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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第3章 色のない魔法使いと闇魔の炎渡り
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第124話 ラーレの黒い炎

「なんで私とアンタが模擬戦を行わなきゃいけないのよ!」


 ラーレが噛みついてくる。いや私に言われても分かんないよ! 命令したのはおじい様だし、しかも今回はそれぞれの護衛を含めた3対2の戦いなんだけど! ラーレと対戦するのは結構命がけなんだよ!


「これはつまりあれだよな。ビューロウの、バルトルド様の秘術を見られるってことだよな? すげー! 来てよかったー!」


 ギルベルトは大興奮だ。いや、ラーレの魔法はえげつなすぎてドン引きだと思うよ。


 ちなみに、当家の人間で観戦するのはアメリーだけだ。出征している叔父と叔母はここにいないし、両親も領内で慌ただしく動き回ってる。でも観戦の内容は私とラーレの模擬戦なんて、大したことない気がするんだけど。


 私とコルドゥラはラーレたちに相対する。道場にはエレオノーラとギルベルト、マリウスとアメリーしかいない。4人は道場の端にいて、私たちとはかなり距離があるので、調整の上手いラーレならあの魔法でも観客を巻き込むことはないだろう。


 私とラーレは互いに構えてにらみ合う。勝負は多分、一瞬で決まるだろう。


「では私が合図をしますわね」


 エレオノーラが真剣な表情で私たちの顔を見渡した。


「はじめ!」


 そして彼女は模擬戦の開始を宣言した。


「きええええええ!」


 私は木刀を振り上げてラーレ目掛けて一気に駆け出した。その進路を、ラーレの双子の護衛が阻む。ラーレの魔法が完成する前に彼らを落とせるかどうかが、この勝負の趨勢を決めるのだ。


「でああああああ!」


 私は気合とともに木刀を振り下ろした。ラーレの護衛のエラは、かろうじてその一撃を受け止める。足と剣に魔力を籠めることで、何とか私の一撃を防御したのだ。私の教えた身体強化は彼女たちに確実に息づいている。


 けど甘い!


 私は交差した木刀を押して彼女を突き飛ばすと、素早く胴を払った。


「くっ」


 コルドゥラの猛攻をミリがなんとか防いでいるのが見えた。


「たあああああああ!」


 ミリが木刀に風を纏わらせて突きを放った。その突きを素早く避けると、コルドゥラは彼女の肩に木刀を振り下ろした。


 これで2人! 


「燻り、焼き尽くせ」


 しかしその時、ラーレの魔法が完成した。ラーレの手のひらに現れた黒い炎は、黒煙を上げながら燃え上がっている。


「くっ、完成したか!」


 私は焦りを隠せない。ラーレは炎を私目掛けて放ってきた! 私は炎を木刀で斬りつけたが、炎を完全にかき消すことは失敗する。


 まずい!


「くそっ! 無属性魔法を使ったのに!」


 斬りつけられた黒い炎は四方に散った。その炎の破片から黒い煙が立ち上り、一気に私の周りに纏わりつく。


 くそっ! こうならないように立ち回りたかったのに!


「げほっ、げほっ」


 私は咳をする。煙が目に入って視界が完全に防がれてしまう。私は涙と咳が止まらなくなり、思わず片膝をつく。煙に巻かれたコルドゥラが、一瞬で気絶したのが見えた。


「くっ! コルドゥラ!」


 ラーレのこの魔法は敵味方の判別がつくのが恐ろしい。エラとミリを落としていなければ、確実にこれで決着が着いていただろう。


 激しくせき込む私を見て、ラーレが勝利を確信したようだった。


「これで! ファイア!」


 ラーレが追撃の魔法を放った。


 でも目と鼻が利かなくても、熱でだいたいの位置は分かる! この煙が体中に回らないうちに、なんとかしないと!


 私は足に魔力を展開させると炎を避けながら素早く接近する。そして驚くラーレの鼻先に木刀を突き付けた。


「くっ! 一瞬で!」


 ラーレは目を見開くと、あきらめたように木刀を捨て、降参の意を示したのだった――。



◆◆◆◆


「これが、ビューロウ家の秘術か。すげえな。実質、あの魔法を撃たれたら終りじゃないか」

「ああ、今回はダクマーさんが勝ったけど、戦場でダクマーさんのようになったら巻き返しは難しい。魔法を斬っても、煙は残る。そして煙を食らうと、視界がふさがり、咳も止まらなくなる。そしてひどくなると気絶してしまう、か。考える以上に危険な魔法だな」

「魔法って、威力があれば強いというわけじゃないのね。確かに敵を殺さなくても、完全に封じ込めれば問題ないのかもしれない。本当に危険な魔法ね」


 3人とも、ラーレの魔法に驚いた様子だ。勝ったのは私なのに、口々にラーレの魔法をほめていた。


 まあ一応3人は味方だから一つ追加情報を与えておこうか。


「ちなみに、この魔法の恐ろしいところは敵味方の判別が可能と言うこと。今回は私たちが両方の護衛を落とせたけど、たとえ残ったとしても結果は変わらなかったと思う。彼女の護衛を盾にしようとしたことがあるけど、私だけ昏倒して護衛たちはぴんぴんしてたのよ」


 私の言葉に、3人は絶句する。この魔法のえげつなさが少しは伝わっただろうか。


「しかし、火と闇の合成術か。理論は分かっても簡単にまねできる魔法じゃないな。制御もかなり難しそうだし、何より消費魔力がかなりけた違いだ。その分の威力はあるみたいだけど、使い手はかなり限られる。まさに秘術と言うのにふさわしいな」


 ギルベルトがそう言って感心した。魔法の専門家の彼がここまで言うのなら、この魔法は本当に優れたものなのだろう。ラーレは照れたようで、顔を赤くして下を向いていたけどね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 攻め方が直線的に過ぎる 別に護衛を倒さずともラーレさえ倒せればいいなら、3段階目で緩急つけながら迂回して仕掛ければ良いし、そもそも空間にも干渉出来るようになったなら空中で足場を作って3次元的…
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