学園交流のお誘い
目を開けると、そこは草木が生い茂る屋内庭園の一角だった。
まだ、少女の事を考えている思考を切り替え、側にいる雪を見る。
「無事に解除できましたよ」
二人が生きている以上、無事に解除出来ている訳だが、一応声に出し言葉にする。
雪は無言で頷くと詩音の手を握る、そして握った手の甲に口づけをした。
『約束は、守ります』
そう書いた紙を見せながら、雪が初めて口を開く。
「ありがと、新な我が主」
少しだけ笑顔を浮かべる雪を見て、その額に軽くデコピンを入れる。痛かったのか、雪が額を摩る。
「我が主では無く、詩音と呼んで下さいね。間違えると次は、頭に拳骨です」
片手を強く握り閉めている詩音を見て、雪が無言のまま何度も頷く。
その後、施設が襲撃を受けた時の事。拘束札を誰に渡されたか質問をしたが、帰って来た答えは。
「襲撃を受けたのが3年前、襲撃した人物は不明。拘束札に関しては、記憶に無く、気付いた時には拘束の術が完了した後だそうだ」
保健室の中で桃木に、雪から聞いた情報を話す。桃木は、当時の資料を見ながら答える。
「確かに雪がいた施設が襲撃を受けたのは、3年前であってるな。襲撃人数は一名、応戦した暗殺者の中には二つ名を持つ者も数名いたらしが全滅。
それと、拘束札だが凪茶 雪を見付けた聖騎士は気付いていなかったらしく、記録には何も書いてない……それより、何で私にこの事を調べさせた、納得がいる答えが欲しいんだが?」
資料を探したんだから、私にも教えろと。桃木が遠回しに言ってくる。
「雪が覚えてるのは、襲撃を受ける直前奇妙な蝶を見たらしい。ただ、どんな蝶だったかは覚えていない。
だから、他にも蝶を見たん人物がいないか資料を見せて欲しかったんだよ」
桃木が、もう一度資料に目を通す。
「資料によると、現場に駆けつけた聖騎士の数名が、不思議な蝶が飛んでいたと上に報告している様だな。
ただ、上が蝶の正確な事を聞きに言ったが、詳しく覚えている者はいなかったそうだ。………まて、琴音が君の仕事の最中に現れた時も、蝶を見たと言っていたが。
亡霊お前は、その人物は死んでいると。君が殺したと言っていた筈だが?」
確認するような口調で、桃木が詩音に言う。詩音は、目を閉じながら答える。
「間違いなく殺した。ただ、そう思い込まされてるかも知れない」
「君が騙されるか、相手は誰だったんだ?」
「黄昏の魔女」
その二つ名を聞いた桃木は、ただ言葉を失った。
黄昏の魔女。他にも、夜の支配者、幻影の主、等の複数の二つ名を持つ実力者だが。
最も有名なのは、死神に襲われ返り討ちにし死神を殺した事から名付けられた。
「死神殺しの魔女だと!」
ようやく言えたのはその一言だった。死神を殺した人物を、殺したと言う詩音を見ながら、力無く椅子に腰掛けお茶を咽に流し込む。
「…黄昏の魔女は、襲撃する前に死を告げるとされてる。黒死蝶をターゲットに見せるけど、あれは黄昏の魔女の魔法の一つで。死を知らせる以外にもう一つ、蝶を見た相手に幻影を見せて操る事が出来る。
……最後に止めを刺したあの時も黒死蝶が飛んでたから、もしかしたら黄昏の魔女は、生きているかもしれない」
そう言った後、詩音も何も言わなくなる。暫くの沈黙の中、生徒が保健室に来る気配に二人が気付く。
「もし黄昏の魔女が生きてるな、必ず俺を狙って来る。そして、廻りの人物にも何かしらの事をしてくる筈だから。
桃木その時は、俺を売ってでも生きて欲しい。そして、馬鹿な事を仕様とする連中を止めて欲しい」
詩音がそう言いながら、小袋を取りだし桃木の前に置く。
「さっきのお願いの依頼料、中には純血の戦乙女の血が入ってる」
龍の涙の更に、数百から数千倍の価値があり。他に確認されているのは、聖騎士魔導博物館のみであり。その価値と効力から国宝とされ、数百を越える聖騎士と、数十名の精鋭中の精鋭の聖騎士。それと、二人つ名を持つ最強の聖騎士が数名守りについている。
「これで足りないなら、純血の堕天使の血も渡せるけど」
純血の戦乙女の血と同じ場所で、さらに厳重に守られている、国宝を目の前に置かれ。桃木の思考が完全に機能停止をおこし、煙を吐き出す。
「桃木大丈夫か?。これは、机の引出しの中に容れとくぞ。それと、零って言ったけ?。ももちゃんが復活したら、さっきのを正式な依頼で出すかって伝えといて。
それと、パートナーが決まった事も」
そう言って詩音が窓から出ていく。その後保健室に来た生徒が、桃木が思考停止しているのを、何かの病気だと勘違いして大騒ぎが起き。暫く桃木は休暇をとらされた。
そんな、桃木が無理矢理とらされた休暇から帰って来て三週間が経っていた。
その間生徒達は、聖騎士を決める大会に向けて、特訓を繰り返していた。そして、朝の授業が始める30分前に保健室のドアがノックされる。
