葵VS黒姫
雪が使った氷獄の監獄の所意で水浸しになった体育館が、乾いたのを確認して次の勝負のくじ引きを始める。
「因みに、さっきの勝負はどちらの勝ちですの?」
くじを引いた美和が詩音に向かって言うと、詩音が雪を見ながら答える。
「雪先輩の反則敗けです。氷魔法は、制御出来るまで使わない約束を破ったので」
『詩音、本当にすいませんでした。朝美さんもごめんなさい』
雪が紙を見せながら、頭を下げる。詩音は、一度頷くだけでくじの入った箱を次の葵に向ける。朝美は、大丈夫ですと何度も言いながら笑顔を作る。
「あれ、僕のくじが無い?」
「わっちも、遊びたいでありんす」
琴音が、いつの間にか琴音の引くくじを引いて。小さな手に持つ黒姫を見つけた。
「そっか、黒姫ちゃんが替わりに引いてくれたんだ」
琴音がそう言いながら黒姫のくじを開くと、対戦者と書かれていた。琴音がどうしようか迷っていると、もう一人の対戦者が決まる。
「葵さんと、後一人誰ですか?」
詩音がそう言いながら一人一人確認していく、不味いと思った琴音が黒姫を背中に隠すが。
「わっちのに、対戦者って書いてありんす」
「わぁー、黒姫ちゃん言っちゃダメだよ!」
黒姫が大きな声で叫び、琴音が慌て黒姫の口を押さえるが。時既に遅く、全員が黒姫と琴音の事を見ていた。
「えっと……」
琴音が何か言うより先に、詩音が黒姫の事を呼ぶ。呼ばれた黒姫が対戦者と書かれたくじを持って、笑顔で詩音の元に行く。
黒姫が勝手にくじを引いたのを、詩音が怒ると思った琴音が耳を塞ぐが。
「黒姫、哭かないなら勝負して良いですよ」
「わっち、哭かないでないありんす。約束するでありんす」
詩音は怒らずに黒姫の頭を撫でながら、黒姫に哭かない様に注意していた。
「詩音ちゃん良いの?」
琴音が聞くと、詩音は大丈夫と言って黒姫を開始位置に送り出す。
「詩音さん、私の対戦相手って」
先に開始位置にいた葵が、困惑しながら詩音に訪ねるが。
「黒姫は強いですよ。それでは、始め!」
詩音がそれだけ言って、勝負を始める。始めの合図と同時に、黒姫の姿が開始位置から一瞬で消え葵の目の前に現れる。
「ーッ!?」
咄嗟に槍を構えて黒姫を迎撃仕様とするが、その前に黒姫が葵目掛けて蹴りを放つ。
黒姫の蹴りにたいして葵の槍がギリギリ間に合い、蹴りを防ごうとするが。黒姫の蹴りを槍が受けた瞬間、何かが爆発した様な衝撃で葵が吹き飛ぶ。
「詩音ちゃん、今のって何が起きたの?」
「詩音さん、今のって一体何ですの?」
「葵は、大丈夫なの!」
琴音と美和の二人が、黒姫の技を聞き。朝美が葵を心配して、詩音に叫ぶ様に聞く。
「葵さんなら大丈夫ですよ、ギリギリですけど槍で防いでましたから。今のは鎧通しの応用で、通さずに叩き付ける様にしてるんです」
詩音がそう言うと、朝美は安心した表情を浮かべる。琴音と美和の二人は、感心したように黒姫を見る。
(今のは危なかった、この槍でなければ防げなかった)
葵が詩音から貰った槍を見る。柳石と呼ばれる鉱石で作られた槍は、衝撃に対して強い耐性を持つ。
そんな槍ですら、黒姫の蹴りを受けた瞬間悲鳴をあげた。もしこれが普通の槍や、柳石以外の素材の槍だったら。折れるか砕けるかしており、葵に迄衝撃が伝わりダメージを与えていた。
葵が気持ちを切り替え槍を構える。黒姫は葵が槍を構えるのを見た後、また一瞬で葵の目の前に現れて蹴りを放つ。
