琴音VS美和
体育館に着くと、詩音がすぐに準備に取り掛かる。対戦番号が書かれた紙を、穴を開けた箱の中に入れて全員に一枚づつ取らせていく。
「では、せえので紙を開いて下さい」
詩音の掛け声に全員で同時に、自分が取った二つ織りの紙を開く。
「決まりましたね。最初は、琴音先輩と美和先輩ですか」
琴音と美和にの紙には、対戦者と書かれていた。最初に戦う事になった琴音と美和が、お互いを見た後にそれぞれの開始位置まで歩いていく。
「では、始めの合図ではじめて下さい」
二人が頷くのを確認してから、詩音が始めの合図を出す。詩音の始めの合図と同時に、琴音が詩音から貰った剣を抜きながら美和との距離を詰める。
「甘いですわよ!、炎よ全てを遮る壁となりなさい…炎の壁」
琴音の目の前に炎の壁が現れる。それは、以前よりも暑さも火力も桁違いの炎の壁だった。
「…ッ!」
目の前に現れた炎の壁の所意で一瞬動きが止まった琴音に、頭上から|炎の雨
《ファイヤーレイン》が降り注ぐ。
一つ一つの威力を抑え、通常より広範囲に降り注ぐ様にしてある炎の雨を。かわせないと判断し琴音が魔法を唱える。
「炎よ我が手に宿り、身を守る盾となれ…炎の盾」
琴音の左手に炎の盾が生まれる。琴音は炎の雨を炎の盾で受けながら、さらに魔法を唱える。
「炎の風よ目の前の敵を吹き飛ばせ…炎の風」
琴音の炎の風が美和の炎の壁とぶつかり、お互いを呑み込もうと荒れ狂う。暫く拮抗していたお互いの魔法が、込められた魔力を使い果たし同時に下記消える。
「相討ちかな?」
お互いに下記消えた魔法を見て、琴音が呟く。だが、すぐに相討ちでは無い事が分かった。
「嘘だよね?」
「嘘じゃありませんわよ」
美和の廻りには、無数の炎の爆弾と。炎の弾丸が浮かんでいた。
咄嗟に琴音が魔法を使おうとするが、魔力を関知した透明な爆弾が爆発し琴音が吹き飛ばされる。
「うわ!?」
吹き飛ばされて、短い驚きの声をあげた琴音が。何とか地面に着地すると、今度は地面がはぜる。
地面がはぜる寸前。何かに気付いた琴音は、横に跳んで爆発の直撃を回避していた。
「その辺りには、見えない地雷を仕掛けて置きましたわ」
「うわ、それじゃあ迂闊に動けないね」
美和が琴音の足元を指差して言うと、琴音が困った様に答える。そんな、迂闊に動けない琴音に、美和が降参するように言う。
「琴音貴女の負けですわ。ここで魔力を悪戯に削るより、次の勝負の為に取っておいた方が懸命ですわよ」
美和の合図一つで、数百を超える炎の弾丸と炎の爆弾が琴音を襲う。もし魔法を詠唱すれば、魔力を関知した透明な爆弾が直ぐ様爆発し。
かわそうと動けば、足元に仕掛けてある見えない地雷が足元を吹き飛ばす。
動く事も魔法を使うことも出来ない琴音は、普通なら降参するしか無い状況だが。
「僕は、降参しないよ」
そう言って剣を構える。剣を構えた琴音を見て、美和が無言で指をならす。美和の合図により、数百を超える炎の弾丸と炎の爆弾が一斉に琴音に迫る。
「はぁあああああああ!」
琴音が己を奮い立たせる様に声をあげる。そして、迫り来る炎の弾丸と炎の爆弾目掛け剣を振り下ろす。
「え?、それって!」
剣は触れた炎の弾丸と炎の爆弾を切り裂く。切り裂かれた二つの魔法は、魔力を霧散して消え去る。
「何で琴音、貴女が詩音さんの技を?」
美和が疑問をぶつけるが、琴音は答えずに急所を襲ってくる魔法を切り裂いていく。
「詩音ちゃん。やっぱり、難しいよこの技」
琴音が急所を襲う魔法を全て切り裂き叫ぶ。だが、腕や脚等といった部分は防ぎきれずに魔法を喰らい、かなりの魔力を削られている。
それに比べて、美和の魔力はかなり残っている。その状況下からの逆転は、かなり難しいが、琴音は詩音を見てもう一度叫ぶ。
「詩音ちゃん、この状況から勝ったらご褒美頂戴ね!」
「そう言うのは、勝ってから言って下さい」
