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暗殺者は今日も女装をする。  作者: 木陰の蛇
32/66

決着

 全身を包み込んだ黒い靄の様な物が消えると。そこには、全身に黒い入れ墨の様な魔方陣が浮かび上がり、自分の身長より長い尻尾を3本生やしたチャシャネコがいた。

 「にゃぁ~ん、この姿久しぶりだよ。上手く扱えるかな?」

 そう言いながら、軽く右腕を無造作に振る。ただそれだけの事で、中央センターの右側が切り裂かれ崩れ落ちる。

 「う~ん、いまいち」

 威力に納得がいかないチャシャネコが、数回空に向かって両手を振るう。その度に、雲が切り裂かれ大気が鳴く。

 「この位かな?。さて亡霊(ファントム)っちは、何処にいるかな?」

 空気中の匂いを嗅ぐ為に、鼻で息を吸うが。

 「にゃ~~~~~~!?。鼻が、鼻が曲がるよ!!」

 息を吸った瞬間鼻を刺すような刺激と共に、チャシャネコが嫌う匂いが鼻を襲う。

 余りの事に、チャシャネコが鼻を押さえてうずくまる。暫くうずくまっていたチャシャネコが顔を上げる、そして嗅覚では無く聴覚によって獲物の位置を確かめる。

 だがそれも、周囲から出される亡霊(ファントム)が仕掛けた擬音で正確な位置が分からなかった。

 悩んだ末にチャシャネコは、一番手っ取り早い方法をとる。それは

 『にゃっ』

 魔力を込めて()く。魔力がこもった鳴き声は、衝撃波となり周囲の物を破壊していく。

 チャシャネコの周囲約半径1キロが、チャシャネコのひと鳴きで更地に変わった。

 「にゃは、やり過ぎたかな?」

 今ので亡霊(ファントム)が死んで無いか、チャシャネコが心配した時。何かが高速で飛んできて、チャシャネコの足元に刺さる。

 「にゃあ!!!」

 自分の足元に刺さった細長い杭を見て、チャシャネコが大きく後ろに跳んで距離を取ろうとするが。一瞬早く杭に込められていた魔法がチャシャネコを襲う。

 込められていた魔法は、雷魔法の中でも威力と速度のバランスが良い雷撃だった。一瞬雷魔法の効果により、全身の筋肉が硬直する。

 硬直により動けないチャシャネコの上空でなにかが爆発し、大量の紙が雨の様に降り注ぐ。

 「にゃぁっ!、にゃあぁあぁぁぁぁ!!」

 降って来た紙に触れたチャシャネコが、叫び声をあげ紙を薙ぎ払う。紙には痛みを与える幻術が込められていた。

 幻術の痛みが襲う紙が触れた右手を、左手で浅く切り裂く。幻術の痛みを、現実の痛みで打ち消したが。

 「にゃにゃ、これは下手に動けないかな?」

 薙ぎ払った紙は、辺り一面に広がる。それだけなら上空を移動すれば良いだけだが、薙ぎ払った紙は白色から赤色に変わっていた。

 赤くなった紙を警戒しながら、亡霊(ファントム)のいる場所を何とか探ろうとするが。

 探るよりも先に、背後から銃弾が襲ってくる。さらに、殆ど同時に右側と左側の二ヶ所からも銃弾が襲う。

 (銃を自動で撃てる要にしての狙撃、これじゃあ場所が分かんない)

 そう考えながら、勘で僅かに遅れた右側に向かって魔力を込めて鳴く。そして、残りの二つの弾丸を二本の尻尾で撃ち落とす。

 (紙が魔力に反応しない……にゃ!。只の紙だよ、騙された!!!)

 鳴き声に半分しない紙を拾い上げると、それは赤い色の只の紙になっていた。

 紙が只のブラフだと分かった以上、狙撃をしてきた場所に急いで向かうが。左側も背後も狙撃に使った銃と、自動的に撃てる要にした仕掛けだけが残されていた。

 (右側だったのかな?)

 そう思い、確認の為に更地にしたビルの跡地に向かう。崩れたビルの残骸ごと、綺麗に何も無くなった地面を何歩か歩いた時。何かを踏んだ感触と共に、地面に埋まっていた地雷が作動する。

