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【短編】見つからなかった7つ目




 幼い頃を思い出して欲しい。

『学校の七不思議』って皆の学校に無かったかな?

 忘れもしない、アレは僕がまだ小学5年生の夏の話し。


 ◇


 事の発端は夏休みの宿題だった。

 当時、算数や国語、理科といった科目の宿題の他、自分達で選択出来る宿題というのがあった。

 その中には、植物の観察日記や読書感想文、創作文、そして自由研究等がある。


 夏休みも中盤、同じクラスの仲良し6人で、自転車で5分程の近所にある図書館に集まっていた。


 題材は勿論、『合同で自由研究をして楽しよう』だ。

 ただ、仲がいいのが6人も集まると、当然まともな議論など出来るはずが無かった。



タケル「なぁ、宿題よりサッカーしに行かねぇ?」


タクマ 「タケちゃんの宿題が1番ピンチなんだから、タケちゃんはちゃんとやろうぜ?」



 自由奔放過ぎる所があるタケル、通称タケちゃんと、メンバーの中では比較的大人しいタクマがそんな話しをしている。



カオリ「タッ君の言う通りだよ! どうせタケちゃん、宿題ほとんどしてないんでしょ?」



 と、メンバーの紅一点のカオリが言う。

 僕は比較的馬鹿だが真面目ではあったので、この時点で宿題はほとんど終わっていた。



カオリ「コウ君も言ってあげてよ!」


コウタ「僕もさっさと合同で自由研究終わらせて遊びたいし、やるなら早くやろうぜ」



 コウ君ことコウタ、要するに僕の事だ。

 僕は何としても楽がしたかったので、早く自由研究に取り掛かりたかった。

 残りの2人、ユウトとケイタは自由研究の題材を決めるべく、図書館内の本を見て回っている。


 しばらくすると、何冊か本を抱えた2人が帰ってきた。



ユウト「どうよコレ! やっぱ時代はオカルトでしょ!」


ケイタ「うっわ、出たよ。俺苦手なんだけど……」



 ユウトはオカルト系の本を掻き集めて来たらしい。

 ちなみに、ケイタが持ってきた本は『可愛い動物もふもふ特集』みたいな本だ。

 軍杯が上がったのは言うまでもなく、ユウトだった。


 6人で話し合った結果、オカルトの中でも比較的簡単そうな『学校の七不思議』について調べる事になった。


 その日から1週間程、皆で集まっては夏休み中の学校で調査したり、昔この学校の生徒だったと言う先生に話しを聞いて回り、何とか自由研究が書ける分くらいの情報は得られた。


 ◇


 夏休みも終わり、学校に登校して各科目の宿題を提出し終え、残るは選択出来る宿題の提出だ。


 読書感想文や観察日記は提出だけでいいのだが、自由研究だけはクラスメイトの前で発表しなければならない。


 くじ引きの結果、僕らの発表は最後になった。

 僕達以外の自由研究は割と普通な感じのが多かった。

 そしていざ、僕達の出番。



コウタ「えっと、僕達は『学校の七不思議』について調べてきました。

 1つずつ紹介していきたいと思います」


 パチパチパチパチパチ


 こうして僕らの発表が始まった。


 ◇


コウタ「これで、僕らの発表を終わります。

 ご清聴ありがとうございました」


 パチパチパチパチパチ


 特に何事も無く、自由研究の発表は終わった。

 だが、問題はここからだった。



先生「皆さんよく出来ていました!

