誰も死なせない、殺しの依頼。琴音②
琴音が振り下ろした剣が、過去の琴音の首を切り裂こうとする直前。何処からか男の声が聞こえ、剣を止め声がした方に振り替える。
振り替えった先には、笑っている男が母の死体に近付く。そして、母の死体を思いっきり蹴り飛ばす。
「貴様ぁああ!!!」
琴音が叫びながらその男を殺そうとするが、剣は男の身体をすり抜けるだけで、何も影響与えない。
「はぁ、全く。予想道理には行かないですな。欲しい死体は手に入らず、残ったのは要らない死体と、ガキが一人ですか」
男は残念そうに言いながら、母の死体を蹴るのを止めると。母の死体に手をあて、魔法を唱える。
男が魔法を詠唱し終わり手を離すと、死んでいた筈の母が立ち上がる。
「…お母さん?」
昔の琴音が、立ち上がった母を見て母のことを呼ぶ。ただ、娘に呼ばれた母の目には、娘の姿は写っていない。
「ガキを殺しておけ、私は探し物をしてくる」
男がそう言い家の中に入っていく。残された昔の琴音が、泣きながら母に近寄る。
「僕は、こんなの……知らない……」
琴音が自分の覚えていない過去を見せられ、困惑する。自分が覚えているのは、父が命をかけて黒付く目の男達を倒した所まで。
その後は、聖騎士の人達が治療を受ける場所で。姉が母の死体と父の遺品の前で、声を噛み殺し泣いている姿だった。
困惑する琴音が昔の自分を探すと、死んだ筈の母に泣きながら抱き付いていた。
「駄目だ、駄目だぁあ!」
琴音が昔の自分に向かって叫ぶ。琴音からは、抱き付いている昔の琴音の背中に向けて、母が剣を振り下ろすのが見えた。
抱き付いている昔の琴音は、背中に迫る剣に気付かない。大好きだった。否、今も大好きな母にだけは、自分を殺して欲しくない。
琴音が母より先に、昔の自分を殺そうと魔法を詠唱する。そして、詠唱し終わった炎の玉を放つ。
しかし、炎の玉も母の剣も。昔の琴音を傷付ける事は無かった。
母の剣が昔の琴音を刺す前に砕け散り。替わりに現れた人物が母を蹴り飛ばすと、昔の琴音を抱いて後ろに大きく飛んだからだ。
何も無い空間を、琴音が詠唱した炎の球が通り何も壊さずに消える。昔の琴音を助けた人物を見て、琴音はただ驚く事しか出来なかった。
「何で……詩音ちゃんなの?」
昔の自分を助けたのは、詩音にそっくりな人物だった。
「………違うか、だって詩音ちゃんは女の子だもん」
詩音にそっくりなをよく見て、琴音が気が付く。昔の自分を助けた人物は、確かに詩音そっくりだったが。雰囲気や細かい所が違く、そして何より女では無く小さな少年だった。
「それでも、詩音ちゃんにそっくりだな…………詩音ちゃん!?」
詩音にそっくりな人物を見て、自分が何をしていたのか思い出す。
(そうだ、僕は詩音ちゃんの為に先生を探してたんだ。それで、避難シェルター迄来て殺られたんだ)
そこまで思いだし、琴音が考える。何故自分は過去を見ているのか、自分はどういった状態なのか。ただ、その答えが出る前に。
「おや?、貴方はだれですか?」
家の中から男が出てくる。男は昔の琴音を助けた詩音に似た人物を見て、警戒しながら名前を訪ねる。
詩音に似た人物は、意識を失った昔の琴音をそっと地面に置くと。ナイフを構えながら答える。
「人形使い、お前を殺す者」
そう言った瞬間姿が消え、人形使いと呼ばれた男の目の前に現れる。そして、速すぎて何も反応出来ない人形使いの首を斬り飛ばす。
斬り飛ばされた人形使いの顔は、驚いた表情を浮かべた後笑う。直後、頭が無くなった人形使いの体が動き、目の前にいた人物に抱き付くと一瞬で爆発する。
「残念、私は不死身ですよ」
頭だけの人形使いがそう言ってまた笑う。
「さて、頭だけでは不便ですね。……おい、何時まで寝てる。さっさと起き上がれ!」
頭だけの人形使いが、蹴り飛ばされ倒れたままの琴音の母の死体呼ぶが。琴音の母の死体は全く動こうとしない。
「ちっ、使えないガラクタですね」
人形使いがそう言いながら、頭を浮かばせて死体の側まで行く。そして、死体を見て何かに気付いたのか、直ぐ様飛んで何処かに行こうとするが。
梗塞で飛んできたナイフが右目に刺さり、悲鳴を挙げながら地面に落ちる。
「私の魔法が殺されている、まさか」
右目にナイフが刺さったまま、再び頭を浮かばせる人形使いだが。背後に現れた人物に頭を捕まれ、地面に叩き付けられる。
