遊びのチャシャネコ
廃墟のビル街に銃撃音が鳴り響く。今も放たれた弾丸が、ビルの一角を撃ち砕いた。
狙撃主は、すぐに次弾を手動で装填すると、すぐさま引き金を引く。物凄い爆発音と共に、大人の手のひら程の長さがある弾丸が獲物がいる場所を破壊する。
対物ライフル。昔は対戦車ライフルと呼ばれていた、戦車を貫く為に作られたライフルである。
その威力は凄まじく、普通の車なら一撃で破壊出来。人間に向かって撃てば、当たった部位を粉々に吹き飛ばす威力がある。
普通なら腕の側を通っただけでも、腕を吹き飛ばす威力がある弾丸を。チャシャネコは片手で軌道をずらしかわす。
そして、狙撃主である亡霊の居場所を突き止めると、空中を蹴って最短距離で襲いに行く。
亡霊がいる、廃墟の部屋に飛び込んだチャシャネコが見たのは、部屋に置かれた爆弾だった。
「にゃ?」
チャシャネコが鳴いた瞬間、爆弾が作動し爆発する。仕掛けた爆弾は、爆発すると、周囲に数千の鉄球を撒き散らすタイプの爆弾だが。
「にゃははははは。チャシャネコさんは、こんな事じゃ死なないよ?」
周囲の壁が鉄球により穴だらけになるなか、無傷のチャシャネコが笑う。
「次は何をしてくれるのかな?」
チャシャネコがそう言って部屋の中を歩くが、突然至近距離から放たれた弾丸が、チャシャネコの頭を貫こうとするが。
「危ない、チャシャネコさんびっくりだよ!」
弾丸は、驚異的な反射神経でかわしたチャシャネコの横を抜け、後ろの壁だけを破壊する。
「っち、今ので死んどけよ」
気配を消して至近距離から襲撃した亡霊が、舌打ちをしながら白い拳銃とナイフを構える。
「ヤッパリ亡霊っちか。戦い方からチャシャネコさんは、そうじゃないかと思ったよ」
誉めてと尻尾を振るチャシャネコに、容赦無く近距離で引き金を引く。
それを笑顔のままで、かわしたチャシャネコが亡霊の心臓目掛け右手で鋭い突きを放つ。
その右手目掛け亡霊が左手のナイフを高速で振るい、右手の拳銃でチャシャネコの頭を狙うが。
心臓の狙いを変えて、右手を襲うナイフを手刀で下に弾き飛ばしたチャシャネコが、弾き飛ばしたナイフを蹴り上げる。
蹴り上がったナイフは、亡霊の右腕に向かって高速で飛ぶ。そのままでは、腕に刺さると判断し腕を引き拳銃で受ける。
「にゃは」
亡霊が、拳銃を引いたのを見たチャシャネコが、頭に向かって頭突きをかます。
「っち!」
チャシャネコの頭突きを、後ろに下がってかわす。そして、拳銃を仕舞い両手でナイフを構える。
「にゃぁ~、接近戦でチャシャネコさんに勝てると思ってる?」
チャシャネコの両手を、黒い靄の様な物が覆う。亡霊は、チャシャネコの言葉を無視して、ナイフで斬りかかる。
右手で首を狙い、左手でチャシャネコの右手を狙う。チャシャネコは、身体を半分後ろにずらし、半身の構えになり腕を狙ったナイフをかわすと。左手で首を狙ってきたナイフを掴み、そのまま握り潰す。
ナイフを握り潰したチャシャネコは、そのまま腕を捕まえに行くが。腹部を襲った衝撃で、腕を掴もうとした手が空を切る。
「にゃ、蹴り!?。腕が邪魔で見えなかったよ」
亡霊は、チャシャネコが半身の構えになった瞬間。右腕を狙った腕で死角を作り、蹴りを放っていた。
「にゃは。今のは、チャシャネコさんでもちょっと痛いよ」
蹴りを食らった瞬間、衝撃を逃がす様にみずから跳んだチャシャネコが、お腹を押さえながら言うが。
「普通なら、内臓破裂してる筈何だが」
鎧通しの応用で、威力をそのまま内臓にだけに与えた筈なのに、殆ど応えていないチャシャネコを見ながら次の攻撃の準備をする。
「う~ん、チャシャネコさんの気のせいかな。亡霊っち、弱くなった?」
チャシャネコが首を傾げながら、不思議そうに尋ねる。
「さあな、チャシャネコがそう思うなら。そうなんじゃないか?」
次の攻撃方法の時間稼ぎをする為に、チャシャネコの会話にのる。
「そうなんじゃないかって、亡霊っちダメだよ。チャシャネコさんを殺せるのは、亡霊っち位なんだから。
ちゃんとチャシャネコさんを、愛して、犯して、殺してくれないと。チャシャネコさん、泣いちゃうよ」
