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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第3章 色のない魔法使いと闇魔の炎渡り
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第137話 学園に戻って

 公爵家での休息を終えた私たちは、学園への帰路についた。


「ごはん、おいしかったなぁ。あと3泊くらいしていきたかったのにもう出発だなんて。おかしいと思わない?」


 同じ馬車に乗ったラーレに愚痴ると、ラーレはあきれた顔でこっちを見てきた。


「ご飯は美味しかったけど肩がこるわ。やっと普通に暮らせるのね。てかもう秋かぁ。あと半年ほどで卒業だなんて、ちょっと信じられないわ」


 そして遠くを見つめるように窓の外に目を向けた。


 そんな彼女を見て、エレオノーラの言葉を思い出す。


「確かにエレオノーラの言う通り、ルート様とラーレの共通点って多いんだよね。同じフランメの孫だし、黒い炎を操ってるし。あの人と同じように黒いドレスを着たら、そっくりになるのかもしれない。体つきも、ちょっとがんばればごまかすことができそうだし」


 私は黒いドレスを着たラーレを思い浮かべて慌てて首を振る。


 いや、やっぱり違うよね! ルートお姉さまとラーレだと全然キャラが違うんだし。確かに要所要所で励ましてくれたりするし、黒い炎を使って敵を殲滅したりするんだけど、雰囲気が全然違うから!


 必死で首を振る私を、ラーレが冷めた目で見つめてきた。


「また百面相してる・・・。ほら、もうすぐ学園なんだからシャキッとしなさい! あんた、単位が結構やばめなんだから、学園に付いたらしっかり勉強しないとダメなんだからね!」


 ラーレが私を叱りつけてきた。


 くっ! 自分が何とか卒業できそうだからってひどくない!? 私だって頑張ってるんだからね!


 ラーレと口げんかしている間にも、馬車は学園へと近づいていくのだった。



◆◆◆◆


 学園に戻った。


 帰還の報告をするためにガスパー先生のところに向かっていると、その途中でフェリクス先輩たちの集団にかち合った。ザシャ先輩やブリギットさん、そしてデニスの姿まであった。


「お、戦姫に影姫か。お前たちも今戻ったんだな」


 フェリクス先輩が私たちに会うなり挨拶してくる。


 いや止めて! 姫なんて呼ばないで! 本当に黒歴史だよ! ラーレだって、顔を赤くしてるじゃない!


「てか聞いたぜ。ビューロウ領は大変だったってな。炎のヨルダンに襲われて、それを返り討ちにしたそうじゃないか。高位の闇魔と戦えるなんて羨ましいぜ」


 ザシャ先輩が明るい口調で言った。


 いや、こっちも真剣だったからね。何か一つ間違えたら死者が出たかもしれないし。勝てたのは、おじい様の巧みな指揮と運があったからだと思う。


「いやぁ。結構ギリギリでした。でも何とか、けが人もなく学園に戻ってこられましたよ。先輩たちはどうでした? 北って、やっぱり闇魔の侵攻が始まってるって聞きましたが・・・」


 フェリクス先輩は肩をすくめた。


「まあ、学生の俺達が、最前線に向かうことはなかったけどな。それでも、北の領地に現れた魔物を倒したりはしたさ。正直、今回はデニスがいてくれて助かったよ」


 そういえば、デニスはこの夏は北に言ってたんだよね。ライムント様たちと一緒に過ごしたくないようなことを言っていたけど、フェリクス先輩のつてを頼って北で戦闘に参加していたらしい。


「前にも言ったが、うちには土属性以外を得意とする魔術師は少なくてな。でもこいつは水だけじゃなく、火も風も強いと来ている。探索にも魔物を倒すのにも本当に役に立ってくれたぜ。周りの戦士たちの評判も良かった。さすが、上位クラスの生徒だってな」


 ザシャ先輩の言葉に、デニスは照れたように頭を掻いた。なぜか隣のブリギットさんも誇らしげな顔をしている。


「だけど、さすがはおじい様だな。あの有名なヨルダンを倒してしまうなんて。ヨルダンはやっぱり武具持ちだったのか?」


 デニスが聞いてくると、私は神妙な顔で頷いた。


「うん。なんか、白銀の腕輪を落としたよ。エレオノーラ・・・様から王家に直接納品するみたいなこと言ってた」


 私から王家に届けさせようかって意見もあったけど全力で断った。私が偉い人に話をできるわけないじゃない! ラーレも似たようなことを言って断ってたしね。


 私たちがそう答えると、フェリクス先輩は安堵の息を吐いた。


「そうか。おそらく、闇魔は魔道具を使ったって言う説が強い。どの地脈にも飛べるなら炎渡りはほんとうにやっかいだ。おいそれと地脈の制御に向かうこともできなくなるし。一部の、炎の高位闇魔にしか扱えない技らしいから、お前たちが炎の高位闇魔を倒したのは本当に助かる」


 そう言う意味では、私たちがヨルダンを倒したことは相当大きな意味があったということだね。この戦いにかなり貢献したみたいで誇らしい気持ちになる。


 だけど、フェリクス先輩は厳しい表情を崩さない。


「だが、こちらが不利なのは変わらない。うちの周囲では、何名もの貴族の当主が倒されているからな。地脈の制御装置を壊されたケースもある」


 まじか。あれが壊されちゃったところもあるのか。


 この国では地脈の制御装置に莫大な価値がある。制御装置を使えば田畑からの実りを多くしたり、防壁を作ったりできるからね。あの装置があるだけで、高位の闇魔の侵攻を防ぐ結界ができちゃうらしいし。


「あの制御装置が壊れたらどうなるんです? 闇魔にとられちゃうとかなり厄介って話を聞きますけど」


 私が聞くと、フェリクス先輩は腕を組んで話してくれた。


「闇魔が地脈を染めると、周囲の魔力が人間を嫌うようになる。まるで高い山に登ったように、呼吸をするのが難しくなるそうだ。魔法を練るのも困難になるらしい。全体的に闇魔の有利になるよう環境が変わってしまうんだ」


 おじい様が言うには闇魔はこの国では水の中にいるように行動が制限されるけど、それとは逆のことが起こるんだね。


「まあ、闇魔は地脈制御装置を作れないし運用もできないから、極端に人が住めなくなるわけではないそうだがな。一応そのおかげでアルプトラウム島の住民は生かされているようだからな。それに、一度地脈を取られても、土魔法を使えば地脈をこちら側でも利用できるらしいぞ」


 地脈を取られてもそこまで悪い状態になるわけじゃないみたいだ。


「だが、装置を作れるのは王族だけだ。一度壊されれば、王族が修復するまでいつも魔物や闇魔の襲撃に怯えなければならん。厄介なことにな」


 制御装置を治すのは、王族しかできないんだよね? 確か今は、北に第2王子が出征してるんだっけ?


 だけどフェリクス先輩は顔を引きつらせる。


「北にはアウグスト殿下がいるんだが、正直手が足りないのが現状だな。結界の修復は、王族でも限られた者しかできん技だからな」


 フェリクス先輩が言うには、制御装置の修復は、秘宝を使っても光の素質がレベル3以上でないとできないらしい。この条件に合う王族って本当に少ないらしいんだよね。マリウスは王族じゃないから修理とかできないらしいし。


「壊された制御装置を修復するために、光属性の強い王族が北の地に向かってくれることになった。お前たちも名前だけは知っているかもしれん。以前学園長をされたことがあるバプティスト様が、王家の秘宝を持ってきてくれることになったんだ」

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