怒った琴音と美和
保健室を後にして体を動かす為に体育館に向かう途中で、偶然美和が廊下を通り此方に気付く。
一応挨拶でもしようと口を開きかけた時、美和が凄い勢いで此方に向かってくる。
「私達チームですわよね?、そうと言ってくれますわよね?」
一瞬何の事を言ってるのかわからず答えに困るが、聖騎士を決める大会の団体戦んチームだと気付く。
(そう言えばチームメンバー考えて無かったな)
例え団体戦であれ、詩音としての本気を出せば一人でも優勝出来る自信がある。なのでメンバーの事は全く考えていなかった。
「そうですね。三條先輩はチームメンバーですよ」
そう言った途端に美和の顔が笑顔になり、周りにいた他の生徒が羨ましそうに見ている。
「なら、今からでも個人指導をお願いしますわ」
「……え?」
(個人指導、何の事だ?)
美和に言われた個人指導がわからず、固まっていると美和が不思議そうに聞き返してくる。
「チームメンバーには、個人指導をしてくださる約束ですわ」
(そんな約束してないぞ)
誰がそんな事を言ったのか、突き止め後でお礼参りにいこうと思いつつ誰がそんな事を言ったのか聞くと。
「あら、詩音さんが言ったんじゃ無いですか。私が琴音だけ個人指導をしてずるいですわって言ったら、友達になったら教えるよって。笑顔で」
「それいつの話ですか?」
嫌な予感がしつつ尋ねる。
「昨日詩音さんが体調を崩して休んでる時ですわ」
(チャシャネコの時か、チャシャネコに任せたのは失敗だったか?)
脳裏にいつもの笑みを浮かべたまま、ごめ~ん許してねっと謝るチャシャネコの姿が浮かぶ。
「その時、他に何か約束や変な事言いませんでした?」
他にチャシャネコが何をしでかしているか、少しでもヒントを見付ける為に聞くと。
「特に何も約束してませんですけど。他に仲の良い子がいるか聞かれたので、後は朝実ちゃんくらいですわって答えましたけど?」
(それなら、後変な事を言われてそうなのは朝実だけか)
チャシャネコとて馬鹿では無い、詩音が余り知ら無い人物に変な約束はしない筈だと思いたい。
そんな事を考えていると、美和が不安そうに聞いてくる。
「大丈夫ですの?、まだ体調が良くなって無いんじゃありませんか?」
「大丈夫ですよ。ただ少し記憶が曖昧になっていたので、確認させて貰っただけなので」
そう言って笑顔を作る。
「そう、なら良いですわ。でも体調が悪くなったらすぐに言って欲しいですわ。友達何ですもの、無理はさせられませんから」
そう言いながらも、しっかり手を握って逃げられない様にしつつ体育館に連れて行く辺りは。押しが凄いと言うかなんと言うか、一周回ってして凄いと心から感心する。
「あっ、詩音ちゃんだ体調良くなったんだね」
体育館の扉を開けると、何かを練習していたのか偶然琴音がおり。此方に気付いて笑顔のまま凄い勢いで向かってくる。
(あれ、なんかデジャブが)
さっき見た光景を思い出していると、案の定
「あのさ、僕達ってチームだよね」
(完全デジャブじゃねえかよ)
まさかおんなじ様な事を言われるとは、ただ琴音は美和の時と違い確信を持って言ってくる。
「ええ、琴音先輩もチームメンバーです。それと朝実さんもメンバーですからね」
答を聞いた琴音と、琴音の背中に隠れる様に顔を出していた朝実の二人が嬉しそうにハイタッチを始める。
「そう言えば朝実さん、私が体調悪い時に何か約束した事ってありますか?」
チャシャネコが変な約束をしてない事を祈りつつ尋ねると、暫く思い出すように頭を振った後
「と、特に何も無いです」
「そうですか、勘違いだった見たいですね」
(これで一応安心出来るか)
もし他に訪ねてく来た人物にチャシャネコが何か約束していた時には、チャシャネコとのデートをサボってやろうと心に決める。
「そう言えば、なんで二人は手を繋いでるのかな?」
いまだに繋いでる手を見ながら琴音が聞いてくるが、その声は普段より少し低い声だった。
「私達はとっても仲が良いからですわ。それにこの後、個人指導をしてもらう約束もしてますわ」
見せびらかす様に美和が繋いでいる手を高くあげる、一部の生徒が悲鳴をあげ、羨ましそうに見てくる。
何も言う気力がわかず、無言のままされるがまま手を繋いであげ続けていると。
「へ~、個人指導か。偶然だね僕も約束してるんだよね。それも今日何だよね」
琴音が笑顔を浮かべたままそう言って、詩音の空いている反対側の手を握る。
