潜入二日……プチ修羅場
「朝実さん、迎えに来ましたよ」
結界が張ってある、校舎に入り。薄紫 朝実が寝てる寝室の部屋のドアをノックする、少し待ったが返事が無いので。
「開けますね」
そう言って部屋のドアを開け、中に入る。中は意外と物が少なく、少し見ただけでも洋服タンスにに机とイス。本棚と布団かけか無かった。
(隠れ家に近い感じだな)
薄紫 朝実の部屋は、何個かある隠れ家の雰囲気に似ていた。
(さて、どうやって起こすか)
部屋の隅に敷かれている薄いピンク色の花の模様をあしらった布団にくるまる様にして、スヤスヤと寝ている薄紫 朝実をどう起こすか。
(蹴り若しくは、殴る…、流石に酷いか?)
暫く考えても、影霧 詩音での起こす方法が思い付かなかった。暗殺者としてなら。そもそも起こす必要が無く、眠らせる方が得意であり。今まで誰かを起こすのは、ある人以外いなかった。
(撃つか)
黒い拳銃から実弾を抜き、空砲に代えて引き金を引く。
ダーン
「ひょわい!!」
音に驚き、薄紫 朝実が飛び起きる。そして、辺りを見回した後。状況を理解できないのか、「にゃにゃ?」と首を傾げて呟き。また、布団に潜ろうとする。
布団に潜ったのを確認して、今度は二回空砲を撃つ。
「ひょにゃい!」
(あっ…ひょわいと、にゃにゃが混じった)
今度こそ目が覚めたのか、飛び起きると。寝間着用の和服擬きの前を直し、胸を隠すと。
「おっ、御早う御座います」
「御早う御座います、朝実さん」
顔を赤くしながら挨拶をしてきたので、笑顔で挨拶を返す。
「少し待ってください……そうでした、今日から私も授業に出るんでした」
そう言うと、真っ直ぐに机に向かい教科書を取り出す。そして、そのまま固まった。
「どうしたんですか?」
「今日の授業内容が解りません」
「……、ああ、引き込もってましたもんね」
ももちゃんが、引き込もっりと言っていたのを思い出した。引き込もりと聴いた途端、薄紫 朝実が、悲しそうな顔をする。
「そうなんです。此所に入学したのも暗殺者から身を隠す為で、入学してから一度もこの校舎から出てません。なので、友達もいなくて……」
「あの双子は、友達じゃ無いんですか?」
「葵と蒼は、家族同然です。私の大切な義妹です」
はっきり言い切るが。友達がいない事を思い出したのか、また悲しそうな顔をする。
「大丈夫ですよ、今日からでも友達は出来ますから」
「そうですね。頑張ります」
その後、授業の準備をして校舎を出た直後。
「おはよー、詩音ちゃん。ずっと探してたよ」
何故か校舎前に琴音がいた。そして、少し遠くに三條 美和が此方に向かって走って来てた。
「私も詩音さん貴女の事を、探していたんですよ」
「でも、僕が先に見付けたから。僕が先に言うね」
「なっ?。何ですかそのルール、そんなルール認めません!……それより、その後ろの子は誰ですか?。見た事あるような顔ですけど」
三條 美和が。隠れる様に背中に隠れた、朝実を指差す。
「駄目だよ指差しちゃ。ほら恐くないよ、出ておいで」
琴音先輩がしゃがんで、手を前に出しながら言う。
「琴音貴女、犬じゃないんですから。その呼び方は、どうかと思いますけど」
「そうかな、あっ!。ほら、出てきたよ」
恐る恐る隠れいた背中から出てくる姿は、本当に犬の様だった。
「あれ、君もしかして薄紫 日向先輩の妹の朝実ちゃん?」
「あってます。あの、貴女は?」
「覚えて無いかな、紅 琴音だよ。紅 椿の妹の、昔よく姉同士がケンカしてた時にいた…」
「もしかして、ねねちゃん?」
「そう!。ねねちゃんだよ、懐かしいなその呼ばれかた」
「ねねちゃん、本当にねねちゃんだ!。懐かしいね、何年ぶりだろう」
その後も、あの時はどうだった。あの時は大変だった、等昔話に花を咲かせていた。
「あの~、盛り上がってる所ろ悪いんですが。私にも紹介して貰って良いですか?」
