雪VS朝美
雪と朝美が其々の開始位置についたのを確認し、詩音が始めの合図を出す。
「どっちが勝つかな?」
「雪さんじゃありませんの?」
勝負の行方を琴音と美和が予想するが、美和の予想に葵と蒼が反論する。
「「勝つのは、朝美様です」」
睨みながら言う葵と蒼の二人に、琴音と美和の二人が黙る。そんな、四人を見ながら、詩音が勝負に集中するように注意する。
「詩音ちゃんは、どっちが勝つと思う?」
琴音が詩音に聞くが、詩音は答えずにただ黙って試合を見ている。
『朝美さん、悪いですけど。我が主が見ていますので、本気でいかせて貰います』
雪が紙に書いた文字を朝美に見せる。そして、紙を仕舞う一瞬で朝美の背後を盗る。
一瞬で雪を見失った朝美が辺りを見回す中、雪が朝美の首目掛け剣を振り下ろす。
「「朝美様!!」」
「朝美ちゃん!」
思わず葵と蒼と琴音の三人が叫ぶ。だが、声が朝美に届く前に、剣は朝美の首の直前で止まる。
雪が一瞬で判断し剣を棄てると、朝美から距離を取り一旦体制を整える。
そこで、やっと雪が背後にいる事に気が付いた朝美が振り替える。そして、落ちている剣を見つけ小さく悲鳴をあげる。
「今のは、何ですの?」
勝負の最中に朝美に外野から警告して、詩音にお仕置きの拳骨を喰らい倒れている三人の替わりに、朝美が詩音に訪ねる。
「結界ですよ。朝美さんは個人指導を頑張ったので、常時自分の廻りに結界を張れる様になったんですよ」
詩音が朝美の質問に答えている最中も、雪の攻撃が朝美を襲うが。全て朝美の結界に阻まれ、一度も攻撃を通す事が出来ない。
「あわわわわ!」
気配を消して素早い攻撃を繰り出してくる雪に、朝美は結界を強めに張る事で身を守る。
何度も攻撃を仕掛け。攻撃が通らない事を知った雪は、無言で右腕を前に出す。
「きゃあぁあああああ!」
雪が右腕を前に出した瞬間、朝美の足元から樹が生えて浅見を包み込む。朝美の悲鳴が体育館に響くが、朝美の結界は押し潰そうとする樹を防ぎ続ける。
「でも、これじゃあ。朝美さんは、じり貧ですわ」
攻撃が出来ない朝美を見ながら美和が呟く。だが、そんな美和を見ながら詩音が小さく呟く。
「このままじゃ、負けるのは雪先輩ですよ」
(結界が予想以上に固い。でも、相手は攻撃手段が無い)
雪はそう判断し、朝美の結界をどうするか考える事に集中する。だが、何かに気付き朝美を見ると。朝美を結界ごと捕らえていた樹は、捕らえていた筈の獲物を見失い獲物を探している。
(どうやって?、それより何処に?)
雪が辺りを見回すが、朝美の姿は何処にも無い。雪が警戒して自分を守るように、木の魔法を詠唱する。
(これで、何処から来ても防げる)
魔法を詠唱し、さらに剣を構え即座に反撃出来る様に構える。だが、そんな雪を嘲笑うように、雪の腹部に小さな拳がめり込む。
「なッ!、……か……は!!」
その一撃は鎧通しが込められており、雪の防衛魔法を貫く。さらに、もう一発雪の腹部に拳が深々とめり込む。その衝撃で、雪が剣を手から落とすが。
「き……木よ刺し貫く荊となりて敵を捕ら、棘で傷を与え続けろ……拘束する蕀」
雪が魔法を声に出し一瞬で詠唱する。雪の足元から、鋭い刺が無数にある植物が五本生えると。雪を襲った、見えない敵を感知襲いかかる。
(捕らえた)
荊の植物が、見えない敵を捕らえたのを魔力を使い確認する。そして、そのまま荊の植物を使い結界ごと握り潰す。
(潰れない!。違うこれは、何?)
結界を破壊した感触はあるものの、荊の植物は獲物を絞め続ける。だが、いくら絞め続けても、捕らえた何かは逃げようと暴れている。
雪が捕らえた何かを確認し様と、少しだけ荊の植物の締め付けを弱めた時。
「こっちです。えい!」
背後から朝美の声が聞こえ、何かが雪目掛けて飛んでくる。雪が飛んできた物を、別の植物で払い落とす。飛んで来たものは、雪が棄てた剣だった。
雪がすぐに剣を投げた朝美を捕らえようと、樹で朝美の廻りを囲むが。
「…ッ!」
朝美に意識を向けた一瞬で、捕らえた何かが拘束を解き。雪を背後から襲う、背後からの奇襲を何とかかわす雪だったが。
その間に、朝美は姿を眩まし。襲ってきた何かも、朝美と同じ様に姿を眩ます。
「一方的な戦いになったね」
「「朝美様頑張って下さい」」
「貴女達、何時の間に復活したんですの?」
いつの間にか詩音のお仕置きの拳骨を喰らい、倒れていた三人が復活していた。
「さっき、やっと復活したよ」
琴音が自分の頭を擦りながら、美和と詩音の方を向く。
「そう言えば、詩音ちゃんなら朝美ちゃんの謎を分かるよね?」
「そうですわ。朝美さんは、一体どうやって攻撃してるんですの?」
琴音と美和が詩音に質問するが、詩音は試合を真剣な表情で見ながら答える。
「内緒です。それより、この勝負。止めるタイミングを間違えると危険なので、話しかけないで下さい」
片時も勝負から目を離さずに、詩音が言う。詩音の側では、黒姫も真剣な表情で勝負を見ている。
(ダメ、捕らえられない)
気配と姿を結界で消している朝美と、同じ様に、気配と姿を結界で消して攻撃を仕掛けてくる何かを捕らえらず。雪の魔力と体力が削られていく。
(このままだと負ける?)
