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転生少女は色のない魔法で無双する  作者: 小谷草
第3章 色のない魔法使いと闇魔の炎渡り
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第119話 ビューロウの剣への興味

「あ~、なんであのページの暗記を外したかなぁ。あのページに書いてあったのは覚えてたんだけど、結局思い出せなかったし。あ~、ホントどうしよ~」


 剣術の道場に行く道すがら、私は期末テストのことを思い出していた。私は頭が悪いので、最終手段としてヤマを張った。そして見事に外して、赤点こそは免れたものの、クラスで下から3番目と言うありがたくない成績になっていた。


 期末テストは散々な結果だった。でも実家が深刻なことになっている生徒も多かったので、全体的に点数は低かったそうだ。今回はギリギリ追試は免れたけど、次回はどうなることか。


 落ち込んだまま道場の入り口をくぐると、生徒たちが一斉に私を見た。


 え? なに? なんなの?


 剣術の道場に来たのはあの一件ぶりだけど、こんなに集られるとは思わなかった。授業を取っているほどんどの生徒がいるんだけど!


 私が驚いて周りを見渡すと、ジークが代表して答えてくれた。


「みんな、お前とフリッツ様の決闘を見て感動したらしくてな。今日来るって聞いて楽しみにしていたんだ。やっぱり資質のないお前がフリッツ様を完ぺきに倒した光景は、心に来るものがあったらしくてな」


 あー。そういえば、あの日闘技場にはたくさんの生徒が詰めかけていたよね。私の戦いぶりを見た生徒が剣術の授業を取った中にもいたってことか。


 ジークがそっと私に耳打ちする。


「一応、お前の剣を教えるって話はまだ言ってないんだけど、すんごい人気だろ? みんな、素質のないのに強いお前に興味津々なんだ」


 あ、そうか。ゲラルト先生の授業を取った生徒は平民クラスの人が多い。自分の資質について悩んでいる人もかなりいるのかもしれない。


 その気持ちは分かる。おじい様の指導を受けるまで、私も自分の資質について悩んでいたんだから。


「そっか。みんな魔術の素質がなくても強くなれる方法を知りたいよね」


 私のつぶやきに平民クラスの生徒が青い顔で頷いた。


「僕は、水も土も資質がないと言われました。でも何とか少しでも戦えるようになりたくて、この授業を受けたんです。すべての技を話してほしいとは言えません。ですが、何かヒントだけでも教えてもらえないでしょうか」


 この人は確か、平民クラスのゲアトさんだったかな? 20代半ばくらいの人でいつも一生懸命練習しているから覚えてる。彼だけじゃない。平民クラスの生徒って、みんな生き残るために必死なんだ。そのひたむきさにはいつも好印象だったんだけど・・・。


 考え込む私を見て、ゲラルト先生が慌ててとりなした。


「ダクマー君が持っている技はいわばビューロウの秘技だ。教えられないと言っても仕方のないことなんだ。みんなも気持ちは分かるが、貴族の秘技なんだからしょうがないと思ってくれ」


 へ? なんか解散!みたいな雰囲気になってるんだけど!


 私は慌てて言いつくろった。


「い、いや、だめじゃないよ! うちのおじい様からある程度は教えていいって言われてる。だけど、こんなに人数がいるのは想定外でさー」


 私が慌てて取り繕うと、みんなほっとしたというか、うれしそうな顔をした。


「でも、私の技は一朝一夕に身に着けられるもんじゃないし、普通とは反対に資質が低いことが条件になる。そして、資質の低い属性を使うから、制御はその分だけ難しくなるけど・・・」


 ゲラルト先生は苦笑した。


「基本的に、土や水の素質がある程度高い奴はここにはいない。平民でも資質の高い奴はみんなメレンドルフの槍を学びに行っちまうからな。ここにいる連中は、水や土の資質に問題があるやつばかりなんだよ」


 ゲラルト先生の言葉を聞いて周りを見渡してみた。みんな自信がなさそうで、それでいて決意を込めたような目をしていた。


「闇魔の襲撃が始まってみんな不安なんだ。この学園に通っている平民は、ほとんどといっていいほど戦地に向かうことになる。少しでも戦力を強化しようと、みんな必死なんだ」


 そこに集まった平民たちの顔を見て私も決意した。悔しいけど、あの爺はこうなることを予測していたんだろう。だから、出発の際にビューロウの魔力板を持っていくように言ったんだと思う。


「みんなの意思は分かった。それなら、希望する人には私の技術を教えようと思う。希望者は明後日の放課後にここに集まるということでどうですか? 私にも準備がありますし」


 ゲラルト先生に聞くと、申し訳なさそうな、それでいて私に感謝するような顔でこちらを見た。そして私に深々と一礼してきた。


「すまん。本来ならまだ学生の君にこんなことを頼むべきでないと思う。だが、闇魔の進軍が始まった今、こいつらには少しでもいい武器が必要なんだ。ビューロウの秘技に頼ることになって本当に申し訳なく思う」


 いえいえ。ゲラルト先生には決闘前に私を守ってくれた恩があるからね。元から先生とジークには教えるつもりだったし、人数が増えたからって約束を反故にするつもりはない。


「いいでしょう。ビューロウの技術、教えてあげたいと思います。でも、最初に言っておきます。ビューロウの身体強化は、かなりの痛みを伴います。それでいいのなら、明後日の放課後にここに来てください」

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