誰が来たか分かるが、一応「どうぞ」と声をかけておく。声を聞いて、ドアを開けて入って来たのは
「死にますわ」
ボロボロになった、想像道理の人物だった。あの後、黄昏の魔女の事を警戒した詩音が、個人特訓の内容をより実践的にそしてよりハードにしていた。
その所意で、保健室には常時誰か個人特訓を終えた犠牲者が来る。
「今日は、自力で歩いて来れたようですね。何時も通りそこの椅子に座って、待っていて下さいね」
最初の頃は、自力で来れずに雪に運ばれていた犠牲者達だったが、最近はゾンビの様な足取りではあるが。自力で保健室迄来れる様になっていった。
「…死にますわ…きっと死にますわ」
うわ言の様に、死にますわしか言わない美和の口に、タイミングを見計らい薬をいれていく。
全ての薬が無事に口に入り、美和が飲み込んだのを確認し桃木は資料の整理を始める。
授業が始まる10分前に、美和が椅子から立ち上がる。そして、時計を見て落ち着いた様に椅子に座り直す。
「桃木先生、今日こそ死ぬかと思いましたわ」
「そう、今日はどんな特訓をしたのかしら?」
桃木がお茶を入れて、美和の前に置く。そして、自力の分を飲み始める。
「今日は魔力切れ寸前迄魔法を使った後に、詩音さんとの勝負ですわ。それも5回もですわよ」
「それは、大変だったでしょうね。でも、その分確実に強くなってるなら良いんじゃないかしら」
「それは、そうですわね。でも、私はその後バイトもあるので、もう少し手加減をして欲しいですわ」
ほぼ毎日誰かと個人特訓をして、その後メイド喫茶でのバイト。バイトがない日は、暗殺者をこなしている詩音の次くらいに、美和もハードスケジュールで動いていた。
朝から詩音の地獄の特訓、無い日は詩音の変わりに雪が特訓を付け。その後は授業に出て普通に授業をこなし、放課後はメイド喫茶でバイトである。
そんな、ハードスケジュールのお陰で個人特訓を受けている中で、一番体力魔力共に成長しているのは美和だった。
ただ、本人からしては地獄の様な日々だろうが。授業が始まる5分前になり、美和がお茶を飲みお礼を言って保健室を出ていく。
美和を見送り、保健室に残ってる雪に声をかける。
「凪茶、授業が始まるから。教室に行ったらどうだ」
すでに桃木が裏の顔を持っている事を凪茶 雪は知っているので、強めの口調で言うが。
『我が主[詩音]が来るまで、ここで待つつもりです』
紙に書いた文字を見せる。ただ、文字を開店見せている間も視線は保健室のドアに向けられていた。
ほぼ毎日に詩音が来るのを、保健室で待つ雪の姿は訓練された犬の様だった。
(犬の様は酷いか?、だがしかしな)
他にも、夫の帰りを待つ若い妻の姿を想像したが。ドアが開いて詩音の姿が見えた瞬間、無言で無表情のまま近付く。
ただ、顔こそ無表情だが全身からは、褒めて撫でてというオーラがが滲み出ていた。
そして、頭を撫でられると無表情のまま目を瞑る姿を見て。
(やはり、犬の方だな)
そう思った桃木だったが、詩音に用事があるので保健室を出ようとする二人を呼び止める。
「詩音、君宛に他の学園から学園交流の申し込みが来てる。一応断る事も可能だが、どうする?」
「折角のお誘いなら、行来ますけど。他の学園って何処です?」
詩音が通っている、聖騎士魔導学園の他にも。真命流聖騎士学園、幻影女学園、聖魔導師学園、故流騎学園、聖道学園、聖白魔導学園、和四季魔術学園の7学園がある。
何処の学園からの学園交流なのかと、訪ねる詩音に対し。桃木は、7枚の紙を見せながら答える。
「全学園からのお誘いだ」
登場人物
影霧 詩音…校長の暗殺の為に、学園にいる暗殺者。本来の性別は男だが、薬により少女になっている。
暗殺者としては亡霊ファントムと呼ばれ。複数の二つ名を持つ一流の暗殺者でありながら、魔力が全く無い。
詩音になっている際は、薬の副作用で魔法が使える。魔法ランクは3
三條 美和…学園に入学生した詩音に勝負を吹っ掛け負けた少女。学年は琴音と一緒で詩音より上。
自己申告の魔法ランクは5だが、本当は3種類の属性魔法が使えランクは6である
勝負に負けてから詩音に興味を持ち、御近づきになろうと努力をしている。
桃木 桃…表の顔は学園の保健室の先生。裏の顔は、情報収集を専門とする暗殺者集団の頭
詩音とは、何度も依頼を提供してきた依頼主であり。今は、学園の校長の暗殺の依頼を、校長に頼まれて詩音に依頼している。
零…桃木の組織の一人。性別は、男。実力は不明だが、詩音の監視や、桃木の護衛等を任される位の実力はある。
凪茶 雪…学年は2年で女
元暗殺者であり、暗殺者を育成する施設の出。拘束札を詩音に解除して貰い、詩音を我が主マイロードと呼んでなついている。




