妹LOVEな二人
メイド喫茶の前には5人の男達が正座をしていた。そして、その5人を見ながら詩音が日向と話し合った事を話す。
「残念ですけど、最初に賭けた通り。今まで代金の請求とお店の永久的出入り禁止、この学園の生徒への暴力行為の禁止は守って貰います。
それとは別に、私に対する暴力行為の慰謝料ですけど。一人10ポイントで許します」
一人10ポイントと聞いて、男達が安堵の声をあげる。もっと高いポイントを請求されると思っていたからだ。
ただ、そんな男達を見ながら詩音が笑みを浮かべる。
「そして、最後に追加になった要求ですが」
男達の顔が一瞬で曇る。最後に追加で増えた要求の内容は、事前には全く決められていない。もしここで自害しろと言われたら、自害しなくてはいけない。
慈悲を求める様な目で男達が詩音を見る。詩音は、その視線を浴びながら要求の内容を言った。
「要求の内容は、ここで私と戦った記憶の焼却と改竄です」
何を言われたのか分からずに、口を開けたまま固まる男達に溜め息をはいた後もう一度、今度は分かりやすく言う。
「私と戦った記憶を消して貰い、違う人物との違う勝負の記憶を変わりに覚えて帰って貰います」
そこまで言われた男達が、同意をして頷く。その後、桃木を通して男達の学園に連絡して貰い、賭けの内容を報告後。受け渡し方法等を話し合った。
話し合いが終わり、残ったバイトの後片付けをしに行く詩音に椿が声をかける。
「良いのか?」
思わず「何をですか?」と聞き返しそうになるが、椿の目を見て答えを決める。
「良いんですよ。元々ポイントは、そんなに多く請求するつもりは無かったですから」
暫く何かを探る様に、詩音の目を見ていた椿だったが。
「なら、良いんだ。すまなかったな、バイトを頑張ってくれ」
そう言いながら、学園の方に戻って行く。
琴音や美和それと、朝実に葵と蒼の5人は、話し合いが長引いたので途中で桃木が帰らせた。
一応被害者であるメイド喫茶の店長の日向と店員の詩音、生徒会長である椿と先生である桃木が話し合いを最後迄行い。
桃木は、校長に説明に行くと言って少し先に学園に戻っていた。
「それじゃあ、後は任せたで。後、鍵はそのまま持っといてええから。ほな、おやすみ」
「えっ!、日向先輩何を言って………」
鍵を日向から投げ渡された詩音が、日向に向かって叫ぶが。気が付いた時には、日向の姿は何処にも無かった。
詩音は店の鍵を見ながら溜め息を吐いた後。店に残っていた数名に事情を説明し、片付けをしてもらっている間に、明日の料理の下拵えを始めた。
「なあ、椿はんは、詩音はんをどう思う?」
店の事を詩音に任せて逃げた日向が、追い付いた椿に尋ねる。
「うちは、詩音は亡霊。もしくは、その招待を知っていると考えとる」
話し方は普段と同じだが、その声音は真剣だった。
「日向は、そう思ったか」
「何や?、椿はんは、違うんか?」
日向が椿の正面に立つ。その表情と態度は、自分が納得する迄退かないと語っている。
「確かに私も最初に勝負に乱入した際には、詩音が亡霊だと疑ったさ。
それに、さっきの戦い方も聖騎士の資料に残ってる亡霊の戦闘の一種に類似していた」
「そうやろ。それにさっきの気配は、裏の世界で生きている人間独特の気配や。
それも、かなり深い所に住んどった連中のや。学園の資料によると詩音はんは、確かに暗殺者を育てる施設の出やった。
せやけど施設にいたんは、4年っとなっとる。でも、あの気配は4年ちょっとで身に付くもんや無い。
ここまで言えば分かるやろ?。犯罪者を何千と見て来たうちが、さっきまで全く気付かんかったんやで」
日向の目には、僅かだが殺気と苛立ちがあった。犯罪者を何千と自白させてきた、自分が騙されていた。
そして、その人物は、裏の世界独特の気配を見に纏い。亡霊の戦闘に類似した戦闘を行う。
詩音が亡霊で無い、確固たる証拠を見せろと。口には出さないが、証拠が無ければ一族総出での戦闘ですら行う覚悟があると、明確な殺気を込めた目で椿を睨む。
「私にも確固たる証拠は無いが、否定材料なら何個かある。
一つ目が、亡霊は男であり。女では、無い。
二つ目が、今亡霊は、左腕に大怪我を負ってい筈だ。
怪我に関しては、私も先輩聖騎士から聞いただけだが。少なくとも一週間は、どうやっても回復しない程の大怪我だったそうだが。詩音は左腕を怪我していない。