 私が君達くらいの頃もそういう噂はありました。

 この学校にもちゃんと七不思議があるんですね!」


生徒「俺は3つくらいしか知らなかったよ!」



 僕達の発表に先生もクラスメイトも関心していた。

 そりゃそうだ、あれだけ調べたのだ。


 ガヤガヤした教室で、先程3つくらいしか知らなかったと言っていた生徒が続ける──。



生徒「ちゃんと7()()あったんだね!」


コウタ「……え?」



 僕は発表をしたメンバーと顔を合わせるが、皆も「?」となっていた。


 それもそうだ、僕達6人はそれぞれ──


コウタ → 『美術室の笑う肖像画』

タケル → 『段数が変わる階段』

ユウト → 『独りでに鳴る音楽室のピアノ』

カオリ → 『旧校舎3階の女子トイレの花子さん』

ケイタ → 『理科準備室の動く人体模型』

タクマ → 『プールで足を引っ張る何かの手』


 ──と言った具合に、1人が1つずつ計6()()を発表したのだ。

 最後の1つはどうやっても、見つからなかったからだ。


 僕は何かの間違いかと思い、一応グループの代表として先生や他の生徒にも訂正を入れておく。



コウタ「あの、僕達は6つしか見つけられていないので、7つじゃないです」


先生「……? ちゃんと7つ発表してたわよ?」


生徒「そうだよ! 7つちゃんとあったよ」



 ますます訳が分からない。

 こういうのが苦手なケイタは顔色が悪くなってる……


 クラスの他の子も口を揃えて、7つあったと言う。

 そこで、僕は先生に聞いてみた。



コウタ「あの、僕達1人につき1つしか発表してません。

 7つ目の発表って誰がしたんですか?」



 その質問で教室の空気が凍りついた。



生徒「た、確かに……でも、ホントに7つあったよ!?」


生徒「やめてよ! 怖いじゃん!」


先生「私も誰が発表したか分からないです……」



 教室中にじわじわと恐怖が伝染していく。

 泣き出す女の子、パニックになる子、もう教室の中は阿鼻叫喚だ。



先生「皆さん! 落ち着いてください! 大丈夫です!

 気分が悪い子は保健室へ行ってください。

 大丈夫な子は手伝ってあげて!」



 授業は途中で中断となり、早退する生徒も数人いた。

 担任の先生も職員室に戻って行き、残った生徒は自習となった。


 この自由研究の発表は2限目だったのだが、担任の先生から大事を取って、このクラスの生徒は午前中に帰宅する事になった。


 ◇


 帰りの会が終わると、僕達6人は職員室に呼ばれた。

 もしかすると怒られるのかもしれないと、6人で落ち込みながら職員室に向かった。



コウタ「あの……その、ごめんなさい」


先生「あなた達の自由研究はよく出来ていたわ。

 だから心配しないで、怒ったりしません。

 でも、この事はこのクラスだけの秘密にできる?」



 6人とも声が詰まって、ただ頷くだけで答えた。



先生「よし! じゃあ気を付けて帰ってね。

 明日また会いましょう!」


6人『はい。先生さようなら』



 僕以外が職員室から出た後、僕はずっと気になっていた事を先生に聞いてみた。



コウタ「あの、先生……

 最後の七不思議って、結局何だったんですか?」


先生「あぁ、えっと……気になる?」


コウタ「……はい」


先生「あのね……」



 先生は僕に教えてくれた。

 最後の七不思議は──


『深夜に階段の踊り場で、鏡の中に映る自分に挨拶すると霊界に連れ去られる』


 ──と言うものだった。


 翌日、全校集会にて学校についての七不思議や階段について調査したり、検証する事が禁止された。

 名目上は調査をする時に危ない場所に入らないようにする為、という感じだった。


 ◇


 大人になった今、僕は母校である小学校で教師として働いている。

 学校で務めていると、ふとした時にあの時の事を思い出す事がある。


 今では誰かのイタズラだったのかも、とも思う。


 ただ──


 階段の踊り場にあった鏡は、今でも取り外されたままだ。




読んでいただきありがとうございます!


軽めのスナック感覚で楽しめるライトなホラーを目指して書いてみたのですが、いかがでしたでしょうか?


評価や感想などを書いていただけると、今後の参考に出来るので、どうぞよろしくお願いします。


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