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第七十六話 会敵

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「『隠密』」


 ふわっと周囲に溶け込んだ。潜入するならこれを使わなきゃだよな。


「敵が来たぞ!全員武器を持て!敵を見つけたなら殺してしまえ!これは魔王様の命令だ!いいな!?行け!」


 おっと、だいぶ物騒な命令が下されてるらしい。俺の目的は魔王だけだからさっさと行ってしまおう。


「『探知』『身体強化』」


 翼も隠れるかどうかは分からないから安易に出せない。【探知】でこの城のMAPは把握したから最速最短で向かうぞ。幹部みたいなのに気づかれるのも厄介だし。


♢♢♢♢♢♢


 あっという間……10分としないうちについてしまった。こんな簡単につけるか?普通。幹部がいないなんてことはないと思うけど……ならこの先になにか待ってると考えるべきだな。……よし、開けるぞ。


 ギィィと音を立てて扉を開けた先には、玉座に座る女が一人、その周囲に屈強そうな男が二人いた。やはり、ここで待ち伏せしていたか。しかもこの中だと俺が一番弱い。油断すると一瞬で殺されるぞ……!


「へぇ、君があのマモンのお気に入り?ようこそ、私の治める色欲の国へ。どうかしら?この国は。いいところでしょう?」


 ぐっ!頭が!これが……魅了?抗えなくなって……くる……

 …………いや!ダメだ!負けるなよ!俺!


「あは!面白いじゃない!私の魅了を耐えるなんて。聞いたことないわよ?……なるほどねぇ。その腰の刀、神器とマモンの力のこもった刀ね。神器の力に魔王の力。それに君自身の力が合わさって魅了が防がれた……か。なかなかいいじゃない?ベル、バルデ、相手してあげなさい。」


「「はっ。」」


 二人の側近が此方へ近づいてきた。肝心の魔王はこちらに興味はないようだ。いや、この場合この二人の勝利を疑ってないといった方が正しいのかもしれんな。しかし、この二人に。しかも二人同時ならもっと勝つ確率が下がったのは言うまでもない。俺は二本の刀を抜いた。そして翼を出す。翼が生えたのは恩恵の副次的なもので、しまっても恩恵自体は発動しているからCTに入っていないのだ!


「『身体強化』『覚醒(ゾーン)』『刀剣解放』『魔刀』水風魔刀・斬、雷風魔刀・魔王刀!行くぞ、勝負だ!」


♢♢♢♢♢♢


 俺は俺の持てる力を全て使って挑んでいる。しかし、全て軽くいなされてしまう。しかも、相手も攻撃の意志がないのか、俺に止めを刺さない。生かされ、俺はこの二人に挑み続けているのだ。


「『結界』!『納刀・光せパリンッ!

ん』!」


 結界を張ってからの納刀・光閃は通じない。結界を張った瞬間割られるからだ。俺の技が、悉く潰される。憶測でしかないが、俺のアーツ前の予備動作的なのを見てるんだろう。複合魔法はためがあるからナシ、というか魔法やらスキルやらアーツやら全てに予備動作は存在する。つまり、この二人に勝つには二人以上に速く動くかアーツなしの素の実力で勝つしかないだろう。なら、これは使わねぇ。

 俺は、魔王刀をしまった。技術なら、一本の方が得意だからだ。俺は、全力のダッシュをする。距離を詰めたのはいいが、詰めた先にあったものは拳だった。そんなことはこちらも読めているので、体をひねって避ける。かなり体に優しくない技だが、こうするしかない。避けた後は、もう一人の拳が飛んでくる。それは、刀を使って受ける。ギリギリギリ。俺は手をかざし、こう叫んだ。


「ウィンドカッター!」


 二人、いや、ベルとバルデは予備動作を見ようとする。だが、そんなのあるはずはない。これは(ブラフ)だからだ。ここに俺は力を集中させる。こいつを、ベルを倒すのはここしかないんだ!切りつけている刀を放し、俺は腰から魔王刀を取り出す。この一瞬の隙、ここにかける!


「『魔王流・断罪』!」


 魔王流・断罪。魔王流・魔断と対をなすアーツ。魔断は魔物に対しダメージが上がるが、断罪は罪を背負う者、つまり七つの大罪の魔王の眷属や部下に対してもダメージがあがるのだ!もちろん、俺たちプレイヤーへのダメージも上がる。これしか、俺が繰り出せるアーツはなかった。しかし、これで!


 ……ベルを倒した。これは俺にとってとても大きなことだった。先ほどまでフルボッコにされていた相手を倒したのだ。そのおかげで、いや、ベルのおかげで俺も技で戦うということを思い出した。とても、いい奴だった……


 そこに水を差すのはやはりこいつだった。


「すごいわねぇ。ねぇ、君。色欲の国(私たち側)にこない?」

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