意外な決着
一気に距離を零にする程の速さで炎の槍の持った乱入者が詩音がいた位置に現れるが、それより少しだけ速く動いた詩音により予想より距離が空く。
その距離はギリギリ炎の槍が届かない位置であるが、乱入者はそのままの位置で炎の槍で鋭く突きを放つ。
それを見た詩音は隠し持っていた小瓶を炎の槍に向かって投げる。炎の槍がその小瓶を貫くと中に入っていた液が一瞬で蒸発し大量の煙を吐き出す。
大量の煙に詩音の姿が隠れて見えなくり乱入者の動きが止まる。
「目隠しのつもりか?、なら私には意味が無いぞ」
炎の槍を勢いよく目の前に振り下ろす、その切っ先は煙に隠れて近づいていた詩音の顔の目の前で止まる。
その目の前の炎の槍を見ながら、詩音の口許に笑みが浮かぶ。
「ええ、貴女に只の煙幕が効かないのは知ってますよ。これはその為じゃ無いですから」
「なに?、ならどういう意味だ?」
乱入者が聞き返すが詩音はそれに答えず煙の中に姿を隠す。乱入者がすぐに詩音の居場所を探ろうとするが。
(ほお、今度は完全に気配を消してるか)
さっきと違い完全に気配を消した詩音の居場所は分からず、何時奇襲を受けても言いように炎の槍を隙無く構える。
その構えは少しでも攻撃を仕掛ければ即座に反応し防衛すると同時に、神速の一撃を放ち敵を貫く攻防一対の構えだった。
(さて、煙幕が消える前に仕留めますか)
長年暗殺者としてこういった煙幕の中でも仕事をしていた詩音は、乱入者を見ながらゆっくり仮面の上に仮面を着ける。
詩音の仮面が別の仮面で隠れた瞬間、獲物に襲いかかる獣の様に詩音が乱入者に襲いかかった。
(来るか!)
煙幕の中でも解る明確な殺意に炎の槍を持っていた手に入っていた無駄な力を抜く、直後背後から感じた殺気に向かい炎の槍を繰り出すが。
「がッ…!?」
振り返った胸に強い衝撃がはしり炎の槍の切っ先がぶれる、その瞬間炎の槍を掻い潜って肉薄した詩音のナイフが乱入者の首を切り裂く。
「くッ……『炎の弾丸』」
魔力が一気に減るなか魔法を放つが、魔法が当たる前に詩音の姿は煙の中に隠れる。衝撃を感じた胸を見ると、パチンコ球程の礫が下に落ちる。
姿が消えた詩音の殺気が離れて行くのを感じ、一度自分自身を落ち着かせる様に深呼吸をしようとするが。
気配を消して背後に廻っていた詩音のナイフが乱入者を切り裂く、咄嗟に炎の槍で反撃をするが炎の槍は何も無い空間を切り裂いただけだった。
(このままでは不味いか、どうやら相手は一撃離脱の戦い方に慣れてる。
それにこの煙幕は以外と厄介だな)
まだ魔力に余裕があるが、このまま攻撃を喰らい続ければ煙幕が晴れる前にかなりの魔力を削られる。
それにこの煙幕の中で見えない相手が何時襲ってきても良いように、集中し続けるのはかなりの集中力を使い脳や身体への負担が大きい。
なら、煙幕をどうにか無くそうと魔法を放とうとすると。身体が咄嗟に防衛しようとする程の殺気や、鋭い攻撃が襲い掛かってくる。
(じり貧か、仕方が無いあれを使うか)
「炎よ全てを遮る壁となれ…『炎の壁』」
乱入者が自分自身の周りを覆う様に炎の壁を作り出す。その壁は美和の炎の壁より高く、体育館の天上付近までとどく勢いで燃え上がる。
乱入者はその中で集中するよう大きく深呼吸して目を閉じた。
「何をする気か知りませんが、無駄ですよ」
普通の相手ならこの炎の壁を前に、何も出来ないか魔法をぶつけてどうにかしようと足掻くだろうが。
詩音がナイフを振るい炎の壁を切り裂く、流石にこの威力の炎の壁を1度で切り裂く事は出来ないが、切り裂いて出来た僅な場所を寸分たがわずに切り裂いていく。
ほんの数十秒で乱入者の元にたどり着けた詩音がナイフで鋭い一撃を放ち、乱入者の魔力を大きく削るが。
続く一撃を放つ前に後ろに飛んで乱入者との距離を空ける。後ろに飛んだほんの僅な差で何かが目の前の地面を抉り捕る。
「流石に私の炎の壁を破るだけの実力者だな、まさか今の攻撃をかわすとはな」
乱入者の姿を見ながら、思わず見たままを呟く。
「その姿、竜ですか?」
「まあ、そんなものだ」
そう答えた乱入者は人の姿をしているが、その頭には鹿の様な角が生えており。背中には蝙蝠のような大きな翼と、ワニの様な立派な尻尾が地面を抉ったさいに着いたであろう土を払って落とす。
そしてその全てが炎で出来ており高熱を放っている。
「この姿は久し振りだから手加減出来んぞ、だから上手くかわせ」
その言葉と同時に乱入者の目の前に炎の塊まりが出来ると、その塊を炎で覆われている右手で切り裂く。
切り裂かれた炎の塊は、振るわれた腕の衝撃で粉々になりながら飛んでくる。
咄嗟に投げナイフを投げ威力を確かめようとするが、投げナイフは当たる手前で溶けて下に落ちる。
「これをかわせですか、無茶苦茶ですね!」
