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暗殺者は今日も女装をする。  作者: 木陰の蛇
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バイトの合否

 大浴場から出て暫く歩くと、琴音があるお店の前で止める。そのお店は一見普通の喫茶店の様だったが、木で出来た外観ととても不似合いなカラフルな文字で大きくメイド喫茶と書いてあった。

 「まさかここがバイト先ですか?」

 琴音を睨みながら言うと、満面の笑みを浮かべた琴音が大きく頷く。

 「帰りますね」

 「わ~、せめて1日位働いてから決めようよ」

 踵を返した詩音の腕を捕まえながら、引き摺る様に琴音が店の中に押し込む。

 まだ開店前なのか、店の中には誰もいない。

 「すいません、バイトの応募を見て来たんですけど」

 琴音が大きな声で呼ぶと、奥から「ちょっと待ててな~、今行くさかい~」と、女性の声が返って来る。

 「あれ?、今の声って」

 琴音が何かを思い出すより先に、店の奥から二人の人物が出てきた。

 出てきた二人の人物の内一人を見た瞬間、詩音から殺気が出て店の中に充満する。

 「何で貴女がここにいるんですか、乱入者さん?」

 そこには、琴音との勝負に乱入者してきた人物である琴音の姉の椿がいた。

 「何故いるかか、それは日向に用が合ったから何だが。…それより今は戦う気は無いからな、殺気を押さえてくれないか?」

 詩音が殺気を消しながらも椿を睨みながら確認するように尋ねる。

 「今はですか、それはこのお店にいる間と思って良いんですよね」

 「いや、当分と言い直そうか」

 戦う意識は無いと言わんばかりに椿が何も持っていない両手を挙げる。

 その様子を見ながら詩音がゆっくりと手に隠し持った投げナイフを仕舞う。

 「ほな、何か知らんけど終ったようやし。どっちがバイト希望なん?」

 椿の隣にいた人物が琴音と詩音を指差しながら尋ねる。

 「えっと、詩音ちゃんがバイト希望ですけど……何で日向先輩がここにいるんですか?」

 (こいつが朝実の姉であり、薄紫家当主の薄紫日向か)

 琴音に日向先輩と呼ばれた人物を、警戒しながら自己紹介をする。

 「初めまして、一年の影霧 詩音です。妹さんの朝実さんとは、仲の良い友達付き合いをさせて貰ってます」

 わざと朝実の名前を出して反応を伺う、薄紫家の情報収集力は油断出来ない。

 もし何かしらの情報を仕入れていれば、妹と友達と言えば何かしらの反応を示す可能性がある。

 少しの反応も見逃さないように注意深く警戒していると、日向が勢いよく突進してくる。

 一瞬迎撃仕様と考えるが敵意が無いので押さえる。日向は詩音の手を握るとブンブン上下に振り回す。

 「朝実から聞いてるで、詩音ちゃんって言う新しいお友達が出来ったって。

 ありがとな、引きこもりのうちの可愛い妹の友達になってくれて。ほんまに感謝するわ」

 (その様子じゃ朝実は話して無いようだな)

 嬉しそうにブンブンと握ってる手を上下に振り回している日向を見ながら、朝実が亡霊(ファントム)だと言っていないと分かった。

 「日向先輩僕の質問を無視しないで下さい!」

 琴音がそう言いながら詩音の手を握ってる日向を、詩音から引き離す。

 「何や琴音はんもいたんか?、気づかんかった」

 「いましたよ!、さっき指差したじゃ無いですか‼」

 琴音が叫ぶが首を傾げている日向を、隣にいる椿が頭に拳骨を落とす。

 「日向お前はもう少し妹以外もちゃんと認識しろ」

 「痛いんやけど。……仕方無いやん、うちにとっては尋問対象かそれ以外の違いしか分からんやもの」

 日向が頭を擦りながら涙目で訴える隣では、椿が諦めた様に長い溜め息を吐いていた。

 「で、何でうちがここにいるかやったよね。それはここの経営者やからよ」

 仕切り直しと言うことで取り合えず全員席に着くと、日向が琴音の質問を思い出した様に唐突に答える。

 「えっ?、ここって日向先輩のお店何ですか!?」

 琴音が驚いた様に聞き返すと笑顔で日向が頷く。

 「ここはうちの趣味で作ったお店やよ」

 「趣味で作ったお店ですか、日向先輩のご趣味って何ですか?」

 (どんな趣味でメイド喫茶を作るんだよ!)

 内心で突っ込みを入れれなが尋ねると、日向より先に椿が答える。

 「可愛い子を愛でる事らしい」

 溜め息を混じりに答えた椿の隣で、日向が椅子を後ろに倒す勢いで立ち上がる。

 「そうや、この店は可愛い子を愛でる為の店や。可愛い子がメイドの格好で恥じらいながらも頑張る、最高に萌えるやろ!」

 鼻息を荒くしながら同意を求める日向を見て琴音がぎこちなく頷く。

 「まあ、赤字では意味が無いがな」

 椿が呆れながら言うと、日向の表情が一瞬にして曇る。

 「えっと、赤字ってどういう事ですか?」

 琴音が机に力無く張り付いている日向に尋ねると、ゾンビの様に起き上がった日向が力無く答える。

 「ここは一応学園内のお店やけど、一般人や他の学園の生徒も入れる場所やから。ある程度強くないといざって時に自分の身を守れんやろ。

 只可愛くて自分の身を守れて、メイド服が似合いそうな子がいないんよ」

 一応従業員(メイド)は何人かいるそうだが、全員何か問題が起きた際には実力不足らしい。

 「実力不足って、何か問題が起こるんですか?」

 学園内部のお店で問題を起こす人物が想像出来ずに思わず尋ねる。

 「簡単に言うとやな、他の学園の生徒がイチャモンつけて来る事があるんよ」

 「どういう事ですか?、それと赤字と実力不足が何の関係あるんですか?」

 意味が分からず聞き返すと。

 「あれ、詩音ちゃん知らないの?」

 琴音が不思議そうに訪ねてくる。何の事か分からず、取り合えず知らないと答える。

 「他の学園内で問題が起きた場合は話し合いか、もしくは実力での解決をする事。

 これは、生徒手帳にも書いてある学園の問題解決の方法だ。他にも色々な決まり事が書いてあるから、後で生徒手帳を良く読んでおけ」

 椿がそう言いながら、わざわざ生徒手帳を開いて見せる。

 (そう言えば生徒手帳の最後に書いてあったな)