「ー!!」
爆発した様な衝撃と共に、蹴りを放った黒姫が吹き飛んだ。詩音以外の全員が驚くなか、黒姫は何事も無かった様に起き上がると、服に着いた汚れを落とす。
(衝撃を返したのに、綺麗に受け流されたか)
葵は黒姫の蹴りの衝撃を、槍で受け止めるのでは無く。柳石の槍で一度衝撃を吸収した後に、そっくりそのまま衝撃を黒姫に返したが。
黒姫はその衝撃を鎧通しの応用で、全て体の外に放出していた。黒姫が吹き飛んだのは、単に葵から距離をとる為であり。着地に失敗して転けていただけで、ダメージは無い。
黒姫は服の汚れを落とし終わると、また一瞬で葵の目の前に現れて蹴りを放つ。
葵が先程と同様に衝撃を返そうとするが、槍に黒姫の蹴りが当たるが衝撃がなく。次の蹴りを受け止めた槍の反対側から、黒姫の蹴りが槍を襲い爆発の様な衝撃で槍を吹き飛ばす。
(不味い!)
槍を吹き飛ばされた衝撃で葵の体は体勢を崩しており、黒姫の蹴りをかわす事が出来ない。
葵は一瞬の判断でそのまま体勢を崩し、転がって黒姫から距離をとる。葵が地面に横になった時、黒姫の蹴りが葵の頭を掠めていた。
背中に冷たい汗をかいた葵が、転がりながら飛ばされた槍の元に辿り着く。
(気持ち悪い)
黒姫の蹴りを喰らっていたかも知れない恐怖と、転がった所意で吐き気を覚えながらも槍を構える。
黒姫は葵が槍を構えるのを見て、葵の目の前に現れて蹴りを放つ。だが、今回は葵は槍で受けずに、替わりに
「風よ目の前の全てを吹き飛ばせ…突風」
風魔法の突風を詠唱し黒姫を吹き飛ばす。蹴りを放って板黒姫は、突風をもろに喰らいごろごろと地面を転がる。
「風よ全てを切り刻む刃となれ…風の刃」
葵が詠唱した風の刃が転がる黒姫を襲う。黒姫は、なす術も無く風の刃に切り刻まれていく。
追撃を仕掛けるべく、葵が次の勝負の魔法を詠唱仕様としたが。転がっていた黒姫が、手を地面に押し当て勢い良く起き上がると。一瞬で葵の背後に回り込む、そして反応仕切れていない葵に蹴りを放つ。
「黒姫の勝ちで良いでありんすか」
蹴りと言うよりお腹に脚を当てただけの黒姫が、そう言いながら脚をお腹から離す。
「私の敗けです」
葵が敗けでを認める。その宣言を聞いた詩音が、黒姫の勝ちを宣言する。
「やった、わっちの勝ちでありんす!」
詩音の黒姫の勝ちの宣言に、黒姫が跳び跳ねながら喜ぶ。
「黒姫ちゃん強いんだね、僕驚いちゃったよ!」
「私も驚きましたわ!」
琴音と美和の二人が黒姫にそう言いい、風の刃でボロボロになった黒姫の服の替わりを持ってくるが。
「わっちのこの服は、魔力で出来てるでありんす」
黒姫がそう言うと、ボロボロになったいた黒姫の服が元に戻っていく。黒姫を着せ替え人形に仕様としていたのか、沢山の服を持った琴音と美和の二人が力無く項垂れていた。
「朝美様すいません、敗けてしまいました」
葵が朝美の元に戻りそう言うが、朝美は葵に抱き付くと。
「私も負けました、だからお揃いです」
そう言って葵から離れる。葵は朝美を見て頷くと、妹の蒼の方を見る。蒼は手に持っていたタオルを葵に渡す。
「汚れてますよ、葵姉さん」
蒼に言われて自分が汚れていた事に気付いた葵が、朝美の服を見て慌てる。朝美の服は、葵に抱き付いたさいに汚れていた。
