大浴場②
大量の温泉んが視界を隠すほどの湯気を吐き出す大浴場の中、琴音がどうしたら良いか悩みながらもお湯に使っていた。
(何か喋った方が良いのかな?)
一緒に入っている人物に話し掛けようとチラッとそっちを見るが、そこには物凄く不機嫌な詩音が目を瞑ったままお湯に浸かっていた。
(うぅ、折角詩音ちゃんと二人きりなのに会話が無いよ)
何時もなら詩音と二人っきりなら喜ぶ所だが、今回秤は他に誰かいて欲しかった。
詩音にやられた美和は保健室で診察を受けているし、朝実は椿同様いつの間にか帰って来ていた姉の日向に拉致られていた。
(気まずいよ~)
先程から数十分会話がないまま、ただ黙って温泉に入っている。
(よし。もう駄目だ、何か話しかけよう)
余りの沈黙に耐えきれず詩音の名前を呼ぶ、名前を呼ばれた詩音は目を開けて琴音の方を見る。
「えっと、詩音ちゃん、あのさ…」
名前を呼んだのは良いが話かける事が思い浮かばず、どうしようか考えながらあたふたしていると。
「100万ポイント」
詩音が呟く、その意味が分からず聞き返すと。
「今日使った武器やアイテムの値段です。…はぁ、あの乱入者さえいなければこんなに使わずに済んだのに」
「えっと詩音ちゃん?、もしかして不機嫌なのはポイントの所意?」
「ええ、そうですけど?」
それ以外に何があるんですか?。といった顔で言う詩音を見て琴音は、小さく安堵の溜め息をはく。
(良かった、姉さんとの勝負が無効試合扱いで不機嫌に成ってたんじゃないんだ)
結局妖精の乱入者があったあの試合は無効試合扱いになり、成績の評価の対象には成らない。
あれだけの試合をしたのだから、もしきちんと評価されれば聖騎士候補生になれるチャンスでもあった。
そのチャンスを無かった事にされ不機嫌なのかと思っていた琴音だった。
「100万ポイントか、確か1ポイント100ユースだよね。なら、ユースに直すと…1億ユース!!」
危険な仕事である聖騎士の給料はかなり高いが、その聖騎士ですら1億ユース稼ぐのは数年掛かる。
そんな大金を1回の試合で全部使わされる、それも試合に乱入者した人物の所意で。
(うん、それは不機嫌になるよね)
詩音が不機嫌な理由に納得すると同時に、姉が壊したナイフの事を思い出す。
「そう言えば詩音ちゃん、あの壊れたナイフっていくら位するの?」
興味本意で値段を聞くが、その値段の高さに驚く事になるとは思っていなかった。
「10万ポイントですよ、ユースに直すと一千万ですね」
「詩音ちゃん冗談が上手いね」
「冗談では無いですよ。鉄鉱石それも斬鉄鉱石と言う珍しい鉱石を使ったナイフですから」
鉄鉱石、鉄等のの代わりになる鉱石であり剣や槍等の武器から、鍋やアクセサリー等にも使われる鉱石である。
その中でも加工する前から鉄すら簡単に切れる程の鋭さをもつ鉱石が斬鉄鉱石であり、鉄鉱石の中でも2~3を争う高額な鉱石である。
(姉さん弁償出来るかな?)
姉が壊した高額なナイフの値段を聞いて、姉の事を心配していると。
「大丈夫ですよ、本当に弁償差せたりはしませんから」
詩音がクスクスと笑いながらそう言い、何処からかナイフを取り出す。そのナイフは壊れたナイフと瓜二つのナイフだった。
「斬鉄鉱石で出来たナイフなら何個か予備がありますから」
「もう、詩音ちゃん脅かさないでよ」
「先輩の顔が面白いのでからかってみました」
「えっ、僕の顔ってそんなに面白い?」
琴音が自分の顔をグニグニと摘まみながら、喋る所意でまるで変顔を作っている様だった。
「そういう所が面白いんですよ」
詩音が笑い所意でお腹を押さえながら、琴音から顔を背ける。
それを見ながら琴音が笑顔を浮かべ、違う変顔を作ると詩音の前に飛び出す。
「どほぉ、こほぉふぇんはほぉ」
その変顔を見た詩音が凄い勢いで顔をそらすと、琴音から距離を取るように離れていく。
(詩音ちゃん変顔に弱いんだ!)
