変わった詩音?
保健室で桃木が書類の整理をしていると、保健室のドアが数回ノックされる。
「どうぞ、入って大丈夫よ」
書類に目を通すのを辞め、今来た人物の方を向く。そこには、メイド服を着たままの詩音がいた。
「その格好で来るとは、どうしたんだ?」
「後で説明する!…っち、誰も来なかった事にしてくれ」
詩音がそう言いながら、掃除用具の中に隠れる。詩音が隠れてからほんの数十秒程度で、数名の生徒が保健室に駆け込んでくる。
「桃木先生、今ここに詩音さんが来ませんでした?」
「来てませんよ」
書類の方を向きつつ答えると、失礼しましたと言って、生徒達が保健室から出ていく。
保健室から生徒が遠ざかったのを確認してから、桃木が保健室のドアの鍵をかける。
「もう、出てきて大丈夫だぞ」
詩音が隠れた掃除用具に向かって言うが。
「悪いなももちゃん」
違う所から詩音の声が聞こえ、振り替えるとベットのしたから詩音が出てきた。
「いつの間に移動したんだ?。いや、それよりどうしたんだ。ここに逃げ込む何て、珍しいじゃないか」
桃木が椅子に腰掛け、机の上に置いてあったお茶を飲む。
「移動は最初からだよ、一応保険でな」
桃木の反対側に座った詩音が、そう言いながら茶菓子に手を伸ばす。
「茶菓子を食べる前に、質問に答えろ」
伸ばされた手を叩き落として、桃木が茶菓子を詩音から遠ざける。
「簡単に言うと、パートナーの誘いの勧誘連中に追われて逃げてた。いくら動きやすいメイド服でも、魔法まで使って来る連中を巻くのは面倒だからな」
いつの間にか、桃木の背後をとった詩音が、茶菓子を片手に答える。
「そう言えば、まだパートナーを決めて無かったのか?」
桃木が諦めて茶菓子を机の上に戻す。
「最初からつくる気が無いけどな」
暗殺者としての仕事で、たまに学園を抜け出してる詩音にとって、パートナーは邪魔な存在になるのでつくっていない。
「まあ、私もつくれとは、今まで言わなかったが。聖騎士を決める大会に出る為には、パートナーが必要だぞ」
桃木のその一言に、お茶を飲んでいた詩音がむせる。
「何で必要何だよ?」
大会の種目は、個人戦と団体戦の二つである。団体戦は5名での参加で、今は一名足りないが、パートナー同士での参加で無くても大丈夫である。
「そう言えば君は知らないか、個人戦何だがパートナーと一緒の参加になる。要するに、2体2で戦うって事だ」
桃木が机の上の書類の中から、大会に関する書類を探りだし、詩音に見せる。
そこには、注意事項では個人戦ではパートナー同士2体2で戦う事がルールであり、一人での参加は出来無い事が書いてあった。
「っち、面倒なルールだな。……仕方無い、朝実か琴音にパートナーになって貰うか」
さっそくパートナーの事を話に行こうとしたが、桃木に止められる。
「残念ながら、その二人はパートナーが既に決まってる。それと、美和も決まってるぞ」
「………」
「ああ、それで追い掛けられてるのか。今までは、一緒にいる三人のうち誰かがパートナーになると思われていから、遠慮していたが本当はフリーだと分かった訳だし。
君は、個人戦に参加する意思表示を学校側にしてるからな。それは、誰かにとられる前にパートナーになろうと必死になるわけだ。
ついでに言っておくが、三人がパートナーを決めて学校側に提出したのは、数日前で、今日発表された所だ」
無言のまま固まっている詩音を見ながら、桃木が優しく肩に手を置く。
「ももちゃん、パートナーが決まって無い生徒の資料を見せてくれ」
珍しく力無く言う詩音に、桃木が肩から手を離し資料を捜しながら尋ねる。
「君に仕手は珍しいな、何時もなら「一人で勝ち上がれるから、適当な奴で良いか」と言ってそうだが。
其に、琴音、美和、朝実、葵、蒼の5人に個人指導をしているそうじゃないか。