「朝美さん達、次の対戦者を決めるくじ引きをやりますよ」
朝美の服の汚れを、どうにか落とそうとしていた葵を置いて。朝美と蒼の二人が詩音の元に行き、其に気付いた葵が慌てて追い掛けてきた。
そして、全員が集まりくじを引こうとしたとき。何かが爆発する様な音と、体育館を大きく揺らす衝撃が襲う。
「一体何ですの?」
美和が叫ぶとほぼ同時に、学園内に緊急放送が流れる。
『生徒の皆さんは至急、避難シェルター迄避難してください。繰り返します、生徒の皆さんは至急、避難シェルター迄避難してください』
「避難シェルターって、襲撃ですの!」
美和の襲撃と言う言葉を肯定するように、外からは戦闘している音が体育館迄響いて来る。
「皆避難シェルターに行くよ!」
琴音学園そう言いながら、体育館の出口に向かうが。それより先に、体育館に入ってくる影が一つあった。
登場人物
影霧 詩音…校長の暗殺の為に、学園にいる暗殺者。本来の性別は男だが、薬により少女になっている。
暗殺者としては亡霊ファントムと呼ばれ。複数の二つ名を持つ一流の暗殺者でありながら、魔力が全く無い。
詩音になっている際は、薬の副作用で魔法が使える。魔法ランクは3
紅 琴音…ボーイイッシュな少女。学年は詩音より上であり、琴音先輩と呼ばれている。
学園でも屈指の実力者であり、魔法ランクは聖騎士見習いになれるランク7
過去に両親を暗殺者に殺されている過去を持っている。
三條 美和…学園に入学生した詩音に勝負を吹っ掛け負けた少女。学年は琴音と一緒で詩音より上。
自己申告の魔法ランクは5だが、本当は3種類の属性魔法が使えランクは6である。今分かってるのは、炎と土の魔法の二つ
勝負に負けてから詩音に興味を持ち、御近づきになろうと努力をしている。
努力が実ったのか、今は詩音に個人指導をして貰える位になった。
詩音と同じメイド喫茶で働いており。知られていないが、ファンクラブがある。
薄紫 朝実…詩音の正体を知っている数少ない生徒。極端な人見知りであり、普段は葵と蒼と言う双子と一緒にいるが。双子がいない時は琴音の後ろに隠れている事が多い。
家柄暗殺者に命を狙われる事が多かったが、偶然正体を知った詩音と取り引きをして守って貰う事で引きこも生活に別れを告げた過去がある。
占い時など、人格が変わった様になる事がある。
こう見えて魔力ランクは7
葵と蒼…朝実の護衛である双子の少女。学年は詩音や朝実より下で中等部の生徒。
ランクはどっちも5である。葵が姉で蒼が妹。
凪茶 雪…学年は2年で女
元暗殺者であり、暗殺者を育成する施設の出。拘束札を詩音に解除して貰い、詩音を我が主マイロードと呼んでなついている。
詩音に会うまでは、図書資料館に住んでおり。図書資料館の主と言われていた。
かなりの無口であり、主な会話方法は紙に書いた文字であり。また、感情を表に出すのが下手である。
黒姫…妖刀であり。死を知らせる者バンシーの名前があるが、その名前で呼ばれる事を嫌う。
全体的に黒い色であり。刃紋は朱殷色で、鎬の部分は紺色。
恐ろしく鋭い切れ味で、普通の鞘だとおさめられず。口付けでご機嫌にした後、精霊樹の鞘におさめている。
詩音が大好きで、かなりの焼き餅焼き。
人の姿の時は、黒い着物を着た少女。顔に紅いお化粧(おもに目の下)をしており。
「わっち、でありんす」と良く言う。