「ちょっ!。琴音貴女何ですの、約束しているのは私ですわよ!」
美和がそう叫ぶが、笑顔のままで琴音が答える。
「そうだけど、最初に約束したのは僕の方だよ。なら穆が先に個人指導を受ける権利があるよね」
その言葉に一瞬怯んだ美和だったが。
「ここまで連れて来たのは私ですし、貴女にはもう練習のパートナーがいるじゃないですか。なら、パートナーがいない私が先に個人指導を受けても良いですわよね!」
朝実を見ながらそう言う美和と、突然会話に名前が出て混乱している朝実。琴音が混乱している朝実を落ち着かせつつ、
「朝実ちゃんは、葵ちゃんと蒼ちゃんが来るまで個々で待ってるだけで練習のパートナーじゃ無いよ」
琴音の話に同意するように、朝実が何度も頷く。言い返せないのか、美和が唸りながらも手を強く握り離さないアピールをすると。琴音もそれに負けじと手を強く握ってくる。
(このままじゃ埒があかないな)
二人視線の中間で火花を飛ばしそうな勢いで、睨みあう二人の手を少し強めに握り返す。
痛みで手を離し、涙目で手を摩ってる二人に笑顔で提案する。
「面倒なので二人同時に指導をします」
驚いた様に固まる二人と、ざわざわと騒ぎだす周りの生徒達。
「えっと、詩音ちゃん?。流石にそれは無理だと思うよ?」
「そうですわ!。確かに詩音さんは強いですけど、私と琴音を相手に指導は無理ですわ」
周りの生徒達が同意するように頷く。詩音は二人がタッグを組んで戦う所を見た事は無いが。美和は最初に絡んできた時に、琴音は亡霊の時に1度づつ相手をしている。
その時の経験からある程度の強さは解る。確かに詩音の状態でしかも決められたルールがある実戦では無いので勝ち目は薄いが。
「そうですね、本当に無理か試してみますか?」
二人を挑発するように、腰からナイフを抜き目の前え廻して遊ぶ。
「詩音ちゃん、流石に僕も怒るよ」
「そうですわ、私も怒りますわよ」
二人が殺気を孕んだ声で答える。その殺気を無視しながら笑顔で言う。
「もし二人が勝ったら、そうですね一度だけ何でも言うことを聞きますよ。もしも運が良く勝てたらですけどね」
二人の殺気が膨れ上がる。
「詩音ちゃん、今の言葉忘れないでね」
「良いですわ、受けてたちますわよ」
二人がそう言いながら戦う準備を始める。
殺気で怯えてしまった朝実を落ち着かせつつ、ルールの確認をする。
「ルールは魔力切れを起こした方が負け、ただ先輩方は二人なので途中で魔力切れを起こした方は退場。二人共が魔力切れを起こしたら私の勝ちですね。
後一応言っておきます、禁術は使用禁止でお願いします。では、先輩方の準備が出来ましたら開始としますね」
二人がルールに同意し頷くのを確認する。その後二人の準備が終わる直前に葵と蒼が来たので朝実の面倒を見て貰う。
「先輩方の準備は良いですか?、良いなら始めますね」
二人が頷くと、体育館の床に大きな魔方陣が浮かび上がり飲み込まれる。
「さてと、では指導を始めますか」
そう呟きナイフを抜いて構える。
登場人物
影霧 詩音…校長の暗殺の為に、学園にいる暗殺者。本来の性別は男だが、薬により少女になっている。
暗殺者としては亡霊と呼ばれ。複数の二つ名を持つ一流の暗殺者でありながら、魔力が全く無い。
詩音になっている際は、薬の副作用で魔法が使える。魔法ランクは3
紅 琴音…ボーイイッシュな少女。学年は詩音より上であり、琴音先輩と呼ばれている。
学園でも屈指の実力者であり、魔法ランクは聖騎士見習いになれるランク7
過去に両親を暗殺者に殺されている過去を持っている。
三條 美和…学園に入学生した詩音に勝負を吹っ掛け負けた少女。学年は琴音と一緒で詩音より上。
自己申告の魔法ランクは5だが、本当は3種類の属性魔法が使えランクは6である
勝負に負けてから詩音に興味を持ち、御近づきになろうと努力をしている。
薄紫 朝実…詩音の正体を知っている数少ない生徒。極端な人見知りであり、普段は葵と蒼と言う双子と一緒にいるが。双子がいない時は琴音の後ろに隠れている事が多い。
家柄暗殺者に命を狙われる事が多かったが、偶然正体を知った詩音と取り引きをして守って貰う事で引きこも生活に別れを告げた過去がある。
占い時など、人格が変わった様になる事がある。
こう見えて魔力ランクは7
葵と蒼…朝実の護衛である双子の少女。学年は詩音や朝実より下で中等部の生徒。




