって、何を考えてるんだろうね?」

「ヤーコプを確実に殺せるツテとかがあるのかもしれないわ。護衛のマルティンは相当の腕らしいからね。案外、何も考えていないのかもしれないけどね。あの人、他人が自分の思い通りに動くのは当たり前って考えてるみたいだから」


 あー。でも分かる。ライムントって俺様と言うか、そんな感じだよね。デニスの後継をフォローするのを止めたのも、自分の役に立たないからって気がするし。


「ジークさん・・・・。大丈夫かな」


 オティーリエがつぶやいた。


「ジークは人一倍、貴族っていう意識が強い気がするわ。南の貴族だし、自分たちでヤーコプを仕留めたいって空気もあると思うからね。多分、あいつは人斬りだからって逃げない。それこそ貴族の矜持にかけて戦うと思う。この国の貴族は、そういう人って結構いるの。自分の誇りにかけてとかね。まあ、貴族が矜持を持つのは悪いことじゃない。基本的に貴族は、領民の先頭に立つことで味方を鼓舞するんだからね」


 私が言うと、オティーリエは心配そうに言った。


「私のせいだ。私がライムントなんかに声をかけたから・・・」


 どうだろう。ジークはプライドが高いから、遅かれ早かれこんな騒動を起こしていた気もする。


「プライドが高い貴族って、女性や子供を真剣に守ろうとするの。だから、あいつはこの結果がどうなろうと、あなたを恨むことはないと思う。私たちにできるのは、あいつを応援することだけよ」


 オティーリエは俯いてしまう。その表情は泣きそうなままだ。本当に公開処刑が行われるかは分からない。ライムントの取り巻きには南の貴族もいるみたいだしね。案外、側近に反対されて断念ってパターンもあるかもしれない。


 私はジークが戦うような事態にはならなければいいのにと、そう願うのだった。

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