守護精霊との契約②
守護精霊との契約するか、一歩前に出た葵が答える。
「私は守護精霊と契約しない」
そう言った葵に、聖騎士大隊長が睨みながら訪ねる。
「その理由を教えてくれるか?」
聖騎士大隊長の声には、僅かながら殺気が含まれていた。葵は、殺気が含まれている声に動じずに答える。
「私は葵様を守ると誓っている。もし今の戦い方が変わって、葵様に何かあったら、私は私を許せない」
暫く無言で葵を聖騎士大隊長が睨むが、その意思が代わらない事を悟り頷く。
「他に守護精霊との契約をしない奴はいるか?」
「私し……」
蒼が一歩前に出様とするが、葵が手で止める。
「蒼は蒼の信じた事をしなさい」
そう言いながら、葵は笑顔を浮かべる。
「葵姉さん…」
「蒼頑張る強くなったら、今度は私が強くなるから」
笑顔で葵が言うと、蒼は頷き姉と同じ様に笑顔を浮かべた。
「仲の良い姉妹だな」
聖騎士大隊長が小さな声で亡霊に言う。亡霊は黙ったまま葵と蒼に近付く。
「もし、守護精霊との契約がしたい時俺を呼べ。呼ぶ時はこれを使え」
そう言いながら葵に、一枚の札を手渡す。そこには、見た事がない文字が書かれていた。
「おう亡霊、然り気無く俺を無視すんじゃねえ。他に契約しない奴は、……いなさそうだな。
よし、亡霊始めろ」
「お前が仕切るな。葵以外は横に一列に並べ。後言っておくが、一度で守護精霊と契約出来ると思うな。
智莉、万が一の為に結界を頼む。それとチャシャネコ、ここにいる奴以外に人の形をした者が現れたら、殺しても良いから無力化してくれ」
「チャシャネコさん了解だよ」
「兄様、結界は十二重ねで良いですか?」
チャシャネコが何時も道理の笑顔で頷き、智莉が亡霊に訪ねる。
「十二重か、三枚増やしてくれ」
智莉は頷くと、十五枚の違う効果をもつ結界を一瞬で詠唱し、部屋を覆う様に展開する。
「……うそ、あの一瞬で……凄い」
朝実が智莉が一瞬で結界を十五枚も重ねてはったのに驚く、朝実ですら十枚はるのには時間がかかる。それに、違う効果をもつ結界を重ねてはろうとすれば、更に長い時間が掛かる。
「兄様はり終わりました。一応七枚重ねで後八つはっておきました」
亡霊が智莉の事を見ると、少しだが智莉の顔に疲れが出ていた。安全を考え自分の限界の量の結界をはった智莉の頭を、亡霊が優しく撫でる。
「あ、兄様!?」
智莉が驚きながも、顔を紅く染める。そんな智莉を見て、チャシャネコが智莉を亡霊から引き離す。
「チャシャネコさんも、智莉っちを撫でててあげるよ」
チャシャネコに強引に亡霊から引き離された智莉は、何処か残念そうな顔をしながらもチャシャネコに頭を撫でられていた。
「あいつら………さて、始めるぞ」
亡霊がそう言いながら、特殊な紙と文字で出来た札を人数分取り出し真上に投げる。そして、札にナイフで切った指の血を飛ばして着けると、札が燃え付き灰になり琴音達に降り注ぐ。
「さて、蛇が出るか鬼が出るか」
亡霊がそう言った瞬間、辺りが光に包まれた。
「ここは何処?」
光が収まると白い空間が目の前に広がっていた。琴音が辺りを見回すと、そこには亡霊が一人で立っていた。
「詩音ちゃん、他の皆は?」
「ここには居ない」
亡霊はそう言いながら、琴音の後ろを指差す。琴音が振り替えると、そこには赤い色の鳥が飛んでいた。
「不死鳥か、高位の精霊だな」
「フェニックス、この子が僕の精霊?」
琴音がそう言うと、フェニックスが一度大きく羽を動かす。琴音がフェニックスに向かって手を延ばすと、フェニックスが羽ばたいて琴音の腕に掴まる。
「契約成功だな……どうやら、琴音が最後だった様だな」
「僕が一番最後か、他の皆は契約出来たの?」
琴音がそう言うと、亡霊は小さいながらも縦に頷く。ただ、その顔は喜んでいると言うより、何か重大な見落としている事を見付けようとしている様だった。
