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暗殺者は今日も女装をする。  作者: 木陰の蛇
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チャシャネコと智莉の譲れぬ戦い③…本当の勝者……

 孤児院となっている廃教会には、子供達を纏めてお風呂に入れられるように大きなお風呂がある。

 一応少額のお金さえ払えば、スラム街の人間も利用可能であり。老若男女訪わず一定の利用客がいるが。今日は、入り口に大きく貸し切りと書いた古びた看板が立っている。

 そして、その看板の前では、智莉が最後の覚悟を決める為に深呼吸をしていた。

 「兄様とお風呂……ち、違います!。私は、兄様の疲れをとる為に……でも、もし兄様にマッサージ何ていらないって言われたら……それでも、私は…」

 何度目かになる自問自答を繰り返し、少しずつお風呂に近づいていく。チャシャネコは、亡霊に気配を気付かれない様に隠れている。本当ならチャシャネコは、すぐにでもお風呂に行きたいが。

 亡霊は、ご丁寧にもチャシャネコ避けの結界を張っており、智莉がドアを開けない限り中に入れない。

 「智莉っちファイトだよ!」

 小さな声でチャシャネコが声援を送る。チャシャネコの声援で覚悟を決めたのか、智莉がお風呂のドアを開けようと手を伸ばす。

 だが、ドアに指が溢れる前に中から誰かがドアを勢い良く開ける。

 一瞬亡霊(兄様)が出てきたのかと、慌てる智莉だが。気配の違いに気付き、魔力を使い誰かを調べ様とするが。

 「来るなら来るでありんす」

 ドアを開けた少女がお風呂に戻っていく。そして、その後を隠れていたチャシャネコが追い掛ける。

 少しの間固まっていた智莉だが、すぐにチャシャネコの後を追い掛けお風呂場に入っていった。

 「お前ら何してんだ?」

 服を脱ぎ脱衣徐をでて、湯船に行くと。タオルを巻いてお湯に浸かっている亡霊が、呆れた様に智莉とチャシャネコに言う。

 「私は、兄様の疲れをマッサージでとりに来ました」

 「覚悟を決めてチャシャネコさんは、マッサージを教えに来たよ」

 二人が殆ど同時に答える。湯船に浸かりながらの亡霊が、隣で湯船に浸かっている少女を指差すと。

 「その前に、智莉こいつの髪と体を洗ってくれ」

 そう言いながら湯船から出て少女を抱き上げると、洗い場の椅子の上に優しくおろす。

 「わかりました兄様、任せて下さい」

 少女が誰か聞く前に亡霊にお願いされ、智莉が笑顔で頷き少女の元に向かう。

 「チャシャネコ、お前も入るなら体をきちんと洗え」

 「えー、チャシャネコさん毛繕いしてるから綺麗だよ」

 「駄目だ、洗わないなら入るな」

 亡霊に強めに言われ、ブーブー言いながらもチャシャネコも洗い場に向かう。

 「兄様、この子は?」

 少女を洗い終わった智莉が、目の前の少女を見る。年齢は12か13歳くらいだが、ここにいる子供達では無い。

 「ああ、智莉は知らないか」

 亡霊学祭そう言いながら、手で少女を呼ぶ。少女が智莉から離れ亡霊の隣に行き、亡霊に抱き付く。

 「おい、意気なり抱き付くな。それと、洗ってくれた智莉にお礼と自己紹介しろ」

 亡霊にそう言われて、少女が智莉の方を振り向く。

 「わっちを洗ってくれて、ありがとうでありんす。わっち黒姫でありんす」

 「黒姫って、兄様が持ってる妖刀の黒姫?」

 「そうでありんす。黒姫は亡霊の妖刀()でありんす」

 黒姫がそう言って元の姿に戻る。亡霊の手には少女ではなく、黒い刀が握られていた。

 「本当に黒姫なのですね!」

 智莉が驚きの声をあげると、いつの間にか少女に戻った黒姫が笑顔で頷く。

 「わ~、チャシャネコさんも見たいよぉ~」

 「チャシャネコさん何してるんですか!?」

 「泡のオバケデありんす!」

 チャシャネコの声がした方に振り向くと。そこには、全身を泡で覆われ泡のお化けと化したチャシャネコがいた。

 「チャシャネコさん、異様に泡だちが良いんだよね。でも、泡で前が見えないよ」

 「こっち来ないでくれでありんす」

 前が見えなくても、気配だけで黒姫を追い掛け始めるチャシャネコと。本気で逃げ惑う黒姫を見ながら、智莉がどうしようか亡霊を見ると。

 亡霊は必死に笑いを堪えているのか、チャシャネコ達から目を背け笑いを噛み殺していた。

 「兄様、黒姫ちゃんが泣きそうですよ」

 チャシャネコに捕まり。全身泡まみれにされてる黒姫の目には、うっすら涙が溜まり始めていた。

 「それは、不味いな!」

 智莉の一言に、亡霊が一瞬でチャシャネコに湯桶を投げて倒すと。黒姫にかけより、黒姫の頭を撫でて必死に泣き止ます。

 「意気なり痛いよ亡霊(ファントム)っち」

 チャシャネコが湯桶を持ちながら抗議の声をあげる。投げられた湯桶には水も入っており、チャシャネコの泡は落とされていた。頭を撫でてようやくご機嫌になりつつある黒姫を見ながら、亡霊が注意する。