「なら、殺してやるから。そこに膝まずけよ、一瞬で頭を撃ち抜いてやるから」
床を指差し、拳銃を構える。後少しで準備が終わる直前、チャシャネコが一瞬で亡霊の顔すれすれに、自分の顔を近付ける。
「っ!?」
すぐに後ろに跳んで、距離をとる。チャシャネコは、一歩も動かずに両手を上げる。その両手には、白い拳銃とナイフが握られていた。
「油断しすぎだよ。今までの戦いで、本当ならチャシャネコさんは5回亡霊っちを殺してるよ」
チャシャネコがそう言いながら、拳銃とナイフをビルの外に投げる。
「逆にチャシャネコさんを、殺すチャンスが9回も合ったのに、亡霊っちは、チャシャネコさんを殺せてない」
チャシャネコの言う通り、チャシャネコを殺すチャンスは9回合った。だが亡霊は、事如く失敗していた。
「何で本気を出さないのか分からないけど、出さないならチャシャネコさん殺すよ」
そう言ったチャシャネコの目の前に、虚空から少女が現れる。
「チャシャネコ、てめえ!」
その少女を見た亡霊が、感情の間々に叫ぶ。そんな、亡霊を見ながら、チャシャネコが少女の首に手を当てる。
「にゃ~。チャシャネコさん、チャシャネコさんだから、ここが現実では無い事。ここにいるチャシャネコさんは、本物じゃ無い事も知ってるよ」
チャシャネコが少女の首に手を当てたまま、話します続ける。
「それに、チャシャネコさん。亡霊っちが何をしに来たのかも知ってるよ。
チャシャネコさんは、全力で愛して、犯して、殺して欲しいのに。亡霊っち全然本気じゃないし、弱いんだもんチャシャネコさんがっかりだよ。
だから、拘束札に触れた亡霊の記憶から、亡霊っちの大切な人を呼び出してみたよ」
チャシャネコが少女を見ながら言う。亡霊の記憶を元に、チャシャネコに作られた少女は何も言わず、動こうともしない人形の様だが。
「チャシャネコ、本気なら出してやる。だから、そいつを今すぐ俺の目の前から消せ!」
亡霊が叫ぶ。黒い無地の仮面から見えるその目には、怒りがあったが。怒り以外の感情も強く出ていた。
その感情は、恐れと悲しみだった。だがその恐れと悲しみは、目の前で大切な人が殺されるかも知れない恐れと、大切な人を失う悲しみとは違かった。
「亡霊っちもそんなを目ををするんだ、チャシャネコさんびっくりだよ。
だからごめんね亡霊っち、この子殺してチャシャネコさんが知らない、亡霊を見たくなちゃった」
チャシャネコが言うと同時に少女の首を手刀で切り裂く。ほんの少しの差で止めるのが間に合わなかった亡霊が、少女の身体を抱き抱え頚を押さえてしけつを施す。
「無駄だよ亡霊っち、その子は死ぬよ。チャシャネコさんは、中央センターで待ってるね」
いまだに止血をしている亡霊にそう言って中央センターに向かう。
(俺は何をしてるんだ?)
少女の首を押さえて、止血をしながら思う。これは、現実では無い。少女も元々生きていないデータでしかない。
今は、チャシャネコを殺す為の準備をすれば良いだけである。なのに、身体は少女の止血を止めようとしない。
どれ程の間のそうしていたか、もう冷たくなった少女を抱き抱える。
「…………」
誰にも聞こえ無いほど小さな声で少女に何かを呟き、床にか寝かせ手を胸の上で交差させる。
そして、自分が被っていた黒い無地の仮面を少女の顔に被せた。
「にゃん、やっと来たね亡霊っち………あれ?、何時もの黒い仮面つけて無いんだ!?」
亡霊の素顔を見てチャシャネコが驚くが、すぐになにかを想いだし満面の笑みを浮かべる。
「にゃははん。そう言えば、亡霊っちに始めてチャシャネコさんが合った日も、仮面つけて無かったね」
何を思い出したのか、チャシャネコの頬が赤く染まる。
「あの時だよ、チャシャネコさんが亡霊っちに恋したのわ!
そして、チャシャネコさんが始めて殺されると思い、死にかけたのわ!!」
チャシャネコが心から嬉しそうに叫ぶ。
「今度はちゃんと愛して、犯して、殺してくれるよね亡霊っち。
じゃないと、チャシャネコさんが殺すことになるよ」
チャシャネコの両手を覆っていた黒い靄の様な物が、チャシャネコので全身を包み込む。
それを合図にしたように、亡霊も動いた。