「詩音ちゃんは、皆が契約出来て嬉しく無いの?」
琴音がそんな顔をしている亡霊に言うと、亡霊が少しだけ笑う。ほんの一瞬だったが、亡霊の笑顔を見た琴音の顔は、茹で蛸の様に紅くなった。
「俺も嬉しいですよ、手間が省けますから。でも、全員が契約出来るのは可笑しいんですよ」
「可笑しいってどうして」
琴音が首を捻る。
「二人以上で契約した場合、必ず一人は契約出来ない。理由は守護精霊どうしが干渉して、邪魔をするからな。
複数で契約すれば、契約出来る確率が上がるけど。必ず一人は落ちる筈なんだ」
亡霊がそう言いながら、何かに気が付いて険しい顔になる。
「精霊との契約が全員出来る。そして、琴音が契約したのに空間が何時までたっても壊れない。………いるんだろ、出てこいよ。影花!」
亡霊が影花と言った瞬間、今まで白かった空間が闇に染まる。その黒さは、光を一切通さない黒さだった。
「お久しぶりですね、私が認めた私の愛しい人」
闇の中から声が響く、その声を聴いた琴音が震える。
「あの闇落との時か、琴音達に目印をつけてたのか。俺が守護精霊との契約のさいに、この空間に来るのを見越してか」
「熱い歓迎ですね。嬉しくて涙が出そうですよ」
影花の喉元にはいつの間にか移動していた亡霊が、ナイフを突き付けていた。
「そうか。なら熱い歓迎のお礼に、琴音をあっちの世界に戻してやれ」
亡霊がそう言うと、琴音の方を影話し合っている頑張る見る。見られた瞬間、琴音の身体を恐怖が襲い震える。
だが、フェニックスが影花の視線を遮ると。琴音の身体の震えが止まり、影花と亡霊の会話が聞こえる。
「えっ、詩音ちゃんはどうする気なの?」
影花と亡霊の会話を聴いた琴音が、思わず詩音に向かって叫ぶ。聴こえてきた二人の会話だと、詩音はこの空間に影花と残る事になっていた。
琴音の叫びに、亡霊は首を横に振ると琴音を見ずに喋る。
「智莉に伝えといてくれ、悪い約束守れそうにない。それとチャシャネコには、次に会ったら……いや、チャシャネコなら大丈夫か。
暫くお別れだな、次会うときはさて覚えていないだろうが。影花約束だ琴音をあっちの世界に戻してくれ」
「愛しい人の約束ですから、それに邪魔者はいらないです」
影花が亡霊だけを見ながら手を振る。影花が手を振ると、琴音の身体が光に包まれ浮かび上がる。
「ああ、そう言えば闇落としの時の報酬を貰いますね」
光に包まれ動けず声すら出せない琴音の耳に、影花の声が聴こえる。直後、琴音の身体は光になって消える。
「琴音さん、何処か変な所は無いですか?」
目を開けた琴音の前には、桃木が心配そうな顔をして立っていった。すぐに詩音の事を確認仕様とするが、身体が重くその場に倒れる。
「無理はしないで、身体を休めなさい。守護精霊との契約は体力と、魔力をかなり使いますから」
桃木は先生として、琴音に接する。その事に、琴音が安心して口を開くが。何かを言おうとして固まる。
(あれ、僕は何を言おうとしたんだっけ)
思い出そうとする琴音だが、そんな琴音の名前を誰かが呼ぶ。
「琴音先輩、大丈夫ですか?」
名前を呼ばれ顔を上げると、そこには心配そうに自分を見ている詩音がいた。
「詩音ちゃん、あれ?」
詩音を見て琴音が違和感を覚える。目の前にいるのは確かに詩音だが、何かが違うと心が訴える。
「姉様結界を解きますね」
智莉が詩音に言うと、詩音が頷き智莉を優しく撫でる。その光景は、仲の良い姉妹の様子だった。
「どうやら、無事に全員契約出来た様だな。流石は亡霊だな、女じゃ無ければ風呂に入りながら酒でも酌み交わすんだがな」
聖騎士大隊長がそう言って詩音を見る。詩音は嫌そうな顔をして、聖騎士大隊長から距離を取った。
(あれ、今可笑しな事を言ったよね?)
何が可笑しのか分からなかったが、琴音は暫く考えて考えるのを諦めた。