詩音が呆れた様に言う。そんな、琴音と詩音の事を見ながら、美和が大声で叫ぶ。
「琴音貴女、私の質問に答えてませんわよ!。何で貴女が詩音さんの、技を使えるんですの!!」
美和の二度目の詩音に、琴音が笑顔で答える。
「それはね、個人指導の時に、詩音ちゃんが魔法を切り裂いたのを見て。教えてって頼み込んだからだよ」
琴音がどや顔で言うなか、詩音が苦笑いを浮かべる。
「確かに頼み込みでしたね。個人指導の間土下座で、会う度にお願いと言われ続けられたんですから」
「琴音貴女、流石にそれは迷惑だったと思いますわよ?」
美和が溜め息を吐きながら琴音を見る。他の面々も其々、微妙な表情で琴音を見ていた。
「だって、それは。詩音ちゃん中々教えてくれないから………ぼ、僕はどうしても教えて欲しかったんだもん!。
それに、頑張って教わってたから、さっきの攻撃を防げたんだよ!!」
琴音がそう叫ぶが、全員の表情は余り変わらなかった。
「まあ、完璧じゃ無いですけどね。それより、今は勝負中です。これからの観戦者に対する私語は厳禁にしますよ」
会話の度に止まる為。勝負に集中させる為に、私語は厳禁にした詩音に対して。琴音が何か言いかけるが、何も言わずに美和の方を見て剣を構え直す。
「琴音貴女が、詩音さんの技を使える訳は分かりましたわ。でも、魔法も使えず動けない状態で、どうやって私に勝つつもりですの?」
今だ琴音の廻りには、見えない地雷と透明な爆弾がある。
先程の攻撃をある程度防いだ琴音だが。目に見えない二つの魔法は、剣で切り裂く事は出来ない。
「炎よ全てを呑み込みなさい、荒れ狂うは灼熱を撒き散らす業火、訪れるは破壊の大波…業火の津波」
美和の詠唱により、炎で出来た大きな津波が現れる。全てを破壊し燃やし尽くす業火の津波は、琴音目掛けて押し寄せ一瞬で琴音を飲み込む。
勝利を革新したのか、美和が今だ燃え荒れ狂う業火の津波に背を向ける。そして、そのまま詩音達の方に歩き出そうとした時。何かに気付き咄嗟に防衛魔法を詠唱する、詠唱された防衛魔法は何かに当たり砕け散る。
「まさか、防いだんですの?」
美和が驚いた様に防衛魔法を壊した人物の事を見る。そこには、服が焼け焦げ、擦り傷や軽度の火傷を負った琴音が剣を構えていた。
「炎よー」
美和が魔法を詠唱仕様とするが、琴音の剣撃を防ぐだけで詠唱が出来ない。殆ど全裸の状態の琴音は、ここで勝負を決める覚悟で剣を振り続ける。
「琴音貴女、体の廻りだけに防衛魔法を張ったんですの」
以前詩音が琴音の劫火の身柱を防いだ時と同じ様に、必要最低限の場所だけを魔力で守った琴音だが。
「そうだよ。でも、難しくて防ぎきれなかったよ」
痛みがあるのか、琴音は痛みに耐えるために歯を食い縛っており。時々歯を食縛り直す音が聞こえる。
「貰ったよ!」
何度ともなく振るった剣が、美和の防衛魔法をついに切り裂く。最後の一撃とばかりに、全ての気力を込めて琴音が剣を振り下ろす。
「琴音残念ですけど、貴女の負けですわよ」
美和の声が琴音の耳に届いた瞬間。全力で振り下ろした剣が、何かに当たり弾き返される。
「土よ撃ち抜き砕きなさい…土の弾丸」
美和が詠唱した、土魔法の土の弾丸が琴音を襲う。近距離の突然の攻撃に、琴音が何とか剣で迎撃仕様とするが。
「無駄ですわ」
剣を振るうより先に、土の弾丸が琴音を捕ら吹き飛ばす。今の一撃で魔力を失った琴音は、そのまま地面に叩き付けられる直前。
美和の左右の足元の地面から生えていた剣を防いだ土の手に、優しく受け止められる。
「土の胎児。私を自動で守る、防衛の一つですわよ」
詩音との個人指導の時に教わり、何時でも使える様に絶えず微量の魔力を送り。詠唱出来ない状態でも、発動出来る様にしている最後の守りの一つである。
「聖騎士を決める大会まで隠しておくつもりでしたのに。まさか詩音さん以外に使うなんて思っていませんでしたわ」