その事に気付いた琴音は、また違う変顔を作ると詩音の側に行くが。気配を感じた詩音が変顔を見る前に逃げ出す、そして逃げ出した詩音を琴音が追いかけ。
また詩音が逃げるを数十回繰り返した後、詩音が近寄ってきた琴音の頭にチョップを入れ追い掛けっ子に終止符をうった。
「うぅ、痛かったよ詩音ちゃん」
涙目になりながら頭を擦る琴音を睨みながら
「そう言えば、あの乱入者先輩のお姉さんで紅 椿先輩ですよね?」
詩音が確認するように尋ねる。
「そうだよ」
「そうですか。確か椿先輩は聖騎士の仕事の手伝いでまだ帰って来ない筈ですよね?」
桃木の言っていた事を思い出しながら尋ねると。
「その筈なんだけど。僕も詳しくは知らないけど、関わっていた仕事が終わったから帰って来たんだって」
「関わっていた仕事ですか?」
「確か犯罪を犯した元聖騎士を捕まえる事だったかな?」
(あの俺が殺した五人の聖騎士の事か?)
桃木の暗殺を考えた連中を殺すついでに、腕を治す為に必要な代償を得る時に殺した5人の聖騎士が頭に浮かぶ。
「その聖騎士って男の5人組ですか?」
「そうだよ、よく知ってるね」
「ええ、指名手配に成ってる人達ですから」
(俺の所意かよ)
そう言いながらも、まさか自分が殺した連中の所意で椿が予定より速く帰って来て、自分と勝負する事になった事を思うと。
(100万ポイント使う事になったのは、俺の所意なのかよ)
頭が痛く成りそうな思いだった。
「詩音ちゃん大丈夫?」
「ええ、大丈夫です。ちょっとこれからの事を考えていただけですから」
消費した武器やアイテムの補充に、智莉に頼まれていた武器の補充に掛かる値段を考えながら暗殺と学園の生活予定を考える。
(朝は学園だから夜に仕事をするとして、1日に5件仕事をしたとして……ちっ、どんなに速くても20日は掛かるか)
最速でも20日と言う長い間、学園と仕事の両方をこなしつつばれない様に生活する。
その生活を想像し思わず溜め息をはく。そんな詩音を見ながら、琴音が笑みを浮かべながら話しかける。
「詩音ちゃんお金に困ってるんだよね、僕いいバイト先を知ってるよ」
「そうですか」
興味無さげに答えると、琴音が頬を膨らませ怒ってますアピールをしながら
「ふ~んだ、今しか教えてあげないのに。後で教えて下さいって言っても教えてあげないよぉ~。
凄い高時給なバイトだし、詩音ちゃんなら沢山稼げるかも知れないのになぁ~」
(五月蝿いなこいつ)
そう思いながらも、笑顔を作りつつ尋ねる。
「さっきはすいません先輩、それで沢山稼げるっていくら位なんですか?」
「なんと時給30ポイントだよ」
(時給30ポイントって事は、時給3千ユースか。まあ、一般的な表社会に仕手は高額だな)
「どお、詩音ちゃんやってみない?。一応学園内のバイトだし、頑張ってる子は時給アップもあるんだけど」
(そうだな、学園でも稼ぎは有った方が良いか)
暗殺も毎日依頼があるとは限らない。確かに亡霊が安く仕事を募集すれば毎日でも依頼が来るだろうが。他の暗殺者に怨みをかう恐れがあるのと、変な仕事を引き当てる可能性が大きい。
それくらいなら、安くても良いから毎日稼げる方が良いと考えバイトをする事にする。
「そうですね、先輩からの提案ですし。やれるかわかりませんが、バイトやってみますね」
その答えを聞いた瞬間琴音が笑顔でガッツポーズを取る。
「先輩何してるんですか?」
「うんうん気にしないで、バイトだけど詩音ちゃんなら絶対出来るよ!」
妙に力強く断言する琴音がそう言えばと、この後の予定を聞いてくる。
「この後は特にやることはありませんが?」
「なら、お風呂からあがったらこのままバイト先に行こうか。ほら、詩音ちゃんバイト先知らないでしょ?
それに速くバイトを始めればそれだけ沢山稼げるよ」
「ええ、そうですね。ではお言葉に甘えてバイト先迄の道案内よろしくお願いしますね」
「任せてよ」
そう力強く頷く琴音の脱衣所に置かれている服の上には、あるバイトの募集の紙が置かれていた。
そこには大きく
ーーーーーーー可愛いメイド募集ーーーーーーーーー
そう書かれていた。
登場人物
影霧 詩音…校長の暗殺の為に、学園にいる暗殺者。本来の性別は男だが、薬により少女になっている。
暗殺者としては亡霊ファントムと呼ばれ。複数の二つ名を持つ一流の暗殺者でありながら、魔力が全く無い。
詩音になっている際は、薬の副作用で魔法が使える。魔法ランクは3
紅 琴音…ボーイイッシュな少女。学年は詩音より上であり、琴音先輩と呼ばれている。
学園でも屈指の実力者であり、魔法ランクは聖騎士見習いになれるランク7
過去に両親を暗殺者に殺されている過去を持っている。




