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蒼い花は転生者。  作者: 初の樹
深緑を屠るモノ
5/6

花に転生しました






気付いたら、花でした。





いや、落ち着こう。落ち着け。

サクッと背後から刺され、罪悪感とかこうどうしようもならない感情とか理不尽とか何が正解だったのかとか幼馴染みが無事なのかとかていうかこれだけ一生分まさしく一生をかけた幼馴染みにあの後なにかあったらマジで怒るとか。


そーいう感情?は置いといて。そう、ステイクールだ。すていくーる。落ち着け、着地しろ思考。


目?じゃなくて。身体全体が視覚の様な全方位が見える。あっ、動ける。


なんか自分が魂の様な球体だけに成っていて。うっしゃ、行こうと思って駆け出す(脚はない)けど、なにか薄い膜の様なモノに阻まれて一定の空間でしか自由に動けない。


ん?と思って周囲を見れば、一面が白銀色に染まっていて。ぼくの中心であろう花は蒼い。



深い海の様な、夜明け前の闇の様な、昏い深い蒼色。白銀に染まらず、ただ蒼く。



ぼくの自由を縛るこの薄い膜の中心はこの蒼い花だ。

どうやらこの蒼い花からは離れられないらしい。諦めて、球体をその蒼い花に戻す。


白銀色に染まっている周りは、どうやら一種の花の群生のようだ。

よく見ればこの蒼い花も白銀色の花も同種。なにかの突然変異の個体か?


だとすれば、ぼくも何かの低い確率で偶々花に宿っただけか?しかも花に?



永遠とここで暮らすのはごめんだな。




ならやるべきことは一つ。





ぼくを縛るモノをぶっ壊せ。




蒼い花から出て、球体の形をとる。で。


勢いを付けて膜に突進した。音も無く弾き返される。まだまだぁ!!



何日も何日もぶつかり続けた。この魂?だと疲れが来ない。時間も定かじゃないけど、いつかはきっと。



数ヶ月後は、もう無意識でぶつかることが出来るようになった。ぶつかりながら意識を他に当てることが出来る。コツは、リズム良くぶつかることで振動が伝わる間隔を一定にすれば慣れる。



ある時から少しずつ痛みを感じ始めた。肉体的なものじゃなくて、そう魂ごと擦り減っていくような、自分という意志が無くなっていくような。



そろそろやばいかもな、と思い始めた。このまま続ければ必ず近いうちぼくは消滅すると本能で判ったから。



それでも。止めることはできなかった。事故、怪我、いやもうあれは運命かもしれない。そんなものに散々自由を縛られた前世。

幼馴染みもそうだ。ぼくのせいで幼馴染みにも自由が無かった、たとえ、望んで入った籠だとしても。



とっとと自由を寄越せ、この野郎。訳も無く悪態を吐くほど、ぼくはこの状況が嫌だった。


自分で自分の自由が奪い取れないぼくが嫌だった。




「そろそろ止めい、人の子よ。それ以上は世界からも抹殺されるやも知れん」




えっと、………誰?もしぼくの自由を阻んでいるなら、とっとと解放しろ。




「儂は大樹じゃ。ほれ、人の子よ。上を見てみぃ。頭上に有るは葉だが、それ全て儂の葉じゃ。ここは深緑の森。森、と言ってもそれなるものは儂だけじゃがのう」




大樹……?上を見上げれば茂った葉が見える。えっ、ここ森だったんだ。




「人の子の周りに咲いているはクロノス。白銀色で綺麗じゃろう?人の子は、そのクロノスに宿った魂じゃ。

それだけ蒼が濃いならば、もしやと思っとたが、やはり人の子か。常ならば小さき魂しか宿れんはずだがここは儂の所為か魔力が濃い。宿った魂はその魂消えるまで花は枯れること無く咲き続ける。故に、永遠と咲き続ける。お主のように、自ら消滅するような真似をしなければな」




…………大樹、様?この森はこの白い花と大樹様以外いないのですか?




「うむ、この葉全て儂であるが故、この森構成するは儂とその花のみ。魔力が濃いからその花以外生き続けられんのじゃろうて」




話を纏めると。


まず、ここ森。マジで?


いるの(ぼく)と大樹様だけ。


えっ、森じゃなくない?森って、木が多いから森なんだよね?



「人の目から見れば、森に見えるのじゃろうて。人の子は大半過去しか振り返ることが出来ぬ。森という言葉に込められている意味など人の子、いや生きるモノらにはあまり関係ないのだろう。言葉とは己の意志さえ伝えればいいものじゃと思っているものが殆どだからのう」




見に見えるものが全てではないと気づいているのに、それが出来ない不甲斐無さ。

ぼくもそうだ。



「そう卑下するない人の子よ。大半が、と言うとるじゃろうが。人の子はものを真から見れる眼をもう持っとるじゃろうて」




ぼくにもう眼はありません。前世のぼくならともかく、今の鬼火のような身体?に眼なんて、ない。




「人の子はどうして己自身を貶すのじゃ?儂の話をしゃんと聞けぃ。人の子は、もう人として生きていくことは出来ぬ。魂が縛られて居ないならば、儂が身体を生成して魂をちょちょいと結び儂の元から出すこともできたろうに」




縛られている?ぼくを縛っているのは大樹様じゃないんですか?


自由を。自由を。ぼくがこんなにも自由に憧れていたなんて気付きもしなかった。きっと幼馴染みを巻き込んでいるのに、ぼくだけが自由を望むのに無意識で罪悪感を背負っていたんだろう。




「人の子が縛られているはその花よ。ソレは魂が宿ると呼び名が変わるのじゃ。名はカトロス。カトロス……、それこそがクロノスたる所以であるが故に、カトロスとクロノスは時を司るんじゃ。まぁ、詳しい説明は省くとしてじゃな。人の子よ、カトロスもクロノスも魔力が濃い場所でしか生きて行けぬ。そうなるように創られたからじゃな。クロノスは、魂を閉じ込める為に創られた花、女神の花じゃ」




っえっと、ぼくの本体はこの蒼い花、なのか?ぼくは結局又縛られていかなければならないのか?


………………ふざけるな………、ぼくが何をしたっ!?


ぼくが、ぼくが今までどれだけ周りの人たちに迷惑をかけたか、それさえも自身で不意にしてしまった。

縛られて囲われて。


幼馴染みを助けることも出来なくて。最後に事実だけ伝えて。

女々しいことぐらいわかってる。それでも、前世全てを振り切って。


やっと、自由に(・・・)になれると、今度こそはって思ったのに。



思考が熱を持ち、理性をドロドロに溶かして形を失くす。

ぼくの心が荒れてるからか、大樹様からの声は届かなくなった。




少しづつ、熱が引いていき頑張って理性をギュッギュッと詰め込み直す。本当に落ち着いて、もう大丈夫と思った時。





「落ち着いたかのう、人の子よ」





あっ、大樹様。大丈夫です。少しだけ奥で憎悪振り撒いてますけど大樹様ご本人にご迷惑は掛けないので大丈夫です。少し、かな…………?






「まぁ、感情は生きるモノらの特権よのう。して、話の続きだが。カトロスは花じゃが、人の間では魔物扱いじゃ」





ただの花なんですけど……?





「それじゃよ、それ。今意志を持っているじゃろうが。常たるは物に意志は宿らない、即ち魔物じゃ。儂かて、人の間では魔物じゃろうて」





クロノスは花で、カトロスは魔物。で、ぼくは魂のままクロノスに宿っている、と。







あれ、ぼく魔物?










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