自分の敗北が頭に浮かんだ時、雪の中で大きく何かが変わる。
「黒姫、試合を止めます」
雪の変化に気付き、詩音が刀になった黒姫を手に雪と朝美の元に走る。
「氷よ我が魔力を喰らい更に冷たく凍れ、罪人を捕らえし逃がさぬ氷河の檻を、逃げる意志させ奪う極寒の寒さを、罪人の命すら凍らせろ…氷獄の監獄」
雪の魔法が発動すると同時に、雪の廻りから物凄い勢いで全てが凍っていく。体育館の床は勿論、魔法で出来た荊の植物や空気中の水分すら瞬時に凍りつく。
「ひゃあああああああああ!!!」
雪から離れ遠くに隠れていた朝美の悲鳴があがる。朝美の張ってある結界が凍りつき、少しづつだが朝美の廻りが凍っていく。
「「朝美様!」」
「朝美ちゃん!」
「朝美さん!」
朝美を見て四人が向かおうとするが、それより先に詩音が叫ぶ。
「哭け黒姫」
黒姫が哭いた瞬間、黒姫の廻りの凍りから順に解けていく。一時体育館軒並み全てを凍らせ様としていた凍りは、ものの数十秒で全て解けて消え去った。
後に残ったのは、恐怖で気を失った朝美と魔力切れ寸前でフラフラしている雪。それと、人に戻った黒姫の頭を撫でている詩音に、朝美の元に駆け付ける琴音と美和と葵に蒼。そして、急激な温度差で水浸しになった体育館だった。
「雪先輩、氷魔法はちゃんと制御出来る様になってから使って下さい」
『すいません、詩音』
珍しく誰が見ても、いまのところ雪は落ち込んでいた。そんな雪の側に、意識を取り戻した朝美が来る。
「雪先輩、ちゃんと言葉で謝るんですよ」
詩音がそう言いながら、雪から離れていく。
「あの………ごめんなさい…」
雪が朝美に謝る。謝られた朝美は、笑顔で大丈夫と答えると。朝美の笑顔を見て、雪も笑顔を浮かべる。
「雪先輩の笑顔、始めて見ました!」
朝美が雪の笑顔に驚き声をあげる。その瞬間、雪の笑顔見たさに。琴音と美和が急いで雪の顔が見える位置に向かうが、その時には雪は普段の表情に戻っていた。
「雪ちゃんお願い、笑って見せて!」
「そうですわ。私も一度くらい、雪さんの笑った顔が見たいですわ!」
琴音と美和が雪に笑ってとお願いするが、雪は無表情のまま逃げ出す。
「逃がさないよ!」
「雪さん、待ちなさいですわ!」
逃げた雪を、琴音と美和の二人が追いかけ始める。そんな二人の事を、詩音が止めに行く。
葵と蒼の元に向かう朝美は、途中で笑顔を浮かべる。
「雪先輩って、笑うと可愛い」
雪の笑顔を思い出しての、笑顔だった。
登場人物
影霧 詩音…校長の暗殺の為に、学園にいる暗殺者。本来の性別は男だが、薬により少女になっている。
暗殺者としては亡霊ファントムと呼ばれ。複数の二つ名を持つ一流の暗殺者でありながら、魔力が全く無い。
詩音になっている際は、薬の副作用で魔法が使える。魔法ランクは3
紅 琴音…ボーイイッシュな少女。学年は詩音より上であり、琴音先輩と呼ばれている。
学園でも屈指の実力者であり、魔法ランクは聖騎士見習いになれるランク7
過去に両親を暗殺者に殺されている過去を持っている。
三條 美和…学園に入学生した詩音に勝負を吹っ掛け負けた少女。学年は琴音と一緒で詩音より上。
自己申告の魔法ランクは5だが、本当は3種類の属性魔法が使えランクは6である。今分かってるのは、炎と土の魔法の二つ
勝負に負けてから詩音に興味を持ち、御近づきになろうと努力をしている。
努力が実ったのか、今は詩音に個人指導をして貰える位になった。
詩音と同じメイド喫茶で働いており。知られていないが、ファンクラブがある。
薄紫 朝実…詩音の正体を知っている数少ない生徒。極端な人見知りであり、普段は葵と蒼と言う双子と一緒にいるが。双子がいない時は琴音の後ろに隠れている事が多い。
家柄暗殺者に命を狙われる事が多かったが、偶然正体を知った詩音と取り引きをして守って貰う事で引きこも生活に別れを告げた過去がある。
占い時など、人格が変わった様になる事がある。
こう見えて魔力ランクは7
葵と蒼…朝実の護衛である双子の少女。学年は詩音や朝実より下で中等部の生徒。
ランクはどっちも5である。葵が姉で蒼が妹。
凪茶 雪…学年は2年で女
元暗殺者であり、暗殺者を育成する施設の出。拘束札を詩音に解除して貰い、詩音を我が主と呼んでなついている。
詩音に会うまでは、図書資料館に住んでおり。図書資料館の主と言われていた。
かなりの無口であり、主な会話方法は紙に書いた文字であり。また、感情を表に出すのが下手である。




