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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第3章 色のない魔法使いと闇魔の炎渡り
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第152話 ライムントの策略 ※ 取り巻きその1 ヘルマン視点

※ ヘルマン・ハノーヴァ視点


 あのジークとやらが生意気にもライムント様に逆らった。田舎者の分際で何を考えているのか。私たち3人は、ライムント様の談話室で口々にあいつを罵った。


「ライムント様! あいつら本当に無礼ですよね! 南の貴族に東の貴族。田舎者のくせに我々中央の貴族に逆らおうなどと!」

「そうですよ! 光魔法の資質もないくせに、まったく何を考えているのか。あの女も急に離れていくなぞ、本当に無礼だ」


 私の言葉に、友人のリーヌスが同意した。


 最初はライムント様は遠い存在だった。やはり王族というのは特別で、話しかけるのもためらわれた。クラスも違うし、最初は恐れ多くて声を掛けられなかった。


 そんな私たちがライムント様に接近できたのは、光魔法の資質があったからだ。その授業でライムント様とご一緒するようになり、親しく声をかけてくださるようになった。まあ、ライムント様があのオティーリエにご執心になることまでは読めなかったのだけど・・・。


「ふん! どいつもこいつも物の価値が分からん奴らだ。フリッツの奴も期待外れだったし、フーゴも口うるさい。デニスの奴など北の連中と同行するようになる始末だ。やはり、4属性の加護しかないやつらはだめだな。私たちのように光の資質がない奴らは」


 ライムント様が吐き捨てた。上位クラスの3人、フリッツとフーゴとデニスが側近候補から外されてチャンスだと思った。学園内ではなぜか上位クラスに入れなかった私たちだが、ライムント様に気に入られれば後継になる芽も出てくる。そう思って、私たちはライムント様に進言して周りの貴族を追い落とすことにしたのだが――。


「ライムント様を止めたあの生意気な貴族、南のブルノン家の嫡男だそうですが、少し前から近づいてきたホルガーと仲が良かったそうです。ちょっと奴のことを探ってみませんか。そういうのは、我が家は得意なので・・・」


 私が進言すると、ライムント様も興味を示したようだった。


「ほう。確かホルガーはお前たちの隣のクラスだったな。いいだろう。奴をここに呼び出せ」



◆◆◆◆


 ライムント様に呼び出されたホルガーは、恐縮したように頭を下げた。その卑屈な態度に、ちょっと胸がすく思いがした。


「ラ、ライムント様。あ、あの・・・。私に何か御用でしょうか」


 こいつはフリッツにダクマーの悪口を吹き込んだくせに、おどおどしたような態度になっている。まあ、あのフリッツのやられっぷりを見て震えるのは仕方がないと思うが。今も、ダクマーには近づかないようにしているみたいだしな。


「貴様、ジークとか言う男と仲が良いようだな。奴のことを報告せよ。奴の出身地や生い立ちのことなどすべてをな」


 ライムント様の言葉を聞いて、ホルガーが震えた。


 おそらく、ホルガーにはわかったのだろう。ライムント様がブルノンの嫡男をどうするつもりなのかを。


「ラ、ライムント様! お許しください! ジークは、貴族としての意識が強いだけなのです! ライムント様に逆らおうなどとは、夢にも思ってないのです!」


 ホルガーは必死で言い募った。だがライムント様は静かにホルガーに近寄ると、その頬を思いっきり殴りつけた。


「貴様! 誰にものを言っている! お前は大人しく私の質問に答えればいいのだ!」


 殴られたホルガーは、すぐに土下座をした。


「お許しください! これ以上は、どうか!」


 私は近づいて、土下座し続けるホルガーの髪を掴む。そして顔を近づけると、、怯えるホルガーの目を見ながら言葉を告げた。


「何を怯えている。お前はもう、こちら側だ。フリッツにダクマーのことを吹き込んだのを、忘れたとは言わさんぞ」


 ホルガーは泣きそうな顔になった。


「お前は何も考えずに言うことを聞けばいいのだ。さあ話せ。ジーク・ブルノンのことを。あいつが大事にしているもの、苦手なもの。得意なもの、すべてをな」



◆◆◆◆


 それからホルガーはぽつりぽつりとブルノンのことを話し出した。


「そうか。やつは貴族としての矜持が高い。おびえたふりをするオティーリエを放置することはできなかったということだな」


 リーヌスが思案顔になる。そして何かを思いついたようにライムント様に進言した。


「たしか最近、南の貴族を殺した殺人犯がつかまりましたよね。なんでも大剣を持って護衛ごと貴族を斬り殺したとか。そいつは王城の牢獄に捕らわれていると言います。そいつを殺す機会をエサにすれば、ブルノンを引きずり出すことができるのではないでしょうか」


 ライムント様が静かにリーヌスの顔を見た。


「南の貴族を何人も葬ってきた相手です。おそらく、ブルノンの子せがれごときには勝てないものと思います。そして犯罪者がブルノンの子を仕留めた後で、我々がそいつを殺せば、こちら側の力を示すことにもなる」


 ライムント様は口元を歪ませると、入口に立つマルティン様のほうを見た。


「どうだ。お前なら、その犯罪者を殺れるか?」


 マルティン様は皮肉気に笑うと、丁寧に頭を下げた。


「南で暴れたヤーコプという男については聞いたことがあります。風魔法を使った身体強化を行うとか。珍しい技ですが、我々の光魔法に及ぼうはずがありません。ご命令いただけば、ヤーコプごとき、簡単に始末してみせましょう。騎士団長どもに、光魔法の強さを見せつけてやるのも面白いかもしれませんね」


 くやしいが、マルティンには高い光魔法の資質がある。わずかにしか資質がない私やリーヌスとは違い、おそらくレベル3くらいの資質があるのではないだろうか。剣の腕も経つし、容姿だって凛々しいとりしいと言われている。私たちとは一線を画する存在なのだ。


 ライムント様はゆがんだ笑みを浮かべ、大声で笑い出した。


「面白い! 面白いぞ! うまくすれば、デニスの奴も始末できるやもしれぬ。武門を目指す2人が犯罪者に殺されたら・・・。面白いことになると思わんか!」


 そう言うと、大声をあげて笑い出した。

 その声を聴いて不安になるが、私たちはすぐに笑みを浮かべた。


「奴の情報については私にお任せを。奴が取ろうとする戦法など、全て調べて見せましょう。どんな手を使っても、奴が犯罪者との戦いで勝てぬようにして見せますゆえ」


 王族のやることに間違いはないはずだ。この方についていけば、私たちの敵をきっと始末してくれるはずなのだから。

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[気になる点] このきちがい王子、早くこの世から退場して欲しい。
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