投げナイフを犠牲にその威力を知り一撃でも当たれば魔力を根こそぎ削られる炎の欠片が、目の前を覆い壁の様如く迫ってくる光景を見て思わず叫ぶ。
(道具を使っても致命傷は防げるが、何発かは喰らうか)
その余りの数に道具だけでは防げないと判断し、全ての道具を使い数を減らした後。
黒い拳銃を構え残った身体に当たる物だけを打ち落とす。周囲に当たった炎のの欠片が爆発し地面を抉る、その衝撃で飛んで来る石などを全て無神しながら只ひたすらに打ち落としていく。
最後の一つを打ち落とした時には、足元に空にになった弾創と薬莢がいくつも転がっていた。
(今の衝撃で煙幕がはれたか)
体育館にいる生徒に戦い方を見せない様にしていた煙幕がはれ、何人も生徒が困惑と驚きの中で状況を確認しようと見てくる。
(仮面を外すか)
詩音の仮面の上に着けた確認を外す。
「さて、もう魔力も少ないので次で決めますね」
残り魔力はもう無いに等しい、それに詩音の間まではこの相手には勝ち目も無いに等しい。
なら、一撃で勝負を着ける為に残った魔力を全て使い、最後の一撃を放ち終わらせる。
「空より落ちる雷よ、全てを壊す一撃を…『落雷』」
全魔力を込めた落雷が乱入者を貫くが、魔力を削り切る前に炎の翼でかきけされる。
「良い一撃だった、しかし私の勝ちだな!」
乱入者が魔法で産み出した炎の槍を右手に持ち、全力の螺旋を加えた突きを放ってくる。
何人かの生徒から悲鳴が上がるなか、炎の槍が詩音を貫く。
誰もが詩音が負けたと思った時、気を失っている筈の詩音の顔に笑みが浮かぶ。
「確かに…良い……一撃だですね……でも」
炎の槍を僅皮一枚でかわした詩音が、消え入りそうな声で言う。
(馬鹿な!。槍をかわしたとは言え、さっきの攻撃で魔力が無くなった筈だ!!)
魔力が無くなれば気を失う。確かに炎の槍はかわされたが、それでも今も気を失っていないのは可笑しいが。
詩音の足元を見て思わず叫ぶ。
「正気か!?。自分の足を刺して、痛みで意識をたもっているのか!!」
魔方陣の中では身体が負ったダメージは魔力に変換され、魔力が減る代わりに身体的ダメージを負わないが。
擦り傷等のちょっとした怪我の時には魔力に変換され無い、それと同じで自分自身で自分自身を傷付けた場合にも魔力に変換され無い。
詩音は自分自身で自分自身にナイフを刺してその痛みで無理矢理意識をたもっていた。
「くそ、ならもう一撃を入れれば良いだけだ」
乱入者の左腕に炎の剣が産まれるが、それより速く詩音の握る黒い拳銃が乱入者の額を捕らえる。
「…私の……勝ちで…すね」
引き金にかけていた指に力を入れて引き金を引く。
後ほんの数ミリ引けば弾丸が乱入者の額を撃ち抜く瞬間。
バシャッ
何かバケツに入った水をまいた様な音がして全員が音の原因を見ながら固まる。
詩音と乱入者の間、本来誰もいない筈の場所にいる一匹の妖精を。
何処か満足気な表情の妖精の手には小さなバケツが握られており、本来ならそこに入っている筈の水は無かった。
ほぼ全ての体育館にいる生徒が詩音を見ると、頭から妖精の水を浴びた詩音がピクリとも動かずに固まっていた。
「おい、誰かこの子を大浴場までつれていってやってくれ」
竜の姿をとき乱入者がそう言いながら、妖精を追い払い詩音の足に刺さったままのナイフを抜き傷口を消毒し包帯で巻いていく。
詩音が浴びた妖精の水は透明、唯一感情に影響が無い代わりに暫く心と身体繋がりを絶ち身体を動け無くさせる効果がある。
「詩音ちゃんは僕が運ぶよ」
魔力がある程度快復した琴音が詩音の側に行く。その時には乱入者は詩音の怪我の処置を終え、校長室に行くといって体育館を出ていった。
琴音は今だ銃を構えたまま意識を失っている詩音を見ながら呟く。
「凄すぎだよ詩音ちゃん、まさか姉さんを追い詰めるなんて」
乱入者の正体であり、自分の姉でもある学園最強の生徒相手にあそこまで戦った詩音にお疲れ様といった後。
大浴場に運ぶ為どうやってお姫様抱仕様か暫く迷う琴音だった。
登場人物
影霧 詩音…校長の暗殺の為に、学園にいる暗殺者。本来の性別は男だが、薬により少女になっている。
暗殺者としては亡霊ファントムと呼ばれ。複数の二つ名を持つ一流の暗殺者でありながら、魔力が全く無い。
詩音になっている際は、薬の副作用で魔法が使える。魔法ランクは3
紅 琴音…ボーイイッシュな少女。学年は詩音より上であり、琴音先輩と呼ばれている。
学園でも屈指の実力者であり、魔法ランクは聖騎士見習いになれるランク7
過去に両親を暗殺者に殺されている過去を持っている。
紅 椿…乱入者の正体。紅 琴音の姉で生徒会長であり、学園最強の生徒。
本来ならまだ聖騎士の仕事の手伝いをしている筈であるが、何故か学園に戻ってきた。
ランクは10




