誰も死なせない。殺しの依頼の真実
「おい!、何でこんなにいんだよ」
廃協会の一番広い部屋で、正騎士のトップである正騎士大隊長が叫ぶ。今この廃協会には、依頼主である正騎士大隊長とその部下が一名。
依頼を承った亡霊と、手を貸した妹の智莉とチャシャネコの三人。
それに、標的であった琴音、美和、朝美、葵、蒼、雪の六人と。付き添いの桃木桃と部下零の二人。
一応廃協会で一番広い部屋なので、十三人集まっても余裕があるが。
「多いいだろうな。今回の関係者と、二名おまけがいるからな」
亡霊がそう言う。その顔には無地の黒い仮面を着けており、男子の身体に戻っていた。
「五月蝿え!、何で連れてきたのか聞いてんだ!!」
「俺の説明の手間が省ける」
悪びれもせずに答える亡霊に、正騎士大隊長が大きな溜め息を吐く。そんな二人のやり取りを見ていた桃木が、口を開く。
「私達は待ってるんだが?。さっさと、説明を始めたらどうだ」
その声には怒りの感情があった。その感情に、正騎士大隊長の部下が反応する。
「分かった、分かった。説明するから怒るな、情報屋」
片手で部下を止めながら、正騎士大隊長が話し始める。
「最初に言っておく、ここでの事は誰にも言うな。それと、そこの六人に謝っておく、悪かったな」
正騎士大隊長が謝りながら、頭を下げるが。六人はポケっとしたまま動かない。
そんな六人の元に、刀から人の姿になった黒姫が向かう。
「固まってるでありんす」
「余りの事に思考停止したか」
「まあ、無理も無いだろ。私ですら理解が追い付いていないんだから」
「チャシャネコさんも分かんないよ」
桃木の言葉に、チャシャネコが頷く。そんな二人を見ながら、亡霊が溜め息を吐く。
「どっち道、俺の事を言わなきゃいけないのか。黒姫そいつら叩いとけ」
「分かったでありんす」
黒姫がポケっとしていると六人を、順々に亡霊に投げ渡されたハリセンで叩いていく。
最後に琴音を一回余計に叩き、黒姫が満足げに亡霊の元に戻って行く。黒姫のハリセンに叩かれ、固まっていた六人が動き出す。
「「朝実様、痛くないですか?」」
「ちょっと、痛かったです」
「何で私こんな所にいるんですの?」
「私だけ脚叩かれた……?」
「何で僕だけ2回なの?」
其々が動き出したのを確認して、亡霊が智莉の肩を優しく叩く。兄が肩を叩いた意味を悟り、智莉が六人に話し掛ける。
「皆さん、何かを質問があれば答えますよ。ただ、一人一回で。同時に言われても分からないので、手をあげてからお願いします」
智莉の優しい口調の所意か、琴音達(主に琴音と美和)が質問攻めにする事は無かった。
最初に手をあげて質問したのは、以外にも蒼だった。
「そこにいるのは、正騎士大隊長ー」
「おう、そうだぜ」
正騎士大隊長が笑顔で答える。何故かその手には、酒の瓶が握られていた。
「正騎士大隊長って、……何で私ここにいるんですの?」
美和が頭を抱えて踞る。そんな美和を無視して、朝実が手をあげる。
「えっと、正騎士大隊長さんがいるって事は。依頼を出したのは、正騎士大隊長?」
「そうだぜ、俺だぜ」
「勝手に酒飲んでんじゃねぇ!」
「ゴフ!」
酒を瓶に口を着けて飲んでいた正騎士大隊長は、亡霊が投げたハリセンによって倒される。
「あの、何で私ここにいるんですの?」
いまだにどうして、自分がここにいるのか分から無い美和がそう尋ねる。
「それは、俺が呼んだから」
「そうでしたは、詩音さんに言われたって言われて……詩音さんは?」
「俺が詩音だけど?」
「そうでしたは。詩音さんは亡霊で男だったんだですわよね」
「そうだけど?」
亡霊が詩音の声で言うと、美和は亡霊を見て小さく悲鳴をあげて、琴音の後ろに隠れる。
「お前は、朝実か!」
亡霊が思わず美和に突っ込む。美和は琴音の後ろで、黒姫に頭を撫でられていた。
「亡霊は怖くないでありんす」
「わかっていますわ。でも、まだ馴れないんですの」
亡霊それも、本来の男性の姿の亡霊からは、僅にだが血の臭いと殺気が漂っていた。
