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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第3章 色のない魔法使いと闇魔の炎渡り
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第153話 デニスの成長?

 私はエレオノーラに呼び出されて談話室に入った。談話室にはエレオノーラと、そしてなぜかオティーリエがいた。え? 何事?


「ども~。ちょっと遅れたみたいでごめんね。どうしたの?」


 私が軽い感じで尋ねると、エレオノーラが真剣な顔で私を見た。え? なにかあったの?


「オティーリエが、ライムント様にまた絡まれたらしいの。あなたのクラスのジークが助けてくれたそうなんだけど、ちょっと悪い顔をしていたそうよ。もしかしたら、何か良からぬことをたくらんでるのかもしれないわ」


 深刻な顔でそう説明してくれた。オティーリエは真っ青な顔をしている。


「王族怖い。なんなのあいつ、こっちのことまるで虫でも見るかのように見てきたわ。ジークさんのことを斬ろうとするのにもまったくためらいがなかった。王族ってみんなあんな感じなの? やばすぎるでしょう」


 オティーリエは両手で腕を抱きしめている。相当怖かったようだ。


「デニスって人が助けてくれたからよかったものの、ホントやばい奴に目を付けられちゃったね。もとはと言えば私が軽率な行動したからだけど、乙女ゲームなのにあの性格、やばすぎるでしょう。なんであんなのがいるのよ!」


 あ、オティーリエもこの世界の貴族のやばさが分かったみたいだね。でもデニスかぁ。ここでその名前を聞くとは思わなかったな。確か、今はライムントの取り巻きをクビになったはずだよね? 今は北の貴族と親しくしているみたいだけど・・・。


「ごめんなさい。正直名ばかりの婚約者候補だから、あの人が何を考えてるのか分からないわ。側近だった人なら何か知ってるかもしれないけど」


 そっか。デニスは元とはいえライムントの側近だった。なら何か知ってるかもしれないか。ちょっと聞いてみるのも一つの手かもしれない。


「あいつが何をたくらんでいるか分からないなら対策も立てようがないよね。わかった。ちょっとデニスと話をしてみる」


 私が浮かない顔で返事をすると、エレオノーラが心配したように顔を覗き込んできた。


「ダクマー、大丈夫? ちゃんとデニスから話を聞きだせる?」


 ううん。デニスってなんか頼りないんだよね。でも以前とはいえライムントの側近をしてて、オティーリエを助けたのなら、何か予測できるんじゃないかと思ったんだ。


「エレオノーラ、ありがとう。多分聞いたらなんか教えてくれると思う。あいつの予想、けっこう参考になると思うから」



◆◆◆◆


 デニスに連絡を取ると、すぐに話を聞いてくれることになった。


 その日の放課後、指定された談話室で一人、デニスを待つ。しばらくして、ドアをノックする音が聞こえた。


「ダクマー。何か話があると聞いたんだけど」


 デニスは静かにドアを開け、談話室に入ってきた。いつも以上に落ち着いているように見えるけど・・・。この前会った時も思ったけど、なんか、変ったというか成長したというか。


「えっと、急に呼び出してごめん。ちょっとライムントのことを聞きたくて・・・」


 そう尋ねると、デニスは予想していたようにため息を吐いた。


「やはり、オティーリエはエレオノーラ様の保護下にあるんだな」


 まあ、デニスなら気づいているよね。エレオノーラと私が仲がいいのは周知のことだし、オティーリエがエレオノーラに話しかけるところを見た人もいるようだ。


「まだライムント様はオティーリエがエレオノーラ様に付いたことに確証はないと思う。といっても、私は取り巻きを外されたから、たばかられている可能性はあるがな」


 そうか。デニスでもあんまり情報を持っていないのか。 


 てか、なんかデニスのイメージが違う。ちょっと前までラーレやホルストに合うと子供みたいに喜んでいたのに、今は大人の貴族みたいな印象がある気がする。ちょっと見ないうちに大人になったというか・・・。


「デニスは・・・、なんか変わったね。この夏に何かあったの?」


 私の問いに、デニスは淡々と答えた。


「そうだな。この夏、お前は領に帰ったそうだが、私は北の貴族を訪ねていたんだ。フェリックス先輩についていってな。そこで闇魔に襲われてな」


 私は驚く。そうか、ついにデニスも闇魔と戦ったのか。おじい様の援護なしで戦うのは相当心細かったと思う。


「おどろいたよ。おじい様がいない環境で初めて闇魔と戦ったが、最初は全然魔法が通らなかった。あの頃からずいぶん時間が経って成長したと思っていたけど。自信があった分、ショックだったよ。でもその時、貴族家の兵士が身をもって助けてくれたんだ。そのスキに、なんとか闇魔を倒すことができたけど、その兵士は怪我をしてね。彼の家まで連れていくことになったんだ」


 デニスはその時のことを思い出したのか、ちょっと震えている様子だった。


「彼の家に行って、貧しいとはこういうことなんだと初めて知った気がする。狭い家に、七人もの家族が身を寄せ合って暮らしていた。部屋の風通しは悪く、もちろん一人の部屋なんてない。聞くと、貧しいながらに協力し合って暮らしているらしい」


 デニスは自分の手のひらを見つめていた。


「ビューロウ領も、私たちが生まれる前はそんな家が多かったらしい。おじい様が領地を変革してくれたおかげで今はかなり裕福だが、昔は領民に餓死者が出ることも珍しくなかったそうだ」


 今のうちの領は結構裕福で、そんな状態を想像することはできない。


「おじい様が尊敬される理由がすごく実感できたよ。あの人は魔導士として優れているだけじゃない。領主としてしっかり領地を治めているからこそ、偉大なんだ。同時に平民を登用する理由も分かった。正確には、豪族も平民も区別せず使える人材を優遇しているってことなんだ。だからこそ、この40年で領を発展させることができた」


 ラーレもそうだけど、デニスもおじい様をすごく評価するよね。私にとってはくそ爺なんだけどね。


「そんなおじい様の後継には、私やホルスト兄さんは選ばれていない感じがする。むしろ、私たちに比べれば、ダクマーやラーレ姉さんの方がまだ可能性があると思う」


 いや私は無理だよ。私は頭悪いし、社交もへたっぴだしね。ラーレも同じだ。慌てて首を振る私を、力なく微笑みながら、デニスが見つめている。そしてハッとしたように慌てて続けた。


「話が脱線したが、ライムント様のことだったな。あの人は何か、闘技場でイベントをやろうとしているらしい。闘技場の責任者や貴族にコンタクトを取っているみたいだ。あの人の今の取り巻きには、闘技場に強いコネを持つゴルドー家の人間がいる。おそらく公開処刑を、久しぶりにやろうということじゃないかと私は踏んでいる。ダクマー、気をつけろよ。お前たちがターゲットになる可能性は高い。ライムント様に付け込まれないよう、しっかり対策を練っておくんだ」

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