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勇者、荒縄が好き。  作者: ならない目覚まし時計
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使命を背負って。

特に何も考えず書き始めました。

更新はおそいです。

俺は昔から痛みに強かった。

いや、正直に言おう、痛みが好きだった。


2歳の時、転んでは足を擦りむいてニコニコしていたらしい。

5歳の時、蟻塚に腕を突っ込んで噛まれるのを楽しんでいたのを覚えている。

7歳の時、出会ったエルフの女性に土下座して尻を叩いて貰っていた。

10歳の時、村に来ていた剣士のおじさんに修行という理由でボコボコされて喜んでいた。

12歳の時、荒縄と出会い、あらゆる縛り方をマスターした。

15歳の時、村の皆が結婚相手を探す中、その嗜好が災いし村中の女の子から冷たい目で見られたのが嬉しかった。


そして17歳になって半年が経った日、夢の中で神らしき人物が話しかけてきた。


「ほっほっほ。アルクスタット君じゃな?今代の勇者は君じゃ。君の使命は一つ、魔王を倒すことじゃ。頑張るんじゃぞ。」


俺は勇者になった。

世界を守るものだ。


勇者の逸話は数多くあるが、おおよそ200年に1度、魔王の覚醒と共に勇者も覚醒し、魔王を倒すものらしい。


その多くは魔王と相打ちになるという。

何という過酷な運命。

俺は世界を守る使命感よりも、その過酷な運命にゾクゾクしてしまった。


翌日、俺はすぐに旅に出ることに決めた。

勇者は魔獣を倒し、己を鍛えねばならぬからだ。


友達は皆結婚しているし、定職が無く未だ親の手伝いをしているのは俺だけだった。

正直、村を出るにはいい機会だ。


「父さん、母さん。今までありがとうございました。どうやら俺は勇者になったみたいです。本日より旅に出たいと思います。」


農具の準備をしている父、朝食の支度をしている母。

2人ともチラッとこちらを見てため息を吐く。


「ほら、朝ごはん早く食べない。」


いつも通りに振る舞う母。

息子が過酷な運命に立ち向かう旅に出ようというのに気丈な事だ。


「はい、いただきます。」


俺は最後になるかもしれない母の料理を堪能する。

朝焼いたパン、野菜のスープ、昨日の残りの干し肉だ。

涙が出そうになるが堪える。


しっかりと時間をかけて食べ終えた。

父さんは先に食べ終え、もう仕事に出かけている。


「ごちそうさまでした。」


自室で剣と荷物を取り、寝室で未だ寝ている妹の顔を確認する。

昔はお兄ちゃんお兄ちゃんと後ろをついてきていた可愛い妹だ。

身内ながらに中々に器量良しだと思う。

そんな妹も今年で13歳。

もうそろそろ結婚も考え始める歳だ。

決まった相手はまだいないみたいだが……、花嫁衣装みたかったな。


寝室の扉をそっと閉じ、居間を抜け、玄関に向かう。


「いってきます。」


母がいつも通りに振る舞っているのだ。

俺もいつも通りに玄関を出よう。


こうして俺は家族に胸のうちで最後の挨拶をし、最初で最後の旅に出かけた。


まずは王都に向かう。

冒険者ギルドで情報を集めるためだ。

可能なら王にも御目通り願い上奏させていただければ幸いだろう。


さて……、肩にかけた巻いた荒縄をかけ直し、村をでる。

この先どんな痛みが俺を待っているのか……、楽しみだな!


1週間後、居なくなった俺に気がついた両親が村中を探し回る事になるのを俺は知らなかった。


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