申し訳なさそうに、三條 美和が会話の花をつむ。
「ああ、ごめん。此方薄紫 日向先輩の妹さんで、薄紫 朝実ちゃん。学年は僕らの一つ下の一年生だよ。っで此方が、三条 美和ちゃんで、僕と同級生の元不良」
「元って何ですか!あれは、その…えっ、演技です。そう演技でしたのよ……朝実さんでしたっけ、そんなに脅えないで下さい。取って食べたりしませんから」
「私に、泣いて謝れば許して上げます。って、言ったの三条先輩だった気が」
「詩音さん!、何でこのタイミングで。ほら、凄く脅えちゃったじゃないですか!」
そこには、琴音先輩に抱きつく様にして全身を震わせている。薄紫 朝実がいた、その姿は脅える子犬の様だった。
そして、その頭を。いいこいいこしている、琴音は飼い主の様だった。
(朝実って、こんなキャラだっけ?。昨日はもっと違う感じがしたんだが、気のせいだったか)
そんな事を思いつつ、授業の事を思い出す。
「さて。授業に遅れますので、朝実さん行きますよ」
そう言って、朝実の手を握ると。
「「その事で探してたん」だよ」ですわ」
琴音と美和が同時に言う。
「その事って、今日の授業の事です?」
「「そう今日の授業」だよ」ですわ」
また、二人同時だった。琴音と美和が一度御互いを見た後、美和が小さく頷く。それを見て、琴音も小さく頷いた。
「じゃあ、先に話すけど。今日の最初の授業何だけど、一年生と二年生合同なんだよね。それで一年生と二年生の交流を深めるって事で」
「そこからは私が。交流を深める目的で、一年生と二年生でチームを組んで模擬練習及び練習試合を行うんですの」
「それでね、もし良ければ僕とチームを組んで欲しいなって。お願いしに来たんだよ」
「あっ!、何で先に言いますの!。詩音さん、琴音じゃ無くて。私と組んで下さいな」
二人して手を前に出してきた。どう考えるか、どうするか考えていると。
「あっ!。噂の新入生いたー!」
「えっ、ウソ!。本当だ」
その声を聞いたのか、沢山の女子生徒が此方に向かってきた。
「不味いみつかちゃったね」
「不味いですわね」
「何か、不味そうですね」
上から、琴音、美和、朝実の順で言う。
「何で向かって来てるんですか?」
「それは、皆詩音ちゃんとチームを組みたいからだよ」
「そうですわ、あれ殆ど二年生です…何故か三年生もいるみたいですけど」
「何と無く占ってみたら、詩音ちゃんに女難の相が出てました」
「……それって、チームを組まない事って出来ませんか。若しくは、一年生同士でも」
「残念だけど、一年生と二年生同士じゃ無きゃダメなんだ」
「そうですか、なら逃げます」
そう言って、朝実をお姫様抱っこする。
「詩音ちゃん!、何でお姫様抱っこ?。それに、逃げるって。あれ、チームの返事は?」
「ちょ!、お姫様抱っこ。羨ましい…じゃ無くて。返事は、返事を下さい」
「すいません、今チームを組むのは考えていませんので。では、失礼します」
そう言い残して全力で走る。後ろから、逃げた、あっちに行って先回りして、等の叫び声が聞こえた。
「この辺で隠れる所、若しくは結界を張れる場所ありません?」
お姫様抱っこしている、朝実に聴くと。
「そ、それなら彼処に」
そう指さした方角には、本校とは違う校舎があった。
「解りました。取り合えず彼処に逃げます」
「あの、何で私をお姫様抱っこしてるんですか?」
「簡単な事ですよ」
そこで、影霧 詩音の仮面を取り答える。
「取り引きしただろ、あんたを守るって」
校舎が近付いて来たので、仮面を被り直す。
「一度取り引きしたら必ず守りますから」
「解りました、なら必ず守って下さいね。私も守りますから」
「お願いしますね」
そう言って、見知らぬ校舎の中に入った。入る際中等部本校と書いてあったが、その時はあまり気にして無かった。