収穫と評価
急いで昼飯を食った俺たちは畑に戻った。すでにレタスは収穫しやすくなっている。頑張ろう!
「やっ!とうっ!はっ!」
シゲルはどんどん刈っていき、俺はそれを収納していく。シゲルは慣れているので作業が早い。結果、俺は収納するために後ろをついてまわるだけになった。
「あと1/3だ!遅れるなよ!?」
「あぁ、すまん!後でなにかごちそうする!」
「気にすんな!どっちかと言うと初めての収穫なのに教えてない俺が悪いんだ!ラストスパートだ!行くぞー!!!!」
「おーーーーーっ!」
「「はぁはぁはぁ・・・」」
俺たちはなんとか3時までに収穫を終えた。息も絶え絶えだ。だがこれで終わりではない。次は納品だ。
「よし、俺は自分の畑に戻る。じゃあな。」
「ありがとう、助かった。またな。」
シゲルは呼吸を整えたらすぐに戻った。気にするなと言ったがお礼はなにかした方がいいだろう。シゲルがいなければこんなに早く終わらなかった。ガーネットと相談するか。
農業ギルドにやってきた。朝に収納バッグを借りたので本日2度目だ。中に入り納品の窓口に向かう。この窓口は初めてだ。
「レタスの納品と収納バッグの返却にきました。」
「はい、レタスですね。倉庫に案内します。案内の職員が来るまで少しお待ちください。」
イスに座って待つ。俺の後ろにいた人も受付が終わり、俺の隣に座る・・・ってアーチじゃないか!
「アーチ、お疲れ。そっちも納品に来たのか?」
「誰かと思ったらタダシか。タダシは何を作ったんだ?」
「俺はレタスだよ。旬のものだからそんなに儲からないと思うけどね。アーチは?」
「トマトだ。俺は旬のものではないから結構高めに売れると思う。だが数は少なくてな・・・これならわざわざトマトを作らなくても良かったかなって後悔をしてるところだ。」
「まだ値段は決まってないだろ?まずは待とうぜ。」
「そうだな。あー・・・やっぱり他の作れば良かったかなー・・・」
かなり落ち込んでる。これで値段が低かったらどう慰めるべきか。俺とアーチ、どっちも高く売れますように!
「タダシさん、アーチさん。6番倉庫に案内します。こちらへどうぞ。」
角がついた職員だ。あれは・・・羊の角かな?たぶん羊の獣人だと思う。それか悪魔か。
6番倉庫について行く。俺は収納バッグだがアーチは荷車で持ってきたので、アーチの荷車を後ろから押す。アーチは数はないと言ったがかなりの量だ。色つやも悪くない。俺とアーチは黙って歩き続けた。
「ではタダシさんはこちらにレタスを入れてください。アーチさんは荷車ごとここに置いてください。今から査定しますので。」
緊張の瞬間だ。俺は傷がつかないようにゆっくりとレタスを出した。アーチは・・・目をつぶって祈ってる。
並べ終わると職員は俺のレタスをランダムに3つ選び、1枚ずつ食べた。次にアーチのトマトも2つ手に取り、かぶりついた。俺のは葉が1枚だったのにトマトは丸ごとか。まぁ少しだけ食べるなんて無理だしな。
咀嚼が終わると職員は眼鏡を取りだして掛けると、俺のレタスを見ながらメモを取る。同じようにアーチのトマトも見ながらメモを取るとすぐに眼鏡を外した。
「査定が終わりましたので窓口に戻りましょう。」
俺とアーチは受験の結果発表を待つように祈っていた。頼む!高く売れてくれ!
「ではタダシさん、査定の結果を出しますね。タダシさんのレタスですが、魔法と手間をかけたのが良かったみたいですべてAランクの評価でした。ただ在庫はあるので少し価格は下がります。数は528個、1つ140カランなので73,920カランです。それでは収納バッグは返していただきます。」
やった!八百屋で見たがレタスは140カランだった。俺は納品の段階で140カランなので、店で売られるときはもう少し高くなるはずだ。
「全て買い取りでよろしいですよね?」
「あ、すいません、2個だけ持ち帰ります。家で食べるので。」
「分かりました。では126個なので73,640カランです。職員がレタスを2個持ってきますのでお待ちください。では次はアーチさん、こちらへどうぞ。」
俺は金とレタスを受け取るとイスに座って喜びを噛みしめた。初めての収穫での高評価に感動していた。昨日はゴミで大金を稼いだが、あれは二度と稼げないだろう。俺の農場にはもう石も木もないのだから。
だが畑は違う。これから季節が巡るたびに金を稼げる。ガーネットを食わしていける。大黒柱になれる。
日本では稼いでも自分の食い扶持しか必要なかった。一応貯金はしてたが未来への展望はなかった。これからは違う。ガーネットと生まれる子供を食わしていく。それが何よりも楽しみだ。
「タダシ、俺もやったぜ。かなり高く売れた。やったな!」
「あぁ、ちなみにトマトはいくらで売れたんだ?」
「1つ540カランだ。」
上には上がいるんだなぁ・・・
レタスを2つ持って帰る。ちょっと見た目は情けないが、このレタスは俺の努力の結晶だ。なにも恥ずかしくない。
家に着いた。両手が塞がってるので足でドアを叩く。しばらくするとガーネットが開けて迎えてくれた。
「ただいま。初めての農業で収穫したレタスだ。これでなにか作ってくれ。」
「おかえりなさい、あなた。サラダにするわね。お疲れ様。」
その晩の夕飯は昼から煮込み続けた肉と俺のレタスのサラダ、そして辛いハーブティーで楽しい食事になった。
ハーブティーはやめてくれ・・・