 一応記憶はしていたが、他の学園の生徒と関わる事が無いので興味が無かった。

 「より強い生徒に育って欲しいから、って学園側は言っとるんやけど。

 それを利用して、食べるだけ食べてからイチャモンつける連中がたまにいるんよ」

 「それって、此方が負けた場合どうなるんですか?」

 「残念ながら無料にして返すしかないんよ、うちがいれば返り討ちにするんやけど。

 家系の事情でたまにしかお店にいれんから、いない時に来ると対応出来る子がいないんよ」

 日向が力無く答える。何でも最近頻繁にイチャモンもつけてくる他の学園の生徒が要るらしく、今働いている子では勝てないらしい。

 「それは許せないよ酷いよ、日向先輩僕が変わりに戦う事は出来無いんですか?」

 琴音が勢い良く立ち上がりながら日向に言うが、日向は首を横に振る。

 「残念やけど、彼奴等は強い生徒がいるとイチャモンつけないんや。琴音ちゃんは顔も実力も他の学園に知られてるやろ」

 そう言われた琴音が力無く椅子に座り直す。日向が気持ちはありがたいよと言いつつ、此方も力無く椅子に座り直す。

 琴音と日向の周りに漂う重い空気の中、椿がやれやれと言った感じで話出す。

 「私ならその問題を解決出来る生徒を知ってるんだが?」

 「誰や教えてな!!」

 日向が勢い良く椿に掴みかかる、それを上手くかわし椿が詩音を見る。

 「あっ!」

 椿の答えに気付いた琴音が同じ様に詩音を見る。椿に掴みかかったがかわされ、床に盛大に顔をぶつけていた日向が二人の視線を追って詩音を見る。

 「何ですか先輩方、私の顔に何か着いてます?」

 誤魔化す為にそう言うが、日向の顔に笑顔が浮かぶ。さらに、とどめとばかりに椿が。

 「校長室にいった際に校長に何気無く質問したが、詩音の戦闘記録は一切外部に洩れていないそうだ」

 「何でそんな事聞いてるんですか?」

 殺気を込めて椿を睨む。

 「実力者の情報が下手に外部に洩れるのは問題があるからな、生徒会長としても情報の管理が出来ているか確認しただけさ」

 「そうですか、因に今も校長は校長室にいるんですか?」

  校長の姿を確認しておこうと、校長がいるか尋ねるが。

 「いや、すぐに出掛ける用事があると言って。私が部屋を出た後に出掛けて行ったぞ」

 (ちっ、まあ良いか)

 そのやり取りの間に、日向が店の奥に勢い良く消え何かを持ってすぐに戻ってくる。

 その手には黒いメイド服が握られていた。

 「これ着てみ」

 目を爛々と光らせた日向がメイド服を押し付けてくる、どうしようか迷うっていると。

 「着ないと拷問やで、薄紫家の拷問は死ぬ程の苦しみをじっくり時間を掛けながら味合わせるんやよ」

 (薄紫家の拷問は洒落にならないんだが)

 こんな事で拷問されるのは嫌なので、渋々メイド服に着替える。

 黒をメインにあしらったメイド服は、動きやすさを重視したのか以外と動きやすいが。

 各所に邪魔に為らない様にリボンやヒラヒラが着いており、可愛さも忘れていない。

 「詩音ちゃん可愛い、抱き付いて良い?」

 詩音のメイド服を見た琴音が抱き付いて来ようとするので、直前まで引き付けかわす。

 かわされた詩音が壁にぶつかって、抗議の声を挙げるが無視をする。

 「以外と似合うな」

 椿がそう言いながら詩音から視線を反らす、その顔は僅かにだか紅くなっていた。

 「ええやんメッチャ似合うやん、これで強いって詐欺やん。確かバイト希望言っとたよね?

 今日から採用決定、というか逃がさないで」

 不気味な笑顔を浮かべる日向を前に、逃げ出すのを諦め笑顔を作る。

 顔は笑顔だが、腹の中では言い知れぬ怒りが沸々と燃え上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

登場人物

影霧 詩音…校長の暗殺の為に、学園にいる暗殺者。本来の性別は男だが、薬により少女になっている。

暗殺者としては亡霊ファントムと呼ばれ。複数の二つ名を持つ一流の暗殺者でありながら、魔力が全く無い。

詩音になっている際は、薬の副作用で魔法が使える。魔法ランクは3


紅 琴音…ボーイイッシュな少女。学年は詩音より上であり、琴音先輩と呼ばれている。

学園でも屈指の実力者であり、魔法ランクは聖騎士見習いになれるランク7

過去に両親を暗殺者に殺されている過去を持っている。


紅 椿…紅 琴音の姉で3年生でありながら、聖騎士の仕事の手伝いを任されるほどの実力者。ランクは10であり、生徒会長。


薄紫 日向…薄紫 朝実の姉で、紅 椿と同学年。違法魔術師の拷問等を代々なりにしている薄紫家の当主であると同時に、学園にあるメイド喫茶の店長

 風紀委員長でありランクは10

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