やっと村に着く。職場には着かない
トルマナ村に到着!!スマホも本もない状態での3時間は長かった!まぁ途中でサザムさんと話していたから良かったが、話題が尽きそうになってマジで焦ったわ。
「入村の受付をしまーす!こちらへ集まってくださーい!!」
声のほうを見ると20代くらいの女の人が声をあげている。サザムさんは慣れたように向かっていくので、カップルや家族連れの人も付いていく。出遅れないように俺も向かおう。
行くと役所の人と同じ制服を着た女の人が5人いて、ここで受付をするようだ。5人もいるので並ばずに空いてる受付に行く。俺の担当になるのは狸?の耳をした人だった。
「こんにちは、初めて村に来た方ですね。名前と来た理由を教えてください。」
「こんにちは、タダシといいます。転移でこの世界に来て、この村で農業をするように言われて参りました。」
「はい、タダシさんですね。連絡の書類は・・・あ、ありました。連絡は来ております。農業に適した魔法を持っているとのことですね。ようこそトルマナ村へ。家や支度金に道具などはすでに用意してあります。このまま私についてきてください。」
そう言って歩き出す受付嬢。って待ってくれ歩くの意外と速い!
村の中を見ながらついていく。道は広く民家は庭も広めにある。井戸の周りには奥さんたちが雑談しながら洗濯をしている。といっても盥に水を入れて魔法で洗ってるようだ。電気代がかからないのは利点だな。子供はチャンバラやおままごとをしている。ここらへんは日本とあまり変わらないな。大人の男があまりいないのは仕事をしているからだろう。大工や店の人くらいしか見かけない。あと村といっても意外と広い。何人の住人がいるのかは分からないが、聞いた通り寒村ではないようだ。
受付嬢が止まったのは他の家より少し大きい2階建ての家だった。
「ここは村長の家です。軽く挨拶と道案内のために連れてきました。では・・・」
受付嬢がドアをノックする。コンコン・・・
「はーい、今行きまーす!」
ドアを開けて出てきたのは10歳くらいの男の子だった。
「セシルくんこんにちは、村長に会いに来ました。通してくれる?」
「分かったよガーネットさん!どうぞ!」
ガーネットさんて言うのか。そういえば名前を聞いてなかったな。まぁたぶん覚えてもらわなくてもいいと思ったんだろう。気にしないでおこう。
家に入るといきなりリビングになっている。そこには70代くらい?のお婆さんがいた。この人が村長か。
「いらっしゃい、ガーネット。その人が新しい村人になる転移者ね。私はモラス。この村の村長をしておるよ。なにか困ったことがあったり面白いことがあったら気軽に来てね。暇だから話し相手になるよ。」
「こんにちは、タダシといいます。分からないことばかりなので何度か伺うことになるかもしれません。その際はよろしくお願いします。」
挨拶をするとモラスさんはにこやかに笑った。
「そんなに固くならないで大丈夫よ。仕事に関しては班長の人に聞けばいいし、他のことも近所になる人に聞けば大体は分かるからね。ただ他の人に聞けない、分からないことがあったり、この近くに来た時に寄ってちょうだい。力になれるかもしれないからね。
ガーネット、これからタダシくんを案内するんだろ?ここで無駄話で時間を潰すのはもったいないよ。行きなさい。ではまたね、ガーネット、タダシさん。」
「分かりました、村長。ではこれで」
ガーネットさんは軽く一礼すると出て行った。俺も軽くお礼を言ってから家を出る。
「ガーネットさん、村長って優しそうな人ですね。って名前で呼んでも大丈夫ですか?」
「名前は好きに呼んでください。それより村長が言ってたように早く家まで案内しますね。日が暮れたらめんどくさいので。」
めんどくさいって・・・まぁそうだよな。残業させたり女性を夜道で帰らせるわけにはいかないし。さっさと行こう。
ガーネットさんは今までよりも気持ち速めの歩きで行く。1時間も歩くと家がまばらに建っている区画に来た。そして平屋の木造の家の前で止まった。
「ここがあなたの家です。分かりやすいように表札に名前が書いてあるので確認してください。そして鍵です。無くさないようにしてください。それでは明日また来ますので、今日はここで失礼します。お疲れ様でした、おやすみなさい。」
そう早口で言うとガーネットさんは帰った。慌てて挨拶とお礼を言ってから見送る。そして表札を見るとタダシと書いてあるのを確認してから家に入る。鍵はかかってなかった。
「俺も一国一城の主か・・・なにもしてないけど。でも疲れた!まずは寝よう。飯はなぜか腹が減ってないからいいや!おやすみ!」
そしてそのままベッドに横になる。家の内装や用意してある道具とか金は明日確認しよう。そしてそのまま眠りについた俺だった。