三つ目は、もし詩音が亡霊なら、戦闘方法といい気配といい、余りにも無用心過ぎる」
そう言うと、椿が日向を見る。見られた日向は、いまだに殺気を込めた目のまま椿が言った事を否定していく。
「確か証拠になんらんな。まず、亡霊が男だと言われてるんは、声が男の声だからやろ。誰も素顔を知らんのや、正体が女やっても可笑し無い。
二つ目の傷は、そもそもが偽装の可能性もあるやろ。亡霊は、人を騙すんは得意中の得意技やからな。
三つ目やど、それは油断しとった。もしくは、感ずかれてもええ思っとた可能性があるんや。
それでもなお、椿はんが違う理由は何や?」
その質問にたいし、椿が静かに答える。
「もし、詩音が亡霊だとして。私の妹を傷付け様とした奴を、私が生かしておくと思うか?」
一瞬にして椿の足元の地面が溶け、廻りの空気が焼け死ぬ。椿がいる場所を中心に日向がいる空間以外の、半径数メートルの空間が死に絶える。
そんな、死の空間のを一瞬で産み出した椿は、ばつが悪そうに日向に言う。
「まあ、一番の理由は、琴音の親友を疑いたくないだけだがな」
その答えを聞いた日向の目から殺気が消える。
「まあ、その気持ちは解るで。うちも可愛い妹の朝実の数少ない親友や、本当は疑いたく無いんや。
でもな、うちは詩音はんが亡霊やと思っとるよ」
日向がそう言いながら、笑顔を浮かべる。
「まあ、今は椿はんの事を信じるわ。妹が亡霊との戦闘場所にいたった聞いて、聖騎士長の制止を無視して現場に駆け付けようとしたり。
妹の無事な姿を見るまで仕事をしないって、無理言って学園に戻ってくる。
それでいて、妹の前では格好つけたり。心配かけまいと嘘をついて、後で陰で落ち込んでる。妹大好きな、妹想いの、椿はんの事をな」
「なっ!?」
自分の隠していた事を笑顔で言われ、椿の顔が羞恥と怒りで真っ赤に染まる。
「日向、お前その他ことを何処で知った!」
顔を真っ赤にしながら叫ぶ椿から逃げながら、日向がいたずらが成功した子供の様な笑顔で答える。
「何処で知ったって、うちは薄紫家当主やで。聖騎士のお偉い方にも、知り合いが一杯おるんやよ」
「くっ、そうだった。まあ、日向が知ってるのは仕方がないとしてだ!。その事を誰にも言って無いだろうな?」
椿が炎の槍を日向に向けて構える。炎の槍を突き付けられた日向が、降参の意思表示で両手をあげる。
「うちは誰にも言って無いで。まあ、お互い可愛い妹を持つと大変やな………って、はよ炎の槍を消してな、地味に恐いし熱いんよ!」
「良いか、誰にも!、誰にも絶対に言うなよ!!」
椿が念を押すように言った後、炎の槍を消す。日向は、炎の槍で熱せられた場所を擦りながら椿の隣に立つ。
「んで、椿はんは、琴音はんの何処が好き何や?」
「何でそんな事を聞く」
顔写真少し赤くする椿を見ながら、日向が笑顔で答える。
「たまには可愛い妹の事を誰かに喋りたくなるやろ、因みにうちの朝実の可愛い所はー」
「日向、悪いがその話しが長くなるなら私の部屋で話そう。一応夜遅いしな、生徒会長と風紀委員長が二人して、夜遅くの外での立ち話は立場上良く無いからな」
椿が最もらしい事を言って、日向を自分の部屋に連れ込む。生徒会長であり、聖騎士の仕事の手伝いをしている椿の部屋は、完全防音になっている。
その日の生徒会長の部屋の電気は、朝になるまで消える事は無かったそうな。
登場人物
影霧 詩音…校長の暗殺の為に、学園にいる暗殺者。本来の性別は男だが、薬により少女になっている。
暗殺者としては亡霊ファントムと呼ばれ。複数の二つ名を持つ一流の暗殺者でありながら、魔力が全く無い。
詩音になっている際は、薬の副作用で魔法が使える。魔法ランクは3
紅 椿…紅 琴音の姉で3年生でありながら、聖騎士の仕事の手伝いを任されるほどの実力者。ランクは10であり、生徒会長。
薄紫 日向…薄紫 朝実の姉で、紅 椿と同学年。違法魔術師の拷問等を代々なりにしている薄紫家の当主であると同時に、学園にあるメイド喫茶の店長
風紀委員長でありランクは10
桃木 桃…表の顔は学園の保健室の先生。裏の顔は、情報収集を専門とする暗殺者集団の頭
詩音とは、何度も依頼を提供してきた依頼主であり。今は、学園の校長の暗殺の依頼を、校長に頼まれて詩音に依頼している。