『私から、質問良いですか?』
雪が紙に書いた文字を、全員に見せる。そして、全員が見たのを確認して質問を書く。
『あの時、あの襲撃の時。詩音は何を私達にしたんですか?』
その雪の質問に、殆ど全員が一斉に亡霊を見る。亡霊は一度正騎士大隊長を見た後、喋り始める。
「俺が承た依頼は、誰も死なせない殺しの依頼。この依頼の意味は、過去の標的の心の闇を殺す事。
それも、今の標的を殺す事が無い様に」
「それで、過去を見せられたんですの!」
琴音の後ろから、黒姫に抱き付いている美和が叫ぶ。黒姫は、疲れて寝ている所を美和に抱かれていた。
「そうだぜ。ただ、この過去を見せる事は誰でも出来る。だが、それに干渉する事はこいつ以外いない。
なあ、悪夢」
「悪夢だと!」
正騎士大隊長が、悪夢と言った瞬間。桃木がその名前を叫び、亡霊を見る。
「君が私に教えなかった二つ名前はそれだったか」
桃木が顔を引きつりらせながらも、亡霊を見続ける。
「悪夢ってなんですのって……何で雪さんも隠れるんですの?」
悪夢と聞いた瞬間から、雪は気配を消して琴音の後ろに、美和と同じ様に隠れたいた。
「雪大丈夫だ、俺は悪夢にはならない」
「でも、怖いです。その名前は…」
雪が震えながら喋る。暗殺者にとって悪夢と言う二つ名は、死神以上の恐怖の対象でもある。いくら襲われないと分かっていても、本能が逃げようする。
「何かグダグダになってきたが、話を戻すぞ。過去の心の闇を殺す。これを簡単に言うと、過去の自分を知り己を知る事。
その上で昔の自分と決別し、新たな自分に生まれ変わる事。だから、過去の標的を殺すが、今の標的は殺さない。誰も死なせない、殺しの依頼の真実」
「では、何故そんな事をする必要が」
葵が手をあげてから、質問する。
「それは、お前らに強くなって貰う為だ。亡霊と情報屋二人にも言っておく、今回の正騎士を決める大会だが、間違いなく荒れる。
俺らも死者を出さない様に動くが、参加者の自身の強さを上げ。自衛の出来る確率を上げる方が、死なない確率が高いからな」
「私からの質問だ、何故学園を襲撃した。生徒や先生方に被害は無かったが、私に教えずに襲撃した理由が知りたいが?」
桃木が亡霊を睨みながら言う、亡霊は一度アクビをすると答える。
「誰も死なせない殺しの依頼に使う、過去に行かす事を闇落としって言うんだが。
これは、本人が知ってると出来ないし。命が掛かった状況じゃないと、上手く過去に落とせない。
邪魔が入らず、誰にも知られず、命が掛かった状況。この間三つの条件を満たすのが、誰にも言わずに学園を襲撃して標的のみを誘導するのが楽だからな」
悪びれもせずに言う亡霊に、桃木が舌打ちで返す。
「ももちゃん、確り先生してるな。悪かったよ。
でも、何も起きない様に此方も準備してた事に当たった」
「そうです、兄様の作った騎士型の、それも魔法付与のゴーレムも持ってきましたし。万が一と応援も予て、チャシャネコさんにも御願いしましたし」
「そうだよ。御願いしされたし、家族だからね当然だよ♪」
チャシャネコが笑顔で答えて、智莉も笑顔で頷く。そんな中、亡霊が喋らない琴音に近付く。
「どうした?、喋らないが」
そう言いながら、亡霊が琴音の顔を覗きこむと。琴音が勢い良く手をあげ、亡霊に質問する。
「詩音ちゃん、………亡霊って呼んだ方が良い?」
「どっちでも、俺は良いが」
「じゃあ、詩音ちゃん。僕と付き合って下さい!」
「琴音さん「ねねちゃん「琴音貴女「「「何で告白してるの!!」」」ですか」ですわよね」
葵と蒼と朝実と美和が叫ぶ。
「兄様は、渡しません!」
「そうだよ。亡霊っちはチャシャネコさんの恋人だよ!」
智莉とチャシャネコも叫ぶ。
「誰が何時恋人になったんだよチャシャネコ!」
亡霊も叫ぶ。叫ばない残りの正騎士大隊長と桃木は、大人なの余裕かケンブツヲ決め込み。其々の部下も口出しをしない。
残りの雪と黒姫の二人は、雪は寝ている黒姫を抱きながら、物陰に隠れていた。




