今日から...
「小説家になろう」初の投稿作。
色々と駄目な所があるでしょうが、楽しんで書いていきたいです。
「しっかりしろ! 今治してやるからな!」
ああ、またこの夢か...
一体何回目だろう...
目の前の事実を受け入れられず、助かるはずもないのに助かると言ってしまう自分。
助かるはずもないのに助かると思い..いや、助かってほしいという思いに駆られるほどに大事なこいつは今まさに、俺に抱えられながらその生涯に幕を降ろそうとしている。
「...せい、ごめんなさい」
「謝るな、お前は何も悪くないだろ!」
腹部から流れ続ける彼女の血が声を発する力と共に失われていく。
それでと俺は微かな彼女の声を聞き届けた。
俺なら『治せた』。
でも今は『治せない』。
彼女のために力を捨てたことを今になって悔やまれる。
「せぃ..先生、何処ですか?」
俺の腕の中にいる彼女はそばにいる俺を探している。
その目から光が消えかかっており、もう見えなくなっているのが分かる。
空をつかもうとする彼女の手を俺は力強く握った。
ここにいると伝えるために。
「よかった。先生...あたし..先生にお礼を言いたかったんです」
やめてくれ。
お前がこうなったのは俺のせいじゃないか。
俺があんなことをしなければ、いや俺が存在しなければ、お前はもっと幸せな人生を歩めたのに。
お前の日々を、お前の未来を、お前の全てを奪ったのは俺なんだぞ。
だからお礼なんて言わないでくれ。
死ぬなんてやめてくれよ。
結局、俺は彼女のために何も出来なかった。
俺のせいで彼女は死んだ。
なのに俺は生きている。
やっぱり、彼女の懇願を無視してでも....
俺は死ぬべきだった。
「ハア、ハア...」
思い出したくも過去を夢に見た俺は目を覚ました。
目の前にあるのは今じゃ住み慣れたアパートの借りた部屋。
さっきまで寝てた安物のベッドとシーツは寝汗で湿っていた。
あんな夢を見たせいで嫌な汗をかいてしまった。
ベッド脇のカーテンを開けて窓越しに外を見ればまだ日が昇り出したばかりの早朝だった。
本当ならもう一眠りしたい所だが、汗で湿ったベッドに眠る気も起きず、久々に早起きすることとした。
汗で湿ったシャツを脱ぎ捨て、部屋に備え付けられたシャワーで汗を流した。
その後は冷蔵庫にしまっていた水の瓶を取り出し、喉を潤した。
冬場でもない限り水道の水では得られない冷たさが夢で不快だった気持ちを落ち着かせてくれる。
椅子に腰掛け、これからの予定をおさらいした。
そしてまた気持ちが凹んだ。
「めんどくせえ」
一言ぽつりと呟き、これから毎日こんな気分に浸らなければならないのかと思うと憂鬱で仕方ない。
壁にかけてあるおろしたてのカッターシャツを始めとした一式の服。
あれが俺のこれから着ていく服だ。
俺の憂鬱の原因...それは.....
「仕事、したくねーなー」
情けない声を出しながら俺は時間が近づくのを待った。
気づけば俺は寝ていて、初出勤だというのに遅刻する羽目になったのは朝日が昇り切った頃だった。