君は、そう言った事はやらないと、私は思っていたんだがな」
目的の資料を見つけ、詩音に渡す。そこには、生徒の顔写真と学年、魔法のランクと得意な魔法等の情報が書いてあった。
「まあ、確かに昔の俺ならももちゃんの言う通りだったな。
ただ、詩音として戦う事を前提にすると。椿や日向位の強さの連中に、連続で試合が当たると魔力切れで確実に負ける。
そうなると、以来主からの以来通りに暗殺出来なくなる。それは、亡霊としての約束を破る事になる。
俺は約束は、命をかけても守るからな。負ける要因を無くすのは、当然だろ」
そう言いながら真剣に資料を見ている、詩音の手が止まる。その資料のページには、生徒の名前と学年しか書いていなかった。
「凪茶 雪か」
後ろから覗き込んだ桃木が、資料に書かれていた生徒の名前を言う。
「そいつは、お勧めはしないぞ」
桃木がそう言いながら、別の紙を渡す。
「凪茶 雪。元暗殺者であり、暗殺者施設の出だ。そいつがいた施設が、他の暗殺者によって破壊された後、聖騎士に保護された。
今は、更正と社会復帰の意味をかねて。ここの学園にいるが、誰とも口を聞かないし、授業にすら出てこないからな。
何度か先生達が、授業に参加させようとしたが失敗してる。授業に出ない所意で実力は不明。
二つ名持ちではないし、施設の子だからな、暗殺者としての記録も無い。実力が全く分からない生徒だ」
桃木がそう言いながら、数枚の紙を見せる。
「一応私のオススメの生徒達だ」
ただ、数名の生徒の名前が書かれた紙だと分かった時には、桃木が紙を机の中に仕舞い始める。
「おい、まだ見てないんだけど」
他の資料迄仕舞い始める桃木の背中に向かって言うと、桃木は資料を仕舞いながら答える。
「今の君の目には、凪茶 雪以外は見えなさそうだからな。凪茶 雪なら何時も図書資料館の最上階にある、屋内庭園にいるぞ」
「図書資料館の屋内庭園ね。ももちゃん少し茶菓子貰ってく」
そう言って、詩音が保健室から出ていく。資料を片付け終わった、桃木が机の上を見ると、箱と手紙が置いてあった。
不思議に思いながら箱を開けると、中には数種類の一口サイズのチーズケーキが入っていた。
「試作品だから、食べたら感想くれ」
手紙には、そう書いてあり。丁寧に食間や味等の項目が書いてあり、全部で5段階標識の評価シートが貼り付けられていた。
「本当に君は変わったな」
そう言った桃木の顔には、優しい笑みが浮かんでいたが。すぐに何時もの顔に戻ると、チーズケーキの入った箱を冷蔵庫に入れ様として固まる。
冷蔵庫に中には、同じ様に箱に入ったチーズケーキが何個も置かれていた。
「頭、さっき、私達の分だと言って置いていきました」
天上から零の説明が聞こえ、桃木がひきつった笑いを浮かべる。
「いっ、いくら何でも、変わり過ぎじゃないか?」
絶対に最初の頃の詩音ならしないことをされ、うっすらと恐怖を覚える桃木だった。
登場人物
影霧 詩音…校長の暗殺の為に、学園にいる暗殺者。本来の性別は男だが、薬により少女になっている。
暗殺者としては亡霊ファントムと呼ばれ。複数の二つ名を持つ一流の暗殺者でありながら、魔力が全く無い。
詩音になっている際は、薬の副作用で魔法が使える。魔法ランクは3
桃木 桃…表の顔は学園の保健室の先生。裏の顔は、情報収集を専門とする暗殺者集団の頭
詩音とは、何度も依頼を提供してきた依頼主であり。今は、学園の校長の暗殺の依頼を、校長に頼まれて詩音に依頼している。
零…桃木の組織の一人。性別は、男。実力は不明だが、詩音の監視や、桃木の護衛等を任される位の実力はある。
凪茶 雪…学年は2年で女
元暗殺者であり、暗殺者を育成する施設の出。今の所名前と学年と性別以外は不明




