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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第3章 色のない魔法使いと闇魔の炎渡り
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第139話 ヴァンダ先輩の死霊退治

 バプティスト様の見送りを終えて帰ろうとしたとき、ふいにホルストに呼び止められた。


「ダクマー。帰ってきて怱々にすまないが、明日は少し時間が取れるか?」


 え? めずらしいね。ホルストが私に用があるだなんて。


「ランケル家のヴァンダ様のことは知ってるな。彼女、実兄から魔物退治を押し付けられたらしくて。それで仲間を集めているらしい。けど、全然人が集まらないんだ。特に前衛が足りなくて、お前、よかったら協力してくれないか」


 そう言えば前にラーレからヴァンダ先輩のことを頼まれてたっけ。


「いいけど、でもホルストが行けばいいんじゃないの? アンタ、前衛もできると思うけど?」


 私が眉を顰めて言うと、ホルストは申し訳なさそうな顔で答えた。


「いや、実は先約があってね。ヴァンダ様に声を掛けられる前に魔物退治に行くことが決まっててさ。スケジュールを調整しようとしたが、それも難しくて。君、時間があるなら手伝ってくれないか」


 あ、そういやホルストってこっちじゃ人気があるんだったね。特に魔物退治では引っ張りだこだって聞いた気がする。


 そこで口をはさんだのはラーレだった。


「そう言えば、あの子、なんだかあわててたね。イレーネやリンダになんか頼んでたみたいだけど、あいにく都合が合わなかったらしいし」


 イレーネ先輩もリンダ先輩も今年で卒業だから、忙しかったりするんだよね。特にイレーネ先輩はメレンドルフの槍術を学んでいるから、前衛としてかなり頼りになったはずなんだけど。


「まあそう言う事情なら仕方がないか。いいよ。私で良かったら力を貸すよ。でも、どこに魔物が出たの? また南の森?」

「いや、そうじゃない。今回はかなり特殊で、王都のはずれにある貴族の館に、死霊が出たそうなんだ」


 え? 死霊だって!? なんてホラーな展開! ちょっと楽しみなんだけど!


 私が目を輝かせたのを見てあきれたのがラーレだった。


「アンタ、死霊と戦うのは初めてよね? 大丈夫なの?」


 いや確かに初めてだけれども! でも楽しみなんだけど!


「死霊と戦うときに気を付けることってあるの?」


 私がワクワクしながら聞くと、ホルストがあきれたように答えてくれた。


「基本的に物理攻撃は通用しない。すり抜けてしまうからね。ダメージを与えるには、魔力を込めた一撃を与えるしかない。君なら、剣に無属性の魔力を纏わらせることもできるんだろ? 死霊に攻撃するときは必ず魔力を使うんだ」


 おお! なるほど! それなら私にでもできそうだ。


 私がニヤニヤしている。反対に、ラーレは下を向いて何か考え込んでいるようだった。


「どうしたんだ愚姉。なんか気になることでもあるのか?」


 ホルストが聞くと、ラーレは顔を上げた。


「てか、ダクマー以外に同行者はいるの? 上級生は忙しい人が多いし、あの子の同級生も魔物退治とかで忙しかったりするよね? 相手が死霊なら、生半可な魔法使いじゃあ、かえって足手まといになるんじゃない?」


 え? そうなの? 死霊ってやばい? なんか興奮してきたんだけど!


 さらに意気込む私をよそに、デニスが口をはさんだ。


「そうですよね。私が行ければいいんですが、ここ数日はフェリクス先輩の手伝いをするって約束しちゃったんですよね。でも死霊となると、やっぱり光魔法を使える人がいると安心だと思うんですけど」


 え? そうなの? まあ死霊に光魔法ってのはゲームとかだと定番なんだけどね。


「光魔法を使える生徒ってほとんどいないんだろ? ったく、ウルリヒさんも無茶ぶりしてくれるよ」


 ホルストが愚痴を漏らそた。


 そのウルリヒってのはヴァンダ先輩のお兄さんだったよね? 確か去年卒業して、今は大学部に通いながら教員の助手みたいなことをやってるって聞いてるけど・・・。


「光魔法かぁ。知ってるのは一人しかいないんだけど、ちょっと聞いてみるよ」



◆◆◆◆


「ダ、ダ、ダ、ダクマーさん! な、なんでそんなお方を連れて来てるんですか?」


 え? なんかまずった?


 私は力になってくれる人を連れてヴァンダ先輩と合流したんだけど・・・。


「高名な闇の星持ちとご一緒できるなんて光栄だよ。私はマリウス・ヘリングだ。今日は私とディーターもご一緒させてもらう。こう見えて光魔法にはいささか心得がある。足を引っ張ることはないと思うけど、よろしく頼むよ」

「自分はディーター・クラーであります! この度マリウス様のサポートを命じられました! クルーゲ流を学んでおりますのでよろしくお願い申し上げます!」


 同行してくれたのはマリウスだった。そのサポートとして、ヘリング家の分家で1学年上のディーターさんもいる。私がマリウスに声を掛けたら参加してくれることになったんだけど・・・。


「ダ、ダクマーさん! どんな伝を持ってるんすか! マリウス様って西の重鎮ですよ!? こんな魔物退治なんかに、来てくれる人じゃないのに!」


 ヴァンダ先輩が慌てて私に言い募った。


 いや、私の友人で光魔法を使える人って他にいないし、声を掛けたら喜んできてくれたんだよね。


「多分ですけど、マリウスは新しく覚えた魔法を使ってみたいっぽいんですよ。なんか一緒に来るディーターさんにも力を見せたいようなこと言ってましたし」


 そう。ディーターさんはマリウスのおつきという感じではない。マリウスが本当に攻撃魔法を撃てるようになったか、見張ってるみたいなんだよね。獅子身中の虫みたいにも見えるけど、彼に実力を示せば家内での立場が強まるみたいなことを言ってたんだ。


「ダクマーさんから話を聞いてぜひ参加したいと思ってたんだ。やっぱり死霊には光魔法だからね。敵の数も多いらしいから、私の力を見せるチャンスはたくさんあると思うしね」


 そう言って、マリウスは意味ありげな視線をディーターさんに向けたのだった。

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