人形使いの頭を地面に叩き付けたのは、爆発を喰らった筈の詩音に似た人物だった。
「あの爆発を無傷で防ぐ。貴様、魔法殺しか!」
地面に叩き付けられ、顔の半分が瞑れている人形使いが叫ぶ。魔法殺しと呼ばれた詩音に似た人物は、無言で頷く。
「そうか、魔法殺しか。でも、お前でも私は殺せない。何故ならば、私は不死身だからだ!」
笑みを浮かべながら、人形使いが叫ぶなか。魔法殺しは、人形使いの頭を持って歩い死体の前まで行く。
その死体は、琴音の父が使った炎の身代りで焼け死んだ男の死体だった。
「不死身なら、これでも死なない筈」
魔法殺しがそう言いながら、懐から小太刀を取り出す。それを見た、人形使いは目を見開き叫ぶ。
「まさか、それで何をするつもりだ!」
叫び人形使いの頭を、もう一度地面に叩き付け。脚で踏んで動かない様にした後、魔法殺しが小太刀を抜く。
抜いた小太刀には刃がなく、鞘の部分から黒い影の様な物が出てくる。そして、その黒い影は人の形になった。
「影花、この死体を喰らえ」
魔法殺しがそう言うと、影花と呼ばれた黒い人の様な物が笑みを浮かべる。
「止めろ、止めろ、やめろぉおおおお!」
脚で踏まれている人形使いが、必死の形相で叫ぶ。ただ、叫ぶ人形使いを無視して、影が死体に覆い被さる。
影が死体に覆い被さったよ瞬間。人形使いの口から、喉を裂くような悲鳴と苦悶の声が挙がる。
数分間続いた悲鳴と苦悶の声が突然静かになるのと、影が起き上がるのは同時だった。
影が起き上がった後には、死体は無く。ただ、血の後が残っているだけだった。
魔法殺しが静かになった人形使いの頭を持ち上げる。そして、耳元で囁く。
「これでも、お前は不死身か」
囁かれた人形使いの顔が、恐怖に固まる。その表情は、自分がもう不死身でないと言っているのと同じだった。
「さて、俺の本当の標的は。本当の人形使いを殺し、死体に自分の魂を移し替える魔導師。肉体を奪う者あんた何だよ」
そう言って、移した魂を壊され。不死身で無くなった、肉体を奪う者の頭を影花に渡す。
「嫌だ嫌だ、死にたくない!………そうだ、魔法殺し取り引きを仕様じゃないか。
私の秘術を教えてあげよう、その替わりに私を見逃してくれ。もし、それで足りないなら、言い値で金も払う。それに、君だけの命令を聞く人形を造っても良い。
悪く無い取り引きだろ、だから私を見逃して欲しい。……いや、何なら一緒に手を組まないか?。君が殺した強者の死体を、私が操れば私達に敵う者なんていないだろう。
そうだ、そうしようそれが…」
唐突に肉体を奪う者の声が消える。琴音が何故かと思い見ると、丁度影が最後の一口を食べる瞬間を見てしまった。
(嫌なの見ちゃった)
人の顔が喰われる瞬間を見た琴音が忘れようと、違う事を考える。
「うわぁあああ!」
叫び声を聞いて琴音がそっちを見ると、落ちていた剣を握り魔法殺しに斬りかかる昔の琴音がいた。
「お父さんとお母さんの仇」
そう言いながら振り下ろした剣は、影花によって一瞬で砕かれ。その衝撃で昔の琴音が吹き飛び、砕かれた剣の破片で全身を斬られる。
それでも、泣きながら昔の琴音が立ち上がる。そんな、昔の琴音に向かって、魔法殺しが話し掛ける。
「復讐したいか?」
その一言に昔の琴音が頷くと、魔法殺しが一本のナイフを昔の琴音に渡す。
「それで、殺してみろ」
そう言いながら、魔法殺しが目を瞑り座る。ナイフを渡された昔の琴音は、自分の血で滑るナイフを確り握り突き刺す。
「何で首を狙わない」
ナイフは魔法殺しの右肩に刺さり、昔の琴音が泣きながら手からナイフを離す。
魔法殺しは、何故か泣き崩れた昔の琴音の頭を撫でる。
「復讐するなら強くなれ。復讐何て物は自己満足だ、少しで迷いが生まれた出来なくなる。
それでもなを、復讐したいのなら。心を殺して、迷いをつくるな」
言い終わった直後、魔法殺しは昔の琴音に1枚の札を見せる。札を見た、昔のは意識を失ったのか、その場に崩れ落ちた。
崩れ落ちた昔の琴音に、魔法殺しが違う札を当てると。剣の破片で斬られた傷が治っていく。
「そろそろ聖騎士が来るか」
いつの間にか小太刀に戻っていた、影花を仕舞いながら魔法殺しいなくなる。
「さて、君は何を知りたい?」
琴音の背後から、そんな声が聞こえ琴音が振り返った。