美和がそう言いながら、詩音の方を見る。詩音は魔力切れで意識を失っている琴音を確認すると、美和の勝ちを宣言する。
「この勝負、美和先輩の勝ちです」
詩音が言い終わった瞬間。朝実と葵に蒼が琴音の元に向かう。
「琴音先輩が意識を取り戻したら、次の対戦相手を決めます」
詩音がそう言うと。琴音に勝った美和は、魔力を回復させる為に仮眠をとり。朝実は琴音の汚れたら体を、葵と蒼と一緒に濡らしたタオルで吹いていた。
『詩音。美和は、土の魔法も使えたんですね』
雪が詩音に紙を見せる。詩音はそれに頷くと、美和残っている方を見て雪に答える。
「美和先輩に当たる時は、思い込みを捨てた方が良いですよ」
『それは、どういう意味ですか?』
雪が直ぐ様聞き返すが、詩音はそれ以上言えないと首を横に振る。
「詩音さん、琴音先輩が目を覚ましました」
琴音の体を拭き終わり。ボロボロになった服の替わりの、新しい服を着させていた蒼が詩音を呼ぶ。
「そっか、僕負けちゃったんだ」
状況を説明された琴音が呟く。そんな琴音を見ながら、美和があさっての方を見ながら喋る。
「そうですわ、琴音貴女の負けですわよ。でも、私に土の胎児を使わせたのは、詩音さんだけですわ。だから、そこは誇っていいですわよ」
「そっか、詩音ちゃんだけか……よし、次は僕が勝つからね」
琴音が笑顔で握手を求め手を出す。美和は少し躊躇した後、その手を払い除ける。
「私にはまだ、切り札があるんですわよ。なので、切り札使わせる位強くなってから、私に勝つって言いなさい。
その時なら、握手でも何でもしますわ」
「そっか、なら僕頑張るからね。だからその時は、握手じゃなくてハグだね」
琴音が笑いながら言うと、美和が何でハグ何ですのと叫び返す。
「次の対戦ですが」
暫く琴音と美和のやり取りが逢った後、再度全員が紙を引いた。その結果は、
「雪先輩と朝美さんに決まりました」
次の対戦は、雪と朝美に決まった。
登場人物
影霧 詩音…校長の暗殺の為に、学園にいる暗殺者。本来の性別は男だが、薬により少女になっている。
暗殺者としては亡霊ファントムと呼ばれ。複数の二つ名を持つ一流の暗殺者でありながら、魔力が全く無い。
詩音になっている際は、薬の副作用で魔法が使える。魔法ランクは3
紅 琴音…ボーイイッシュな少女。学年は詩音より上であり、琴音先輩と呼ばれている。
学園でも屈指の実力者であり、魔法ランクは聖騎士見習いになれるランク7
過去に両親を暗殺者に殺されている過去を持っている。
三條 美和…学園に入学生した詩音に勝負を吹っ掛け負けた少女。学年は琴音と一緒で詩音より上。
自己申告の魔法ランクは5だが、本当は3種類の属性魔法が使えランクは6である。今分かってるのは、炎と土の魔法の二つ
勝負に負けてから詩音に興味を持ち、御近づきになろうと努力をしている。
努力が実ったのか、今は詩音に個人指導をして貰える位になった。
詩音と同じメイド喫茶で働いており。知られていないが、ファンクラブがある。
薄紫 朝実…詩音の正体を知っている数少ない生徒。極端な人見知りであり、普段は葵と蒼と言う双子と一緒にいるが。双子がいない時は琴音の後ろに隠れている事が多い。
家柄暗殺者に命を狙われる事が多かったが、偶然正体を知った詩音と取り引きをして守って貰う事で引きこも生活に別れを告げた過去がある。
占い時など、人格が変わった様になる事がある。
こう見えて魔力ランクは7
葵と蒼…朝実の護衛である双子の少女。学年は詩音や朝実より下で中等部の生徒。
ランクはどっちも5である。葵が姉で蒼が妹。
凪茶 雪…学年は2年で女
元暗殺者であり、暗殺者を育成する施設の出。拘束札を詩音に解除して貰い、詩音を我が主と呼んでなついている。
詩音に会うまでは、図書資料館に住んでおり。図書資料館の主と言われていた。
かなりの無口であり、主な会話方法は紙に書いた文字であり。また、感情を表に出すのが下手である。