 「チャシャネコ、お前黒姫の能力知ってるだろ。普段の姿なら俺が制御出来るけど、少女の姿の時は制御出来ないから。黒姫を絶対に泣かすな」

 「それは、不味いね。チャシャネコさん了解です」

 黒姫の本気の時の能力を知ってるチャシャネコが、何時もの笑顔を少し崩しながら頷く。

 「それより、マッサージって何の事だよ」

 全員が湯船に浸かるなか、亡霊が思い出した様に言う。

 「それは、チャシャネコさんのアイディアだよ」

 お湯の中を、犬かきで泳いでいるチャシャネコが答える。

 「そうすれば、兄様の疲れがとれると言っていたので」

 智莉が申し訳なさそうに小声で言う。亡霊は一度溜め息を吐いた後、智莉の後ろに回ると。意気なり抱き上げ、暖かくしておいた平らな場所にゆっくりおろす。

 意気なりの事で固まる智莉の緊張をほぐす様に、ゆっくりと優しく亡霊がマッサージをしていく。

 「あ、兄様?」

 緊張が解けてきたのか、智莉が兄の事を呼ぶが。

 「俺より、智莉の方が疲れてるだろ」

 亡霊はそう言いながらマッサージを続ける。肉体だけでなく、体内の魔力の流までほぐされ。余りの気持ち良さに、智莉が眠りに落ちる。

 「寝たか、悪かったなチャシャネコ」

 「良いよ亡霊(ファントム)っち。お礼にチャシャネコさんにも、後でマッサージしてね」

 チャシャネコが寝ている智莉に魔法を掛けて、身体に着いてる水気を吹き飛ばしていく。

 「後でちゃんとマッサージしてやるよ。それと、武器は地下室の入り口の側に注意書と一緒に置いてある。

 智莉の部屋は、一番奧の隠し部屋だから。ちゃんと連れてって、ベットに寝かせてくれ」

 いつの間にか亡霊は忍び装束を着ており。黒姫も黒い和服を着て黒い布で顔を隠している。

 「チャシャネコさんも着いて行こうか?」

 普段滅多に見せない亡霊の本気の時の姿と装備を見ながら、チャシャネコが訪ねるが。

 「大丈夫だ。それにいざとなったら、黒姫を使うからな」

 名前を言われた黒姫が頷く。

 「そっか。ならチャシャネコさんはいらないね」

 チャシャネコそう言って智莉を優しく抱き起こし、亡霊が用意していた寝間着に着替えさせていく。

 「チャシャネコ、もし俺のいない間に姉さん。黄昏の魔女が来たら戦わずに、智莉を連れて逃げてくれ。

 智莉は戦おうとするだろうが、力付くでも止めてくれ」

 そう言い残し、亡霊と黒姫が風呂場から出ていく。亡霊の気配が消えると、チャシャネコが智莉の額をつつく。

 「もう行ったよ、智莉っち」

 チャシャネコ概念にそう言うと、寝ていた筈の智莉が起き上がる。

 「亡霊(ファントム)っちも本当に妹思いだね。だから、ちゃんと言う事聞いてあげなよ」

 チャシャネコが智莉の頭を撫でる。頭を撫でられた智莉は、プイと顔をそらすとそのままお風呂場を出ていく。

 一人残されたチャシャネコは、笑顔で呟く。

 「本当に似た者同士だよ。亡霊(ファントム)っちと智莉っちは」

 智莉のいた場所には、一枚の紙が置いてあり。そこには、兄様をお願いしますと書いてあった。 

登場人物

影霧 詩音…校長の暗殺の為に、学園にいる暗殺者。本来の性別は男だが、薬により少女になっている。

暗殺者としては亡霊ファントムと呼ばれ。複数の二つ名を持つ一流の暗殺者でありながら、魔力が全く無い。

詩音になっている際は、薬の副作用で魔法が使える。魔法ランクは3



チャシャネコ…暗殺者の少女で、猫耳と猫の尻尾が特長。自称亡霊ファントムの恋人を名乗り、亡霊にいつか愛して、犯して、殺して欲しいと願っている。

自分自信の事をチャシャネコさんと呼び、それ以外の二つ名で呼ばれるのを極度に嫌う。


智莉…亡霊(ファントム)の義理の妹。孤児院とかしてる廃協会に住んでいて、子供達の面倒を見ている。賢者の石と何かしらの関係がある。

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