 咄嗟に防衛魔法をはろうとするが、地雷の爆発と同時にチャシャネコを囲う要に、石の柱が5本地面から突きだす。

 地雷の爆発と同時にでた5本の柱は、五柱封(ごちゅうふう)じと言う石の魔法で、柱の中の魔法の使用を一時的に封じる事が出来る。

 防衛魔法を封じられたチャシャネコは、爆発と同時に3本の尻尾で身体を包み込み、爆発から身体を守る。

 爆発の衝撃で人形の様に吹き飛ばされ、地面を転がるチャシャネコだったが。身の危険を感じ尻尾を地面に突き刺し、転がる軌道を変えて立ち上がる。

 立ち上がったチャシャネコの目の前には、自分が転がって居たであろう場所に突き刺さる氷の槍だった。

 ただ、チャシャネコの目には氷の槍よりも、その先に立っている亡霊(ファントム)に向けられていた。

 『にゃ』

 魔力を広範囲に広がる様にするのでは無く、小さく球体の様にして鳴く。鳴き声に込められた膨大な魔力の所意で、空間が歪み触れた物を一瞬で粒子レベル迄破壊していく。

 そんな、触れただけで破壊される魔力の塊を前に亡霊(ファントム)は、ただ真っ直ぐにチャシャネコに向かって走り出す。

 そして、魔力の塊まで僅か一歩の場所で腰に差していた刀で魔力の塊を、真っ二つに叩き斬る。

 そして、そのまま真っ直ぐに走り抜けると、氷の槍を掴み横薙ぎに振るう。氷の槍は、死角から強襲してきたチャシャネコの尻尾の一つを防ぐ。

 残り2本の尻尾を、氷の槍では防げないと分かった亡霊(ファントム)が氷の槍を離し、刀を構え瞬速の残撃を放ち残りの尻尾の強襲を防ぐが。

 尻尾を囮に使い、懐に入り込んだチャシャネコの手刀が咽目掛け飛んでくる。

 「つぅ!」

 刀から手をすぐ離し、両手を咽の前でクロスさせ手刀を防ぐが。空いているもう片手で、心臓を狙いチャシャネコが手刀を放つ。

 亡霊(ファントム)が腕で防ごうとするが、腕を貫いたチャシャネコの手がそれを封じる。

 チャシャネコの手刀が亡霊(ファントム)の胸に刺さり、辺りに血が飛び散る。

 ただ、その飛び散った血は

 「にゃんで?」

 亡霊(ファントム)の胸を貫いく筈が、指の第二間接の部分迄刺さり止まっており。切断された腕から、大量の血が吹き出していた。

 腕を切り落とされ、一旦距離を取ろうとするチャシャネコに抱き付く。亡霊《ファントム》がチャシャネコに抱き付いた、その瞬間亡霊(ファントム)とチャシャネコを亡霊(ファントム)の背後から飛んできた光の槍が貫く。

 光の槍に貫くかれた二人が地面に同時に倒れた。だが、胸を押さえながら亡霊(ファントム)が立ち上がる。

 「にゃはっ。……チャシャネコさんの負けだね」

 腕を切り落とされ、心臓を貫かれたチャシャネコが、血を吐き出しながら笑顔を浮かべる。

 「亡霊(ファントム)っち、止め刺さないの?」

 「刺したくても、両手が使えない」

 そう言いながら、切り裂かれた様に抉れている腕を見せる。力無く垂れ下がってるその手には、血に濡れた細い糸が巻き付いていた。

 「そっか。咽を守ると見せ掛け、手に巻き付けた糸を垂らしてチャシャネコさんの腕が糸の輪っかに入った瞬間、ひぱって腕を切り落としたんだ」

 咽を守る瞬間糸を垂らし、チャシャネコの腕が糸の輪の中に入った瞬間腕を左右に開き、糸が高速で引かれ中に合った腕を切り落としたが。

 亡霊(ファントム)腕は、チャシャネコの片手で貫かれていた。その状況で腕を左右に開いた為に、釘で壁に刺さった紙を横に引っ張った時の様に、無惨に千切れ肉が抉れていた。

 そんな様子の亡霊(ファントム)を見ながら、チャシャネコが喋る

 「亡霊(ファントム)っち、チャシャネコさんと遊んでくれたお礼に、一つ教えてあげるね。

 亡霊(ファントム)っちが死んだと思っているあの少女だけど、死んでないよ」

 「チャシャネコ、俺の記憶を見たんだろ。なら、それがあり得ない事なのは、わかるよな」

 亡霊(ファントム)のその声に、殺し合いの最中ですら感じなかった、恐怖をチャシャネコの全身を襲う。

 「嘘じゃないよ!。この拘束札の本来の持ち主の施設を、破壊したのがあの少女だから。

 そして、その時にあの少女に作られた拘束札が、亡霊(ファントム)が解除仕様としている、この拘束札だもん」

 「それって、何年前だ」

 少女が死んだのは、5年前だが。

 「作られたのは、3年前だよ」

 黙って暫く何かを考えていた亡霊(ファントム)が、呟く様に尋ねる。

 「拘束札(チャシャネコ)を、少女が作った証拠はあるか?」

 その声は、無いと言って欲しそうにチャシャネコには聞こえたが。

 「チャシャネコさんの今の姿を知ってるのは、元老院最高議長のあのハゲジジイを除けば。戦って勝った亡霊(ファントム)っち。そして、チャシャネコさんと亡霊(ファントム)っちの戦いを見ていた、あの少女だけだよ」

 「そうか、ありがとうチャシャネコ」

 チャシャネコにお礼を言った瞬間、拘束札が解除条件を感知して消滅する。

 一瞬で視界が闇に染まった暗闇の中、ただ少女の事を考えていた。

 

 

 

 

登場人物

影霧 詩音…校長の暗殺の為に、学園にいる暗殺者。本来の性別は男だが、薬により少女になっている。

暗殺者としては亡霊ファントムと呼ばれ。複数の二つ名を持つ一流の暗殺者でありながら、魔力が全く無い。

詩音になっている際は、薬の副作用で魔法が使える。魔法ランクは3


チャシャネコ…暗殺者の少女で、猫耳と猫の尻尾が特長。自称亡霊ファントムの恋人を名乗り、亡霊にいつか愛して、犯して、殺して欲しいと願っている。

自分自信の事をチャシャネコさんと呼び、それ以外の二つ名で呼ばれるのを極度に嫌う。


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